10話:驚きと出会い
フユトが階段を駆け下りている最中にガーザルさんの喜びの声が飛んでくる
「おぉ! たまごポーロ丼じゃないか!!」
(……たまごボーロ丼?)
(いや待て。たまごボーロって、あのお菓子だよな?)
その言葉を聞きながら、フユトは階段を駆け下りてテーブルへ向かう。
そこで俺が目にした光景は思っていたのと全くもって違っていた。
丼の上に乗っていたのはいわゆる日本で言うカツ丼であった。
「……カツ丼じゃん」
思わずつぶやいてしまう。
なぜならフユトが想像していたのはたまごボーロが乗った意味不明の丼だと思っていたが出てきたのが普通のカツ丼であったからだ。
そんな言葉を聞き逃さなかったガーザルさんが俺を見て
「なんだ?いらないなら遠慮なく遠慮なく貰ってやろう!!(ニコニコ)」
「ちょ、いや食べます!食べさせてください!!」
ガーザルさんがはっきりと不服そうにした顔をスルーして俺は少しの不安を持ちながら丼を持ち上げて一気にかきこむ。
(うまい。なんならこっちのほうが美味しい気が...)
そんなことを考えながら、窓の外に目を向ける。庭では、俺の服が干されていた。
(あ、俺の服だ...。あれ?そういえばあの服って最初の門番さんから買ったものでは...!?)
思い出してむせてしまう俺を見てシースーさんが水を差し出す。
「服!そうだあの服門番さんから売ってもらったやつだ!!」
俺は勢いのまま立ち上がってしまう
それを聞いた二人は一瞬ポカンとして笑い出す
「おまえ、それって裸で外から来たっていうのか!!」
お腹を抱えながらそういうガーザルと笑いを必死に堪えているシースーさん。
「いや、違うんです!ちゃんと着てましたし、その服を代わりに預けてきて……」
「もしかして……服質?」
その言葉に二人がまた笑いだす。
俺としては結構焦っているのだと言うのに...!
「よし、じゃあ午後は俺と一緒に街に出るぞフユト!」
いつの間にか食べ終わったガーザルさんがそう言い立ち上がり食器を片付け始めながら
「ついでに街案内もしてやる。シースーさん、留守番頼めますか?」
シースーさんは「はいはい」と二つ返事で承諾してくれた。
「フユト、それじゃあ着替えは部屋のタンスに入ってるからなに着てもいいから着替えてまた籠に入れておいてちょうだい。」
シースーさんにそう言われて食べ終えて食器を片付け終わった俺に籠を渡してくる。
(シースーさんもいつの間にか食べているだと...!?)
(俺、二人より先に食べ始めたよな……?)
老人二人に食スピードを追い越されていることに戸惑いを隠せずそのまま籠を持って部屋に戻る
「ガーザルさん、なんかこの服あの干されていた服よりも何倍も着心地良いんですけどもしかして良いやつだったりします?」
「それしか服がないんだ!どっちにしろ仕方がないだろ!」
2人で外を歩きながらそんなような雑談をしながら南門まで歩いていく。
昨日は夜だったせいで気づかなかった。
道の両脇には店が並び、露店からは香辛料の匂いが漂っている。
冒険者らしき人間や獣人が行き交い、馬車まで普通に走っている。
――これが、この世界の日常なのか。
「それでフユト、金は出してやるが値段は何円と言われた?」
「言われてなかった...ですね。もしかして俺、騙されちゃいました?」
テヘペロをした俺の頭にゲンコツが打ち込まれる
「まぁ、ぼったくろうとしたら俺が門番に話をつけるから大丈夫だ」
「話で......ですか?」
「ああ。拳でな」
「冗談ですよね!?」
そう言い高笑いをするガーザルさんを見て一般人やいかにもの冒険者が
ヒソヒソ
「元ギルドマスターがあんなにご機嫌ってヤバくねぇか...」
「あの隣のガキまさかの元ギルドマスターの前でやらかしちまったのか...憐れだなw」
「ガーザル様が久しぶりにあんなにご機嫌なの見たわねぇ。」
「そうねぇ、最近あまり顔も出してなかったですしねぇ。」
(視線が痛い...なにか会話をしなければ...!)
