11話:濃い人達
「ごめん、ちょっっっっっとこのチラシ見せてくれない?」
そう言われて、俺とガーザルさんは揃って振り返った。
そして――揃って言葉を失った
(え?誰?というかチラシ?なるほどずっと持ってたサーカス団のチラシか!)
「あ、あぁ!チ、チラシです...か。い、良いですよー。」
俺はなんとなくだが状況を理解しチラシを手渡す。
決して女性に話しかけられたから少しひよったわけではない、断じて。
虎の獣人の女性がチラシを持ってジーッと見ていると
「これってどこで配ってたの!?見てみたかったな〜〜!」
「え、えーっと、そこの北から南に行く大通りですけど...?」
「え? だってこっちからあったかい空気が向こうに向かっていってるよ?」
イオラが指差したのは、南門から中央のギルドへ向かう方向だった。
(……え?)
まさか。
「つまり……暖かい風が吹いてくる方向が南、ってことですか?」
「そうそう!」
(この人、方角を気温で判断してるのか……!?)
そんな虎の女性の勘違いを、ガーザルさんがやれやれと言いたげな顔で説明すると、
「え~~!!そうだったの!? なんで教えてくれないの!」
そう言い後ろの二人を振り返り、両手を腰に当てて頬を膨らませた。白髪の眼鏡を掛けた男が
「そもそも勝手に振り回されているこっちの身にもなってください。」
一方で茶髪の少女は
「これって何肉だろう!ラーゴわかる?」
白髪の眼鏡男の方をむいて目をキラつかせながら聞いている
(何この人たちシンプルに怖い)
そう思っているとガーザルさんが
「別にお前達がどんな奴らとパーティーを組んでいても俺としては何も言わないが...どんな関係なんだ?」
ちょうどガーザルさんが俺の言いたいことを言ってくれた
虎の女性が胸を張って
「冒険者登録所で隣りにいたから!!せっかくだし仲良くなろうと思って着いて行ったらここにいた!」
眼鏡男が
「急にこんな距離感で絡んでくる身にもなってくださいよ。それとキュウ、食べ終わった串は自分で持ちなさい。」
(俺、なんで自分からこんな濃い人たちに絡まれに行ってるんだ……)
俺は思わず苦笑してしまう。
(虎耳の人は見た目通り元気そうだし、眼鏡の人は……なんというか苦労人っぽい。あの子は……食べることしか考えてないのかな)
しかしそんな様子を見てガーザルさんはニヤッと笑う
「お前らたしか冒険者登録したばっかりならこんな依頼受けてみないか?人数制限はないぞ。」
ガーザルさんが懐から一枚の紙を取り出した。
見覚えがある。
昨日、俺がギルドで受けた依頼書だった。
イオラとラーゴが依頼書を覗き込む。
……キュウだけは、まだ串料理を食べていた。
マジかと俺が思っていると茶髪の少女以外の2人が
「衣食住付き!? 受けたい受けたい!!」
イオラが食いついた。
「……致し方ありませんが、こちらとしてもありがたい依頼ですね」
「それでお爺さん、この依頼はどこに行けば受けられるのでしょうか?」
「おう、今から連れて行ってやる。」
こうして俺たちは、5人でステユル家へ向かうことになった。
〜道中〜
虎の女性が最初に口を開ける
「今更だけど私はイオラ・ラン!君は〜?」
「あ、フユトです。よろしくお願いします。」
白髮眼鏡男子が
「ラーゴ・リスタル。こっちがキュウ。」
茶髪の少女が
「キュウ・アコロジア!よろし〜く!」
「ちなみに俺が依頼主の、元ギルドマスター――ガーザル・ステユルだ。これから一週間程度、よろしくな」
「……え?」
「……は?」
イオラとラーゴが同時に固まった。
(昨日の俺も、こんな顔だったのかな……)
依頼主〜!」
「「貴方がまさかの<
ガーザル・ステユル!?」
(まさかの違う驚き方である。そこまでは読めなかった)
キュウがモゴモゴと口を動かしながら
「貴方がルローナ先生のお祖父ちゃん?」
もう一人全く別の空気の人もいる。
(……ルローナ先生? 誰だ?)
そうこうしていると家に着く。
キュウは呑気に、
「広ーーい!」
と声を上げている。
一方、イオラとラーゴの顔には、先ほどまでとは比べ物にならないほどの動揺が浮かんでいた。
「ちなみにフユト...だったか?君は一体...?」
「あ、昨日俺もここに依頼で来てしまいまして...。」
ラーゴが口を開けたままその場に立ち尽くしてしまう。
「ねぇお爺さん!ここって食事美味しい?」
「当っっっっったり前だろ!なんたって俺の妻が作ってくれるんだからな」
「ご飯美味しいらしいよ!ラーゴ!」
イオラとガーザルさんはいつの間にか仲良くなっており、キュウはラーゴに構ってもらっている。
──────そして俺だけが、完全に蚊帳の外だった。
(……俺、今日街を案内してもらう予定だったんだけどな)




