第28話 Blind Sum②
【~Blind Sum~
〇勝利条件
全5ゲームを終えるか、どちらかの所持チップ100枚が「0」になった時点で終了。
終了時チップを多く持っていたプレイヤーの勝利。
〇 1ゲームの基本ルール
自身の持つ「5つのサイコロの合計値」が、相手より大きい方が勝者。
① スタンバイフェイズ
・両プレイヤーはサイコロを1つずつ振る。
・出た目の合計値が、今回の「場代」として互いのチップから場に支払われる。
・出た目が大きいプレイヤーが、次のフェイズの先攻を得る。
※同数の場合は振り直し。
② ダイスフェイズ
サイコロを振り、目を一部公開しながらチップを賭けるフェイズ。
アクションは「レイズ(上乗せ)」「コール(勝負)」「ドロップ(降りる)」の3種類。
第1ラウンド:
・互いに相手に見えないようにサイコロを「3つ」振る。
・その中から任意の「1つ」を選んで相手に公開。
・スタンバイフェイズで決まった「先攻」からアクションを行う。
第2ラウンド:
・ドロップが出なかった場合、互いに相手に見えないように「4つ目」のサイコロを振る。
・隠している手元のサイコロから、新たに「1つ」を選んで公開する。
・前ラウンドの後攻からアクションを行う。
第3ラウンド:
・ドロップが出なかった場合、相手に見えないように最後の「5つ目」のサイコロを振る。
・新たに「1つ」を選んで公開する。
・再び順番を入れ替え、最後のアクションを行う。
③ バトルフェイズ
最後のアクションでドロップが出なかった場合、互いに残りのサイコロを開示。
5つのサイコロの合計値が大きい方が、場に賭けられたチップを総取り。
『特殊勝利条件:ファイブダイス』
5つのサイコロの目が「ゾロ目」だった場合、合計値に関わらずそのゲームは無条件勝利となる。
さらに、相手は賭けたチップの「倍の額」を支払わなくてはならない。】
~第1ゲーム~
①スタンバイフェイズ
サイコロ表面の凸凹が指に伝わる。
小林「始めるぞ。」
硬「はい。」
玉木硬はサイコロを振った。
転がるサイコロは「3」で止まる。
直後モニターの画面が変わる。
【場代:チップ5枚。 先攻:硬】
ケースからチップを5枚取り出し目の前に積み上げる。
②ダイスフェイズ
コの字型のボックスの中にサイコロを3つ投げ入れる。
出目は「2」「3」「6」。
この中から1つを公開する。
このゲームはいかにして相手からチップを巻き上げるレイズができるかが鍵だ。
そのためにはあえて小さい数字を公開し、相手のレイズを引き出す。
硬は「2」の目を選び箱からサイコロを出した。
【公開】
硬「2」36
小林「5」??
先攻:硬
小林の目は「5」。高い数字を公開してきた。
だが、逆に言えば「6」は無いのか?
となれば、6を持つ自分が有利かもしれない。
硬「…レイズ。15です。」
このレイズで相手の動きを見る。
さらにレイズを被せてくるなら、伏せられた数字も高い。
コールで留まるなら、戦えはするが絶対の自信はない中途半端な数字。
さあ、どっちだ。
小林の視線が一瞬、硬の積まれたチップと、自身の箱の中を行き来した。
小林「受けよう。コール。」
中央に30枚のチップが集まる。
次のサイコロを持つ手が震える。
負ければ全てが終わる。祈るように持つ手に力がこもり、滑るように箱に転がる。
目は「4」。高い数字だ。
なら、あとは相手に何を公開するかだ。下手に高い数字を公開すればドロップされる可能性がある。ならここは…
【公開】
硬「2」「3」64
小林「5」「4」??
先攻:小林
小林は4。数字は大きい。
小林「コールだ。」
だが、宣言したのはコール。
間違いない小林の残りの数字はイマイチ。
きっと最後の1つ次第でいい目にもゴミ手にも化ける手。
ならここは積む。
硬「レイズです。20枚。」
相手を威嚇するように、5枚のチップを投げる。
ジャラッ、とチップの擦れる音が二人の間に響いた。
小林「っう」
小林は自身のサイコロに目を落とし口元に拳を持っていく。
小林は考えている。
ならまだ降りるほどじゃない。
つまり、致命傷の手じゃない。
小林「乗った、コール!」
小林も負けじとチップを威嚇するように中央に投げた。
次のサイコロを手に取り振る。
目は「6」。最も大きい「6」
硬の手23646 合計21
悪くない。何より最後。この6を公開すれば手がいまいちな小林へのプレッシャーになる。
【公開】
硬「2」「3」「6」46
小林「5」「4」「3」??
