第33話 Hundred Scale①
【~Hundred Scale~
・ 勝利条件 全5戦を行い、勝利数の多いプレイヤーの勝利。
(※同点の場合は玉をリセットして再試合)
基本ルール
分配フェイズ
・両プレイヤーは「100個の玉」を、手元の「5つの袋」に自由に分配する。
・一度袋に入れた玉は取り出せない。
勝負フェイズ
・お互いに袋を1つずつ選び、中央の天秤に置く。
・天秤が傾いた方(玉の数が多い方)が、そのターンの勝者となる。】
*
黒服「それでは、ゲームを開始します、お互いきんちゃく袋に分配を行ってください。」
大佐のゲーム。翠は確かにそう言った。
万番柘榴は箱の中の玉を握りながら翠の言葉を反芻していた。
大佐のゲーム。Colonel Blotto gameと呼ばれるゲーム理論の問題だ。
限られたリソースの中で複数の戦場や目的にどう分配するか、という考え方。
大佐のゲームに正解は無い。しかし、最適解は存在する。
柘榴は思考を巡らせていた。
このゲームは分配の時点でほぼ勝負がつくと言っても過言ではない。
一見均等に20ずつが正解のように感じるが、それは不正解だ。
単純にこのゲームは3回勝利すればいい、つまり2回は負けてもいい。
となると20ずつの配分は悪手。
全てにおいていい顔をしようとするこの配分は不正解だ。
つまり、正しい分配は「33、33、34、0、0」だ。
翠はきっとこれに気付いている。大佐のゲームと本人が口にしたことが決定的だ。
つまりこの先の戦いは、どういった順番で勝負に出るか。
柘榴は考えながら、袋に玉を入れ始めた。
*
柘榴は玉の数を間違えないように丁寧に数えながら袋に玉を入れている。
翠はその様子をチラッと見た。
手元は箱の中に入っていて、いくつ玉を入れたのかは確認できないが、集中した顔から柘榴に迷いが無い事が見て取れた。
大佐のゲーム。
昔、えらーい数学者が提唱した問題。
絶対的正解が存在しない分配ゲーム。
どうやら柘榴君は知っていたようだ。
翠はゆっくりときんちゃく袋に玉を入れ始めた。
まぁ、3回勝利するなら「33、33、34、0、0」かな。
でも多分、彼もここに行きついてるだろうな。
*
黒服「お互い分配は終わりましたか?」
柘榴「あぁ。こちらはいつ始めてもらっても構わない。」
翠「俺も同じく~。」
黒服「ではお互い1つ袋を選び天秤に置いてください。」
黒服の甲高い声を耳にして、柘榴は「33」の袋を手に取り席を立った
「33、33、34、0、0」できることなら0から消費したい。
だが、翠の手が同じ分配であるかは不明。そんな状況で、天秤が必ず相手に傾く0は、相手の手を読めない悪手。
33ならざっくりとではあるが翠の手を読むことも可能。
『ジャララ』
音を立てて天秤に袋を置く。天秤は柘榴の方に大きく傾いた。
翠もすぐに天秤に袋をセットする。
『ファサ』
それから聞こえたのは布が擦れる音だけだった。
天秤は動きを見せず、柘榴に傾いたままだった。
1ターン 勝者:柘榴
*
翠「あちゃ~負けちゃったか。」
ニヤニヤとしながら袋をどかし、翠は席に戻ろうとしていた。
柘榴「待て。」
柘榴も袋をどかした。天秤はゆっくりと動き水平に戻る。
柘榴「勝つ気なんてサラサラなかっただろう。」
翠「…へえ~。どうしてそう思ったの?」
柘榴「音がしなかった。多分この袋の中に玉は入っていない。」
翠「…」
翠はさっき置いた袋をゆっくりと手に取り、開いてひっくり返した。
翠「大正解~!中は空だよ。」
柘榴「なぜだ。」
翠「どうもこうも単純な理由だよ。0を早めに消費したかったから。」
そう言うと翠は席に戻り、次の袋を手に取り天秤に乗せた。
『ジャララ』
大きな音を立てたそれを見て柘榴はつばを飲み込んだ。
*
柘榴は席に戻り次の袋を選ぶ。
奴の次の袋には玉が入っている、いくつだ。いくつ入っている。
柘榴の手は残り4つの袋の上を撫でるように行き来していた。
「33、34、0、0」
翠は0を早めに消費したかったと言っていた。ということは、やはり奴も同じ分配か?
確かめる。そのためには多分…
柘榴は33を手に取った。
これでいい。奴が今置いた袋からは確かに音がした。
それもいくつかの玉の音が。
となればここで33を天秤に置き天秤が水平を保てば、奴の手は33で確定。
それかほんの数ミリ、奴の方に天秤が傾けば、奴の手は34…
どちらかで奴の分配が俺と同じ「33、33、34、0、0」で確定する。
柘榴はゆっくりと天秤に袋を置いた。
天秤は大きく動きやがて静止する。
その天秤はわずか数ミリほど翠の方に傾いていた。
2ターン 勝者:翠
柘榴 1勝
翠 1勝
柘榴の思考に1つ確かな情報が見えた。奴の手は「33、33、34、0、0」で確定だ。
となると奴の残りの手は「33、33、0」
俺の残りは「34、0、0」
今回のゲームは俺の勝ち越しは無くなった。
だが、奴の0にこちらの0を被せ、33に34をぶつけることが出来れば、今回のゲームは同点。再度仕切り直しになる。
一見すれば難しい。だが、奴相手なら同点を目指すだけなら余裕だ。
視界に映る翠は自身の席から次の袋を取りに行っていた。
翠「いや~柘榴君惜しかったね。次は勝てると良いね。」
そう言いながら翠は天秤に次の袋を置いた。
『ジャララ』
確かに音がした。
柘榴「あぁ、勝たせてもらうよ。」
間違いない。次の奴の手は「33」だ。なら選ぶべきは…
柘榴は席から34の袋を手に取り、天秤に乗せる。
天秤はさっきとは逆の動きを見せ、わずか数ミリ柘榴に傾いた。
3ターン 勝者:柘榴
柘榴 2勝
翠 1勝
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