2話:最悪最高
俺は立ち上がった。
気持ち悪い。
靴の中は砂だらけ。
靴下はびしょ濡れ。
でも脱ぎたくない。
怖いから。
突如地中から何か出てくるかわからなくて怖いから!!
そうして歩み始めて一歩、二歩、三歩、四歩、五歩。
草むらにたどり着いた。
(……この距離なら草むらに召喚してくれてもよくない?)
(そこまで心狭いんですかね、なぁ女神様よ……)
そんな事を考えながら靴下だけ脱いで靴を履いた。裸足に砂がまとわりついて気持ち悪いが状況が状況なので仕方がない。
ゆっくり進みながら門まで辿り着いた。本当に近く、近所のコンビニに行くよりも近かったと思う。
二人の門番は、俺の姿を見ていたらしい。
どうやら面白そうなものを見つけたとでも思ったのか、そのうちの一人が親しげに話しかけてきた。
「ߣߌ߲ ߡߛߊ߬ߞߍ ߝߕߌߣߌ ߌ߲ ߦߋ߫ ߝߍ߲ ߞߎ߲ߓߊ ߛߙߐ߬ ߕߌߢߍ߲ ߟߊ ߥߊ؟
ߥߟߊߛߊ߫؟ ߡߎ߲ ߛߌߛߊ߲߬ ؟ ߣߴߌ ߓߋ߫ ߝߍ߬ ߞߊ߬ ߘߏ߲ ߖߡߊ߬ߣߊ ߞߣߐ߫ ߌ ߞߊ ID ߦߌߙߊ ߒߦߋ.」
(あ、終わった...言葉通用しないタイプの異世界だ。
どうすんだよこれ)
「あ、あのー……言葉って通じたりしますか?」
やけくそで喋ってみる
「ߊߥߵ ߓߋ߫ ߞߊ߬ ߞߎߡߊ ߡߎ߲ ߞߊ߲߬...؟ ߌ ߞߣߊ߫ ߊ߬ ߝߐ߫ ߒ ߧߋ߫ ߞߏ߫ ߞߊ߲ ߛߎߡߊ߲ߘߊ߲ߕߊ ߛߓߍߛߎ߲ ߕߴߌ ߓߟߏ߫߹؟
ߒߧߊߞߟߌ ߟߊ ߛߎߜ߭ߊ߲ߘߟߌ ߝߏߛߊ ߕߋ ߣߋ ߓߟߏ - ߤߊߞߍߕߏ.
ߊߥߵ ߦߋ߫ ߣߊ߬ ߣߌ߫ ߔߊߔߌߦߋ ߘߐ߫ ߦߋ߫ ߊ߬ߣߌ߫ ߔߍ߲ߕߙߌ.」
門版が何か言うともう一人の門番が羽ペンと紙を持ってきて何やら書き始めた...。
─この文字わかる?─
(日本語!?)
(なんで文字は日本語なんだよ!!)
(普通こういう異世界って、喋れるけど文字は読めないパターンじゃねぇの!?)
戸惑いつつもブンブンと縦に首を振って見せる。
─お前身分証は?─
(身分証もってねぇ...)
そう冷や汗を流しながら首を横にゆっくり振ってみる。
─着替えてからついてこい。ここ裏門だから正門まで一緒に行くぞ。─
「は?」
(裏門!?この大きさで!?じゃあ横に豆粒の大きさで見えるのは東門と西門!?)
そう思っているとタオルと着替えと何やら書かれた紙を乗せて持ってきてくれた。
─その感じからして着替え持っていないようだしこれを使え。入国後3日以内に払いに来てくれればそれはお前のものだ。─
(優しい!)
(一文無しで怪しいこんな奴でも入国させてくれる!)
(しかも服まで貸してくれる!)
(この国……最高では?)
用務室らしき所に連れてかれ、触り心地からして新品なタオルで軽く身体を拭いてから全ての服を異世界の服に着替える。
(え?靴までいいんですか?この国最高じゃあないですか!!)
鏡を見る。
……異世界の服を着た俺がいる。
(完璧だ)
(どこからどう見ても現地人だ)
もちろん、そんなわけはない。
着替え終わると3人目の門番さんが馬に乗って待機している。
(え?馬にも乗せて移動させてくれるんですか!?ガチでこの国最高か?)
俺を乗せた門番さんが馬を走らせる
そう思いながら'初'の馬乗りからガチダッシュで馬を走らせる。
(あ、ヤバい気持ち悪くなってきた。耐えるんだ俺!また門番さんたちに迷惑をかけるわけには!!)
それから約一時間。
俺は吐かなかった。
ただし、何度も吐きそうにはなった。
──こうして冬目剛の、人生初の乗馬体験は終了した。
なお、二度と乗りたくない。