先攻:硬
硬「レイズです。30枚」
手汗で滑りチップは中央まで飛ばなかった。
小林「…ドロップだ。」
~第1ゲーム終了~
硬:チップ120枚
小林:チップ80枚
硬「良し!」
小林「っく。だが、まだ始まったばかりだ。」
小林の声は上擦っていた。
~第2ゲーム~
①スタンバイフェイズ
チップに余裕ができたからか、硬の手は軽やかだった。
止まった数字は「6」。
【場代:チップ10枚。 先攻:硬】
ついている、サイコロの目は、運は完全に味方している。
硬はそう思い意気揚々とチップを10枚投げ捨てた。
②ダイスフェイズ
硬は手に3つサイコロを持つと手の中で『カチャカチャ』と音を立て、投げた。
勢いよくボックスに入り、側面で弾かれながらサイコロは激しく転がり、止まった。
出た目は「1」「3」「5」
特別良い手とはいえなかった。
1は見せられない。
1を公開した瞬間、主導権は相手に渡る。
1を見せるなら他の手に6がない限り見せないのが無難。
となるとここは…
【公開】
硬「3」51
小林「6」??
先攻:硬
硬「コールです。」
硬は自身のサイコロに目を落とす。微妙な数字。
それに比べて小林は6を公開している。
これはどっちだ。
険しい表情を浮かべる硬を見て小林が口を開く。
小林「レイズだ。15。」
小林の表情は落ち着いているように見えた。
硬「…受けます。コール。」
大丈夫だ。
小林のレイズは15。もし強い手が来ているのならもっと積むはず。
なら今の奴の手は低いはずだ。
次に6を引けばいい。
硬はサイコロを手に取るとギュッと強く握りこんだ。
まるで何かに祈っているかのように力を込め、手を広げる。
投げ出されたサイコロがボックスの中で転がり、止まる。
出た目は「1」
硬「っく…」
【公開】
硬「3」「5」11
小林「6」「4」??
小林「レイズ 30枚。」
硬「…」
硬は苦しかった。
今小林が公開している数の合計が硬の総合と同じだった。
硬「…ドロップします。」
~第2ゲーム終了~
硬:105枚
小林:95枚
大丈夫だ。失ったのは15枚だけ。まだ俺の方が優勢だ。
~第3ゲーム~
①スタンバイフェイズ
サイコロを親指と人差し指でつまみ指の腹でコロコロと転がす。
呼吸を整え投げる。
大丈夫、まだ勝っている。
【場代:チップ7枚。 先攻:小林】
硬の出た目は「1」だった。
*
翠「…」
翠と亮は真剣な眼差しで画面を見続けていた。
亮「どうだ、硬君は勝てそうか。」
翠「どうだろうね。硬ちゃんビックリするぐらいポーカーフェイス下手くそだし、この手の運が絡むゲームはあまり経験していない。場合によってはワンチャン…」
亮「だが、小林とかいうやつもあまりポーカー慣れしているようには見えないぞ。お互い出た目の数だけで戦っている。いわば運の勝負になっている。」
翠「何となくだけど、運も向いていない気がするんだよね。調子に乗ってサイコロでカチャカチャ手遊びしたせいで流れをつかみ損ねた感じもある。」
亮「所詮運は運だろう。」
翠「…まぁ、そうなんだけどさ。」
2人が見つめる画面の先で硬と小林がサイコロを振っている。
硬 246
小林 654
翠「まずいかもなぁ、流れは完全に小林だ…」
亮「そうとも限らないだろ。硬君の手も強い。」
翠「亮ちゃんは分かってないなぁ。下手に希望ある手のほうがこういう場合は厄介なんだよ。」
画面を見る目が鋭くなる。
嫌な予感が翠を支配した。
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