第20話 Fifteen Steal②
黒服に案内され大きな扉の前までやって来る。
重厚感のある重々しい扉。その先から小さく声が聞こえる。
まるで何かに盛り上がっているような大勢の声が。
「今から、ゲームに使用するカードを配ります。」
黒服の手から渡される厚紙。硬が受け取ったのは【5】だった。
「このカードにはイカサマ防止のためのチップが埋め込まれています。安心してゲームをお楽しみください。」
黒服は説明を終えると扉に手を掛ける。
「では、青チームの皆様のご健闘お祈りしております。」
『ガチャリ』
薄暗い廊下に光が差し込む。。
「うおおお!」
「待ってました!」
「青勝てよー!こっちは賭けてんだぞ!」
大勢の歓声が耳に入る。硬はたまらず翠に視線を送った。
青C「な、何かやばいですね。」
青A「ただならぬ空気感が…」
青B(小林)「う…」
他のみんなもただ立ち尽くすしかできていなかった。
青E(翠)「さ、行くよ。」
そんな周りを置いていくかのように翠は光の先へと歩みを進めた。
青D(硬)「あ、翠さん。」
後ろをついて会場に足を踏み入れる。
体育館くらいの大きさの空間。その周りを囲うように客席が設置され、まるでアニメや漫画で見る地下闘技場のようだった。
会場の中央にはすでに赤色と黄色のゼッケンを着た人だかりができていた。
ホールの前方に設置された大きなモニターには堂々と歩く翠の姿が映っていた。
*
『大変お待たせいたしました!ただいまより、Fifteen Stealを開催いたします。』
「待ってたぞー!」
「赤―!負けるなよー!」
「黄色C!!勝てよ!!」
放送の音声で会場内の熱気が一層高まる。
『ルールは事前に説明された通り15pointをチームで奪い合う!勝者には100万円、敗者はその負債を背負う!今宵の勝者は誰だ!!!』
「うおおおお!!!」
ホールの中央で困惑している硬たちを他所に会場の盛り上がっていく。
ホール前方に設置されたモニターには細かなルールが記載されている。
~Fifteen Steal~
【ルール】
・赤、青、黄の3チーム
・各チーム5人
【ゲーム開始】
・各チームに
【1】【2】【3】【4】【5】
の5枚のカードを配布。
・チーム内で自由に分配すること。
※同じ数字カードは1チーム内に1枚のみ
※チーム内で個人のポイント数が同数になるような分配は禁止。(0pointは可)
【ターン終了時】
・各チームは代表1名を選出。
・代表は他チームのプレイヤー1人を指名し、そのプレイヤーが持つカードを全て奪う。
・奪ったカードは自チームの所有物となる。
【次ターン】
・所持カードは自由に再分配可能。ただし、個人のポイント数が同数になっていけない。
※ただし0pointで同数は可
・これを3ターン繰り返す。
【勝利条件】
・3ターン終了時、合計ポイントが最も高いチームが勝利
・さらに、最終ターン終了時に最も多くポイントを所持していた個人も勝利
『それでは各チーム、カードの分配を行ってください!制限時間は5分です!』
モニターにタイマーが映し出された。
*
~1ターン目~
会場に入る直前に配られたカード。硬の手には【5】があった。
青A「とりあえず、皆さんのポイントは何でしたか?自分は【3】です。」
青C「お、俺は【4】です。」
青B(小林)「俺は【2】だ。」
青チームはホールの一カ所に集まり各々が自身のカードの数字を開示する。
ルールで決まっているわけでは無かったが、他のチームもそれぞれ固まって話し合っている。きっと同じようにカードの開示をしているのだろう。
青B(小林)「【5】を持ってるのは?」
青D(硬)「え、あ、自分です。」
周りのチームを警戒するあまり自チームの話を聞いていなかった。
青B(小林)「そうか、じゃあそのカードを寄越せ。俺の【2】と交換だ。」
青D(硬)「…は?」
小林はこちらの返答も聞かず硬の手から【5】を奪い取った。
青D(硬)「ちょ、ちょっと待ってください。なんで?」
青B(小林)「当然だろう。この【5】は重要なんだ。誰が持つかは最重要事項だ。」
赤A「そうそう。青Bの言う通り!」
青C「え?」
青色のゼッケンの中に1人、金髪の赤色のゼッケンがいた。
青B(小林)「うわ、なんだお前は!」
青D(硬)「いつの間に!」
赤A「どうも~」
軽い素振りで手を挙げ、にっこりと笑う彼に緊張感が抜けそうになる。
青B(小林)「お前!今はカードの分配中だぞ!よそのチームに顔を出すのはルール違反だろう!」
赤A「何そのルール?そんなの何処に書いてあった?」
