6話:依頼成立
中に入るとガーザルさんが俺を片手で担いで奥に向かって大声で
「シースーさーん!夕飯の準備を今日からは2人分から3人分にしてくれ!客人が今日から一週間ぐらい泊まることになる!!」
「え?5日間じゃないんですか?」
「細かいことは気にすんな!」
反射的に言ってしまった言葉を一刀両断される。
それを聞いて奥の方から恐らくシースーさんであろう老婆がでてくる。
「ガーザルったら急にどうしたの? 客人が来るなら早く言いなさいって……あら?」
フユトを見る。
「見たことのない子だねぇ。ガーザルどうしたんだい?」
「例のクエストにかかった新米冒険者だ、シースーさん。とりあえず俺はこいつを部屋に案内するからシースーさんは夕飯の準備の続きを3人分でお願い!」
そう老夫婦の会話が終わるとポカンとしている俺を担いで俺をガーザルさんが2階に運んでいく。
「え、えっとガーザルさん?この依頼ってただの掃除全般とかじゃなかったんですか!?」
「ハッハッハッハッ!なぁに間違ってはいないさ。ただし、依頼内容の九割は俺達の話し相手だがな!」
2階の1つの部屋にたどり着きドアをガーザルさんが開ける。
ホコリ1つも見当たらない部屋が目の前に広がる。
(……掃除する必要ある?依頼内容に掃除って書いてあったよな?)
部屋にはベッド勉強机と椅子、もう一つ別の丸テーブルとそれの付属らしき椅子、様々な本がびっしりと詰まった本棚2つ、後は窓があるらしき場所にカーテンだけである。
ベッドの上にはまるで最初から俺が来ることを知っていたかのように着替えが畳んで置かれている。
ここでようやく下ろされて俺はベッドの上に座らされ、ガーザルさんは丸テーブルの椅子に座る。
「はっきり言わせてもらおう。お前はパッと見絶対に冒険者には向いていないな。」
本日二回目の「冒険者向いていない」を言われた、しかも元ギルドマスターに……
(シンプルにショック)
ガーンとしている俺を見てガーザルさんはさっきまでの豪快な笑顔を消して言う
「だがな、そんなことを言っても諦めずに冒険して死んでいくバカは俺は何百人も見てきた。だからお前みたいに世間知らずなガキには今日から1週間ここで色々と覚えてもらう。逃げても構わない、ぶっちゃけ今から逃げ出しても俺達は何も言わない。」
「だが、一つだけ保証してやる」
ガーザルさんは真っ直ぐ俺を見る。
「俺は、お前を一人前の冒険者にしてやれる」
ガーザルさんの言葉はもの凄く重く、けれども温かい言葉だった。
(……この人、本当に元ギルドマスターなんだ)
さっき会ったばかりなのに、どうしてここまで優しくしてくれるんだろう。
ギルドマスターに選ばれたのがわかるような感じもした。
(いい話だった……なんだかこの世界の人、初対面の相手に優しすぎないか?日本の気遣い精神と良い勝負してるぞ、これ)
そんなことを考えていると下の階からシースーさんが夕飯の準備ができたという声が聞こえた
「どっちにしろ腹が減っているだろうし一緒に行くぞ。決めるのはその後でも良い。」
そう言ってガーザルさんは立ち上がりドアの方へ向かう。
(どっちにしろ俺にはこの世界に居場所がはっきり言ってない。ガーザルさんもいい人そうだし信じてみても良いのか。)
ガーザルさんに急いで着いていく。
俺はガーザルさんに着いて行きながら
「あ、あのガーザルさん。」
「どうした?腹が減ってないのか?」
「いえ、それのことではなくて。依頼、俺からもよろしくお願いします。」
ガーザルさんがその言葉を聞いてニカッと顔にシワをつくって笑い
「おう!よろしくな!えーっとたしか...フウト!」
「フユトです。」
その日の夕ご飯はシツゥーだと言われ少しドキドキしていたがシチューだった。
騙された気もするがこれも異世界って感じなのか。
ちなみに空腹だったのもあってかめちゃくちゃ美味しくておかわりをしたかったが...
(ガーザルさんって...本当に老人なのか?)
ガーザルさんの5回目のおかわりを見ておかわり1回の俺は少しビビるのであった。




