第22話 Fifteen Steal④
赤A「さて、と」
会場をざっと見渡す。黄Eが青Eと何か話をしているのが目に入る。
あの2人は1ターン目にも二人だけで話していた。何か取引をしているのだろうか。
まぁいい。赤Aは黄チームに向かって足を動かした。
青チーム:残りカード【1】【2】【3】【4】
奪ったカード【1】
合計ポイント 11point
赤チーム:残りカード【2】【4】【5】
奪ったカード【5】
合計ポイント 16point
黄チーム:残りカード【1】【2】【3】【4】【5】
奪ったカード【3】
合計ポイント 18point
今、赤チームは黄チームに負けている。なら次に黄チームから点を取る。だが、そのためにはまず敵を知る必要がある。
赤A「どうも~」
この中の誰が高得点を持っているかを見極める。
黄C「うわ、なんですか?」
黄チームは見るからに嫌そうな顔をしていた。
赤A「そう警戒しないで、協力しようかなって思って。」
黄E「つまらない嘘をつくんですね。」
赤A「…へぇ?」
いつの間にか眼鏡を掛けた男が青Eとの会話を終え、チームに戻ってきていた。
赤A「もう青Eとのお話は済んだの?」
黄E「ああ。最終ターン奴を指名しない交渉が成立した。奴も生き残るために必死なんだろう。それより、お前。わざわざ黄チームに何しに来た?」
眼鏡の奥の目は静かな怒りに満ちていた。なるほど。こいつが黄チームのリーダーってわけか。
赤A「そんなに怖い顔しないでよ。俺はただ協力を――」
黄E「断る。」
黄Eはそう言うと赤Aを強く睨んだ。
赤A「…そっか、じゃあ次のターン黄チームを指名しちゃおうかなぁ?」
黄E「好きにしろ。」
ま、そうなるよね。
赤A「いいの?俺たち赤チームは0pointが2人もいるんだよ?でも黄チームは0pointが1人もいない。それに青チームもきっと黄色から獲るよ?」
個人のポイント数の被りは禁止。このルールのおかげで、総合ポイントが1番のはずの黄色が実は1番追い詰められている。
黄E「っフ。」
そのはずなのに黄Eは余裕そうに、鼻で笑った。
黄E「もう一度言う。好きにしろ。運が良ければ18point全部手に入るかもな。」
赤A「あ?」
18point手に入る?どういうことだ。
黄E「さ、分配の邪魔だ。自チームに戻れ。」
そう言って黄Eは赤Aの肩を強く押した。
その手には複数枚のカードが握られていた。
…。18point…。運が良ければ…
…あ。
そうか。このゲーム、0pointだけは被りが許されている。つまり誰か1人にカードを押し付ければpointが取られる確率は単純明快。1/5。
運が良ければ、そういうことか。
とんだギャンブラーだ。しかし、効果的な守備でもある。
俺らも真似させてもらおうじゃないか。2ターン目は運勝負だ。
“黄”と“青”チームはな。
1ターン目の惨状を見れば容易に想像ができる。青チームは崩壊している。
まず青Bは1ターン目の失態からポイントは持たせてもらえていない。
そして1ターン目で活躍した男に自然とpointが集まる。それには全くと言っていいほど意味がないのに。
指名するのは青Dだ。
スクリーンには残り30秒が表示されていた。
*
『では、これより指名ターンに移ります!各チーム代表は中央に集まって下さい。』
赤A、青D、黄Eがゆっくりと歩きはじめる。
赤と黄は1ターン目と同様の二人だが、青チームは1ターン目で赤との協力に唯一反対意見を出したDが代表に選ばれたようだ。
つまり、青Dは信頼されている。
赤Aはほくそ笑んだ。少し話して奴らの性格は何となく把握している。
奴らは単純だ。
『それでは指名を行ってください!』
黄E「赤A。」
両手を上げる。あんたが教えてくれた。0pointで勝つ方法を。
『赤Aのpointは、残念0point。』
青D「黄、黄色のC!」
『黄Cのpointは、おおっと!なんということだ』
会場が一段階熱を増す。
『連続0point。Fifteen Stealでこんな展開は初めてだ!!』
青D「…。」
青チームは今頃焦っていることだろう。予想外の0point。変わらぬ窮地。もっとだ。最下層まで叩き落としてやろう。
赤A「青の、Dだ!!」
赤Aは青Dを指さした。
青Cが頭を抱え、青Aは絶望した表情で膝から崩れ落ちた。青Bは目を瞑って下唇を噛んでいる。
それなのになぜか赤Aの視界に残ったのはニヤリと笑う青Eの姿だった。
『おお~っと指名されたのは青のDだ!!!』
目の前に立つ青のDがゆっくりと手を挙げる。
その手には、何も持っていなかった。
赤A「…は?」
『な、ななな、なんと!!3連続0pointだああ!!!』
会場の熱は高まる。
青Dは0pointだった。
*
危なかった。
もしあのまま欲に飲まれていたら、青チームは終わっていた。
赤A「な、なんでお前が0pointなんだ。他の青チームの反応からして、ポイントを持っているのはお前の…」
翠以外の青チームはモニターを見ながら唖然としていた。
青D(硬)「…青チームには、最高に強いギャンブラーがいるんです。あなたはその人に負けたんです。」
翠さんはどこまで読んでいたのだろうか。
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青E(翠)「へー、奇遇だね。俺もだよ。硬ちゃん、ちょっと耳貸して。」
翠は硬に近づき呟いた。
青E(翠)「硬ちゃん、その手札全部頂戴。」
青E(翠)「大丈夫、もう検証済みだから。」
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もしかしたらこの頃にはこの光景が浮かんでいたのかもしれない。
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青E(翠)「いや~ごめんごめん。ちょっとお話ししてた。どうなった?」
翠にはまるで緊張感が無かった。心配なんて一切していないようだった。
青D(硬)「翠さん。実は――」
青E(翠)「…なるほどね」
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『それではただいまより最終ターン、再分配に移ります!!』
青チームがいる場所に戻る。ニヤッと笑う翠と目くばせをした。
青A「す、すごいです!カードは!?どこに!?」
青C「お、俺ら、確かに渡した、よな。」
青B(小林)「な、なぜだ。なぜお前が。」
チームメイトは困惑していた。無理もない。あるはずのカードが消えているのだ。
青D(硬)「そんな難しい話じゃありませんよ。俺は翠さん、青Eにカードを託したんです。全部翠さんの提案ですけどね。俺は何もやってないんです。」
緩む口元を見て小林は目力を強める。
青B(小林)「つまり、青Dの力ではないってことか。それでそんなに偉そうにしてたのか。他チームからポイントを取ってこれなかったくせに。」
青A「ちょ、ちょっとそんな言い方ないでしょう!」
青C「最悪の状況は回避できているんです、むしろ褒めるべきだと――」
青B(小林)「だが、今青チームは負けているんだ。」
青A「…」
青C「う…」
小林の言っていることは正しくもあった。
青B(小林)「最終ターン、この中の誰を勝たせるかを決めないと。」
そうだ。最終ターン。このターンに最もpointを持っていた人が個人勝利だ。
チームに沈黙が走る。
青E(翠)「あー、そのことなんだけどさ。最終ターン、チームのみんなにお願いがあるんだ。」
沈黙を破ったのは翠だった。
青E(翠)「みんなの持ってるカード、全部俺に渡して。」
タイマーが進む速度が遅くなった。そんな気がした。
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