第15話 ミドル・キングダム③
「6ターン目終了。選択したポイントの開示を行います。」
翠:3point
泉:1point
モモ:1point
硬:1point
「よって現在の順位。」
1位、翠:12point
2位、泉:4point
3位、モモ:3point
4位、硬:2point
*
「あ、翠さん!!何考えているんですか?このままだと!」
「硬ちゃ~ん!!!いいよ~!じゃあ次!硬ちゃん3ポイント取ってみようか!」
翠の声は、室内全体に響き渡るほどに大きかった。
泉とモモはピクッと体を動かした後ぼそぼそと二人で耳打ちを行っていた。
「ちょ、ちょっと翠さんそんな大声で――」
「大丈夫、大丈夫。ほら、次は3だよ硬ちゃん!」
その声は確かに泉とモモの耳に入っていた。
*
「次も変わらない。この順位を維持する。1だ。」
泉はいたって冷静だった。
「…そうね。」
モモの目が少し鋭くなった。
「翠はもう3は選べない。それは自殺と同じだ。となれば翠と硬が同じ数字を出して被らせる。もしくは…いや、硬に3を出させて被らせる目的だろうな。」
泉は後半言葉を濁らせた。
「…そうね。次は1でいいのね。」
「ああ。俺らの勝ちは決まったようなものだ。」
*
「7ターン目終了。選択したポイントの開示を行います。」
翠:3point
泉:1point
モモ:2point
硬:3point
「よって現在の順位。」
1位、翠:12point
3位(同率)、泉:5point
3位(同率)、モモ:5point
4位、硬:2point
*
「な!モモ!」
泉は怒っていた。
いい気味だ。あなたが気付けたことを、私が気付けないとでも?
さっき、上からポイント数は12、4、3、2。もし硬が3を選択し翠が1を選択したら。私たちの順位は入れ替わる。
彼は一瞬それがよぎった。「翠のあの大声は硬の順位を上げるためのもの」と。でも彼はそれを私に言わなかった。
なぜなら、もしその通りになってたら、
硬が5point。泉が4point。そして、私が3point…。
私が最下位、泉が3位。彼は変わらず安全圏。
落ちるのは私だけ。それが分かっているのにあいつは言わなかった。
だから逆に私と硬を5ポイントで並べてあいつを最下位にする予定だったんだけど…
翠の選択した数字は3。硬と被せた3。
警戒しすぎた?
「黙ってないでなにか言ったらどうなんだ!」
泉の声は怒りが混ざっていた。
「いちいちうるさい男。私たちが5ポイントで並んだ。ただそれだけ。冷静に判断すれば状況は悪くなっていない。むしろ最下位との点数差が3ポイントになった。つまり順位が変わる可能性が極端に低くなっている。状況は好転している。違う?」
*
この女、裏切っておいて悪びれもせず…
状況が好転?
最も良い状況は俺が2位で、モモが3位だ。
同率3位のこの状況は俺からしたら最悪。
それに奴がここで2を選ぶ理由はない。もしあるとするなら1つだけだ。
こいつの狙いは、俺を最下位にすることだった。
たまたまこの点数になっただけで、一歩間違えれば…。
「…ここまでだ。」
「え?」
「俺らの協力はここまで、あとは個人で好きにやれ。」
「ちょっと。確かにさっきはあなたの言うことを聞かなかったけど、結果的には好転しているでしょ?ここで協力を破棄する意味が――」
「だまれ。一度裏切ったやつと協力し続けるわけがないだろうが。」
泉はボタンを押した。
「いいの?絶対協力したほうが有利だよ?」
モモの声は上擦っていた。
「俺は別に一人でも戦える。」
モモの瞳から一瞬だけ感情が消えた。
「そう…」
モモはボタンを押した。
*
「翠さん…もし俺が3押してなかったらどうしたつもりなんですか?」
硬が翠に耳打ちする。
「大丈夫だよ。硬ちゃんなら押すって信じてたから。だから次も3でよろしく。」
「ええ?わ、分かりました。」
2人はボタンを押した。
*
「8ターン目終了。選択したポイントの開示を行います。」
翠:3point
泉:2point
モモ:1point
硬:3point
「よって現在の順位。」
1位、翠:12point
2位、泉:7point
3位、モモ:6point
4位、硬:2point
*
大丈夫、彼は2ポイントを選ぶと思っていた。そして案の定。
モモはほくそ笑んだ。
彼は言っていた。2位狙いだと。でも状況を見れば狙うべきは2位ではなく3位。
現状を見れば1位と2位の差は5ポイント。3位と4位の差は4ポイント。一見2位の方が安心できるように見える。
でも違う。
2位と3位の差は1ポイント。つまり次のターン彼が1ポイント、私が2ポイントを選択すれば、両方の総合ポイントは8。横並びになる。
彼はそれを良しとしない。
ならどうするか?彼は2位を維持するためには2ポイントずつ選択しなくてはならない。
そうするとあっという間に、1位との差は毎ターン2ずつ狭くなる。
それに比べて硬が翠に協力している以上3位と4位の差は毎ターン開く。
私の選択は変わらない。
モモは1ポイントのボタンを押した。
*
やはり、1ポイントを選んだか…。
泉はさっきまでの怒りはとうに収まっていた。
次もきっとモモは1を選ぶ。好都合だ。ここでポイントを放して俺が2位、奴が3位。この状況を固定させる。後は単純。ただ被らせて全員+1で終わりだ。
このゲームは2位と3位を目指すゲームじゃない。いかに順位を固定させられるかのゲームだ。
泉は2ポイントのボタンを押した。
*
「硬ちゃん、変わらず3で。」
「…あ、あの…」
「ん?」
硬の顔は曇っていた。目はとても泳いでいた。
「俺、まだ合計2ポイントしかなくて、3位との差が4ポイントです…このままだと俺…!」
「大丈夫、このゲームはね。」
翠が硬に近づき耳打ちする。
「ミドル・キングダム。いかに中間層を操る王になれるかがカギなんだ。」
翠はそれだけ言ってボタンを押した。きっと3だ。本心では3を押したくない。
でも、もし3を押さなかったら?
その時は翠さんが15ポイントで勝負が決まる…。俺は3以外押すことが出来ないんだ…
*
「9ターン目終了。選択したポイントの開示を行います。」
翠:3point
泉:2point
モモ:1point
硬:3point
「よって現在の順位。」
1位、翠:12point
2位、泉:9point
3位、モモ:7point
4位、硬:2point
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