青B(小林)「う、それは、」
赤A「それに、ルール違反だというなら君らのチームの青E、彼もルール違反だね。」
そう言って彼は黄チームを指す。
そこには青Eのゼッケンを着た翠が黄チームの1人と話していた。
青D(硬)「翠さん、いつの間に。」
青B(小林)「あいつ、いつの間に!呼び戻してくる!」
赤A「まぁまぁ、落ち着いてよ。」
赤Aは小林の手を掴み制止させる。
赤A「見たところ青Bがこのチームのリーダーなのかな。」
青B(小林)「っ、ああ!そうだ!」
赤A「簡単な話だよ。俺ら協力しよう。一緒に黄色を潰すんだ。」
黄色を潰す。赤Aからの提案だった。
青B(小林)「な、何を、」
赤A「簡単な話だよ、俺らは最初の指名で黄色を指名する。運が良ければ黄色は1ターン目で9点を失い、じり貧。敵が1つ無くなるだけでも十分楽になる。そう思わない?」
青B(小林)「な、なるほど。確かにそうだ。」
本当にそうか?硬は頭を動かしていた。
青B(小林)「良いだろう、ここはいったん協力―」
青D(硬)「ま、待ってください。」
そうだ、そんな簡単な話じゃない。ちょっと考えればそれくらいわかるはずだ。
青D(硬)「確かに、どこか1チーム潰すのは有効かもしれない。でもわざわざ協力という体を保つ必要はありません。」
赤A「…へぇ」
赤Aの目が鋭くなった。
青D(硬)「指名のターンに1番初めに指名されたチームを自分たちも指名すればいいだけです。むしろ、協力という体で今分配の話し合いに混ざっている赤Aが裏切れば逆に俺たちが―」
赤A「裏切りが怖いの?なら安心してよ。」
そう言って赤Aはポケットからカードを取り出した。その手に握られていたのは【5】だった。
赤A「指名の順番は決まっていない。なら、赤が1番初めに指名することを約束するよ。もし俺らが裏切って青を指名したら、あんたらは堂々と【5】を持っている俺を指名すればいい。」
青D(硬)「な、」
赤A「どうだい?青Bさん?悪い話じゃないだろう?」
青B(小林)「ああ、悪くないな。」
青D(硬)「待ってください。まだ安心と決まったわけじゃ――」
赤A「さっきからうるさいな。そんなに裏切りが怖いの?なら、黄色と組むよ?そしたら君たちが1ターン目に9点失う危険性もあるんだよ?俺らは別にどこと組んでもいいんだ。」
青D(硬)「っう。」
赤Aの言っていることはもっとものように感じた。もし、赤と黄が協力すればそれこそ終わってしまう。
青B(小林)「良いだろう、協力しよう。」
小林はそう言って赤Aに握手を求めた。硬はただそれを見ることしかできなかった。
赤A「じゃあよろしく。残り時間も30秒しかないし、俺はもうチームに戻るよ。協力できたことを伝えないとだしね。」
自チームに戻る赤Aの口角は確かに上がっていた。硬はそれが不気味だった。
青C「あ、あの~?結局分配はどうするんですか?」
青B(小林)「今のままでいいだろう。俺が【5】A【3】C【4】D【2】E【1】だ。」
青A「え、一応赤Aに見られてたわけですし、変えた方が…」
青B(小林)「必要はない。協力関係にあるんだ。奴らが指名するのは黄色。もし、青を指名すれば俺らが赤Aを指名し【5】を取り返せばいいだけだ。」
モニターに映る数字が0になった。
*
『では、これより指名ターンに移ります。』
青E(翠)「いや~ごめんごめん。ちょっとお話ししてた。どうなった?」
翠にはまるで緊張感が無かった。心配何て一切していないようだった。
青D(硬)「翠さん。実は――」
『代表者は中央に集まって下さい』
青B(小林)「行ってくる。」
硬は中央に向かう小林に視線を向けつつ、分配ターンの経緯を話した。モニターには中央に集まったニヤケ顔の赤A、緊張した面持ちな青B、眼鏡に手を掛け冷静そうな黄Eが映されていた。
青E(翠)「…なるほどね。」
青D(硬)「翠さんはなにしてたんですか?」
『それではこれより指名ターンを始めます。』
青E(翠)「ん?俺?いやね、人探し。覚えてる?この依頼内容?」
【外部依頼:原石《rough》クラス14名。賞金100万円。】
青D(硬)「ええ。何となく。」
『順番は問いません。好きなチームから指名を始めてください!』
青E(翠)「原石《rough》クラス、14名。でもここには各チーム5人ずつ。計15人。つまりどこかに1人いるはずなんだ。原石《rough》クラスじゃない――。」
赤A「青のBでお願いします!」
耳に入ってきたのは赤Aの声だった。
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