第2話 数字当てゲーム ②
~数字当てゲーム~
☆ルール
攻撃側と守備側に分かれ行う。
・守備側はまず、1~9の数字を頭に思い浮かべる。
・攻撃側は、その数字が何かを3回のYESかNOかの質問で絞り込み当てる。
・守備側は、3回の質問中、必ず1回だけ、嘘の回答を行わなければならない。
・最終的に数字を当てることが出来れば攻撃側に1ポイント。外した場合ポイントの増減は無し。
・攻守交代し同様のゲームを行う。
・先に2ポイント先取したほうが勝ち。
・不正防止で、数字を決めたら事前に紙に記入し、相手に見えないようにする。
「さ、いつでもいいよ。数字はもう決めてるから。」
そう言って鈴間翠は不敵に笑ったのを、玉木硬は見逃さなかった。
―第1ゲーム―
質問は3回まで、しかもうち1回は必ず嘘が混じっている。つまり、実質的な質問数は2回。明らかに情報が足りない。だから、相手の嘘を見破る必要があるってことか?考えなければいけないことはこれだけではない、嘘のタイミング。2ポイント。情報。500円。引き出し。先攻後攻。守備。攻撃。数字。
多くの要素が頭の中を駆け巡り、脳は熱を帯びていく。顎に当てた指をゆっくりと眉間に移す。
…そうか。このゲーム。守備側はポイントを得ることはできない。つまり、攻撃側が外すことを前提として成り立っているゲーム。故に焦る必要はない。まずはゲームに慣れよう。当たるわけがない。当てられるわけがないんだ。
「その数字は7ですか?」
「いいえ。」
この時点で選択肢は「123456×89」まだ絞り切れていない。
「その数字は4で―」
「ちょ、ちょっとまってよ、硬君!」
翠が制するように会話を遮る。
「対戦相手にこんなこと言うのは変なんだけど、いいの?そんなピンポイントな質問だけで?もっとこうさ、絞れる質問の方がいいんじゃない?」
翠の言い分はもっとものように聞こえる。だが、今はまだその時じゃない。それを行うのは相手の思考の癖や、相手が陥りやすい心理を知った末に行うもの
…だと思っている。
だからまずはこれでいい。それに今、隙が見えた。
なぜ今遮った?
4という数字から俺の思考を逸らそうとした?それならばー
「いや、このままでいいです。翠さんあなたが選んだ数字は4ですか?」
「えぇ、まぁそれでいいならいいけど。質問の答えはいいえ、4じゃないです。」
怪訝そうな顔をする翠を前に1つの結論にたどり着く。数字が4か聞こうとした瞬間。翠は質問の変更を提案した。そして今も答えるまでに間があった。となれば、これは…!
「その数字は4ですか?」
「…はい。」
確定だ。
2回目の質問では「いいえ」と答えだが、3回目の質問では「はい」。
つまり…!
…
……?
あれ?
何一つ確定じゃない…?
「はぁ、だから言ったのに、もっと絞った方がいいって…」
落ち着け、とりあえずいったん整理するんだ。
Q1:7?→×
Q2:4?→×
Q3:4?→〇
Q1が嘘の場合:正解は7。2回目3回目の解答と矛盾が生じる。ありえない。
Q2が嘘の場合:正解は4。1回目3回目の解答と矛盾なし。可能性はある。
Q3が嘘の場合:正解は1235689のどれか。矛盾なし。
総合して可能性のある数字は7を除いた、12345689の8択…。
違う!
2回目の質問。翠は動揺していた。
つまり4という数字に触れられたくないんだ。
「どう?整理はついた?どうする?」
信じろ。
自分の直感を信じるんだ…!!!
「答えは…4です!!」
「はい、残念。」
翠がこちらに見せつけたメモ用紙には数字の3が書かれていた。
「正解は3です。まぁ初めてだったし、途中のアドバイスも、無視して突っ走っちゃったからね。こうなっても仕方ないか。」
答えは3。はずした。
でも悪くない。
3は悪くない。だって4に近いじゃないか!惜しかった!落ち込む必要はないんだ。それに次は俺が守備。つまり俺の方が圧倒的に有利だ。当てられっこない。まだ、負けが決まったわけじゃない。
翠からもらった紙とペンで数字を書きポケットに入れる。数字は7。意味はない。ただ何となくこの数字に決めた。
当てられっこない。嫌な汗が額に流れた。
―第2ゲーム―
「さて、じゃあ一個目の質問。その数字は偶数ですか?」
偶数じゃない。答えはいいえ。
「いいえ。」
「なるほど、その数字は24の約数ですか?」
「え?」
24の約数?ええと確か、1、2、3、4、6、8、12、24だよな。
…正直に答えれば残りは579の3択になる。
残りの質問は分からないが、もし絞られたら…。
ここか?嘘をつくならここしかないのか?ここなら範囲を絞られることはない。
「…はい。」
「てことは現状嘘をついていないなら1か3のどちらかになるな。」
「え?あ、」
24の約数には1〜9の偶数が全て入っている。翠目線では俺がどこで嘘をついているのか分からない。故に、現状1、3が候補にあがる。なるほど、何となくこのゲームの考え方が分かってきた。
「その数字は奇数ですか?」
なんだ、その質問は1回目の質問は偶数ですかだったはず、同じことを聞いてるだけじゃないか。何をしているんだ?
「…はい」
「なるほどね」
そう言って翠は少し俯きぶつぶつと独り言を始めた。
「まずはすべての質問に嘘が無い…1か3で…。…Q1とQ3に矛盾が無いとなると…よって……3択か。うん。分かりやすい数字を選んでくれて助かったよ。」
「…」
あれ
もしかして…やばい?
落ち着け一旦冷静に整理するんだ。
Q1:偶数?→×
Q2:24の約数?→〇
Q3:奇数?→〇
Q1が嘘の場合:3回目の解答と矛盾が生じる。ありえない。
Q2が嘘の場合:579の3択。矛盾なし。
Q3が嘘の場合:1回目の解答と矛盾が生じる。ありえない。
よって、579の3択…。
つまり、俺は2回目の質問で嘘をついた時点で、詰んでいた!
気が付かなかった!
どうする?いや、どうしようもない。落ち着け。そうだ、落ち着くんだ。
まだだ、確率は1/3、まだ当てられたと――
「決めたよ。」
「!?」
ごくりとつばを飲み込む。ポケットの中の答えを握りしめる。翠の顔は笑顔だった。
「答えは7だ。」
遠くではしゃぐ子供の声が脳にこだました。
「…正解…です…」
「うん、まずは1ポイント。」
何で?どうして?わからない。脳は混乱していた。
「分かってなさそうだね。俺は7以外ありえないと思ったけどね。君は直感という特別な意味にとりつかれるタイプに見える。パチンコにどっぷりつかっている硬君にとって7はなじみ深い数字。実際、さっきの第1ゲームでの初手の質問は7かどうかだった。さらに言うと、直感というランダムな数字をわざと選ぼうとする君が、ちょうど真ん中の5や端っこの9を選ぶとは考えられない。」
「…そうですか。」
失敗した!なんで7を選んだ!
当てられるわけがない?ちがう!俺がしていたのは思考放棄だったんだ。
このままだと俺はこいつに食い物にされて終わる。
当てるんだ。絶対に当てないと…!
目の前に立つ翠の顔は変わらず笑顔だった。
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