第25話 Fifteen Steal その後
賞金としてもらった茶封筒。
同じチームメンバーはとても喜んでいた。翠さんに心から感謝していた。
100万円の厚み。硬がこれに触れたのは初めてではなかった。
クレイジー・カップスでも同等の額を確かに手に取った。
なのに、なのになぜか、今回は異様に軽く感じた。
自分の力ではない、他人の力で手に入れたお金。
そんな気がしてならなかった。
思い返すと俺の勝利にはいつも翠さんがいた。
俺は…俺はやっぱり…
足取りは地下から出ても重たかった。
翠「硬ちゃん、さっきからずっと黙ってるけどどうしたの?」
硬「…あの、翠さん。俺って翠さんの―――」
小林「翠さーん!!」
地下から走って出てきた小林の大きな声に硬の声はかき消されてしまった。
息を切らした小林は翠と硬の前に着くと呼吸を整えた。
小林「はぁ、はぁ。すー、ふぅ。」
翠「だ、大丈夫?」
小林「だい、大丈夫です。ふぅ。翠さん!」
再び大声が廃工場に響いた。
翠「ど、どうしたの?」
小林「翠さん。失礼なこと言って申し訳ありませんでした!!」
小林はその場で地面に頭が付くのではないかと思うほど、すれすれまで頭を下げた。
翠「ん?別に気にしてないよ。」
小林「ほ、本当ですか!?心まで広いなんて、感動しました!」
硬「…ははは。」
言おうとしたことが小林のせいで言えなくなってしまった。
硬はただ笑うことしかできなかった。
小林「…うん。俺、決めました。」
小林はそう呟くと姿勢を伸ばし再び頭を下げた。
小林「俺を!!翠さんの弟子にしてください!!!!!!!」
その声は今日聞いた中で1番大きい声だった。
そのせいだろうか、硬の頭がぐるりとかき混ぜられた。
翠「え、やだ。」
小林「え?」
翠「そう言うことだから、硬ちゃん、帰るよ、行きと同じ黒服さんに車出してもらお。」
翠は歩き始めた。
硬はその後ろをついていこうとして足が止まった。
俺は翠さんにとっての何なんだ…?
翠「ん?硬ちゃん?行くよ?」
黄E「まだだ。」
硬の後ろから眼鏡を掛けた男が歩いて翠に近づいた。
黄Eだった。
*
翠「やぁやぁ。黄Eさん。今回は協力ありがとうございました。」
黄E「感謝するのは俺の方も同じだ。あんたのおかげで俺も楽しかった。」
翠「へー。そりゃどうも。にしても大きなカバンですね。やっぱ原石《Rough》クラスって報酬少ないんだな〜。」
黄E「約束、忘れてないだろうな」
翠「約束?あぁ、あれのこと?」
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黄E「喜んで協力しよう。なんてったって元王石《Crown》クラス。鈴間翠さんのお願いだ。代わりに約束してくれ、このサーカスが終わったら――」
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翠「このサーカスが終わったら、俺と勝負してくれって約束?」
黄E「ああ。もちろん覚えているんだよな」
翠「安心してよ。いつでも連絡して、黄Eさんならいつでも戦ってあげる。」
黄E「柘榴、万番柘榴。俺の名だ。」
翠「へぇ。覚えておくよ。」
2人の目は宝石のように輝いて見えた。
硬はそれが眩しくて、それが怖くて、置いていかれる。そんな気がした。
小林「す、すごい、あの2人まるで生きている世界が違うみたいだ…」
硬「…あぁ。」
その目はどこか達観していた。
硬はもう飲み込まれていた。
小林「おい。青D。」
硬「硬です、玉木硬。」
小林「そうか。玉木。なんでお前が翠さんの隣なんだ。」
*
翠「連絡待ってるよ。柘榴君。」
柘榴「ああ。本気で挑む、待ってろ。」
そう言って柘榴は一人歩き始めた。
翠「さて、硬ちゃん?」
翠も動かない硬の元に歩き始めた。
小林「納得いかない。やっぱり納得いかない!玉木!!俺と勝負しろ!どっちが翠さんの隣にふさわしいか!!翠さんの横の座を賭けて!」
小林の大きな声は耳に響いて痛かった。
でもなぜかその提案に救われた気がした。
硬「望むところだ。」
見つけ出して見せる、俺が翠さんの隣にいる理由。いれる理由。
翠「…あれ?俺賭けられてる?」
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