そう思ってガーザルさんに着いて行きながら歩いてそう思ってガーザルさんについて歩いていると、北から南へと街を縦断するメイン通りへ出ようとした、その時だった。
大勢の人と共に北の方向から何か楽しげな曲を流しながら何かの列が歩いてくる。
サーカス団っぽい感じだがやけに人数が少なく感じる
人数を数えてみると――七人。
「……七人?」
たった七人しかいない。
なのに、大きな荷台と派手な装飾、鳴り響く音楽のせいで、まるで大人数の一団がやって来たように見える。
荷台の中央には一人の人物が立ち、その周囲を残りの六人が歩いている。
そんな列を見てガーザルは何やら意味深の溜息を漏らして歩けるまで待っている。
俺は珍しいものを見たかのように眺めていると一人の少女に話しかけられる。
「あ〜昨日の人だぁ!ロロのこと覚えてる?」
そう言いながら昨日の夜にスレユル家まで送ってくれたロロにチラシをどさくさに紛れて渡されながら話しかけられる。
「あ、先日はどうもあr」
そう言おうとした矢先にガーザルさんに割り込まれる
「ロロ!またお前新人冒険者にちょっかいかけたのか?ロロ何度も言うが人には人の事情がある。お前らの事情を相手に押し付けるなと、ギルドマスターの頃から何度も言って――」
「そうカッカしないでよガーザルお爺さん♪別にロロは困っていた人に道を教えてあげただけだもん♪」
ガーザルさんの声には明らかな苛立ちが混じっている。
なのに、周囲の人々は――
「あらあら、またガーザル様とロロちゃんがやってるわ」
「相変わらず仲がいいなぁ」
と、微笑ましそうに眺めている。
(……え? これ、仲良しに見えてるの?)
「フユト!行くぞこんな奴らに構うために外に出たわけではないだろう!」
人混みをかき分けてガーザルが南の方へ向かい始める。
オロオロしている俺を見たロロは
「サーカス、もしよかったら見に来てねぇ~!」
ロロがそう言うと他の人達にもいわゆるファンサをしてチラシを配りつつ止まらず進んでいる荷台の方にちゃんと向かいつつ歩いていく。
俺は急いでガーザルさんに追いつくが無言であった。
(なにかやらかしたかなぁ...。)
サーカス団の声や人混みが静まりギルドを超えて南門が見えて来たところで俺は意を決してガーザルさんに話しかける。
「あ、あのサーカス団とガーザルさんは何か関わりがあったりしたんですか?なんかロロさんと昔からの仲っぽい感じがしたんですけど...。」
そう言うとガーザルさんはサーカス団がいないことを確認して小声で俺に言う
「フユト、言っておくが……奴らは根っからの『偽善者』集団だ。あんまり関わらないほうがいい。理由は帰ってから話す」
「え!?で、でもあの人達街の人達から大歓迎されてましたしロロさんも優しそうな人なイメージでしたけど...?」
「続きが帰ってから、だ。とりあえず着いたぞ南門。」
いつの間にか南門の目の前まで着いた。
ガーザルさんがここで待ってろと俺に言って門番に話しかけに行き何やら話している
数分後、門番とガーザルさんが、昨日俺が預けた服質だった服を持って戻ってきた。
「良かったなお前、あの服で金もいらないらしいし、お前を試していたらしいぞ。」
なんと門番さんは、俺の身なりや様子から「身寄りのない子供」だと判断し、あえて服を預かって様子を見ていたらしい。
(門番さんやっぱいい人だ!流石だ!!)
そんなことを思っていると俺のチラシを持っていた手を後ろからガシッと突如と知らぬ女性に掴まれる。
「ごめん、ちょっっっっっとこのチラシ見せてくれない?」
振り返ると3人いた。
ガーザルさんが驚いた顔で俺と一緒に振り返る。
おそらく元ギルドマスターとその連れだから面倒事に巻き込まれないと思ったのだろう。
俺の手を掴んでいたのは、虎の獣人らしき女性。
その後ろには、白い髪に眼鏡をかけた男性が一人。
そしてその隣には――
串料理を八本も抱えた、小柄な茶髪の少女。
(……八本?)
いやいやそこじゃないだろ、俺。
ガーザルさんは、珍しく完全に固まっていた。
(……え?)
俺は三人を見た。
ガーザルさんを見る。
もう一度、三人を見る。
(何この人たち……?)
そして俺も、そのまま硬直してしまった。




