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第3章:腐敗の縁(ふち)にある美学

#犬神家 #腐った愛の解剖学 #サイコスリラー #医学サスペンス #なろう小説 #創作

「ファンタジーの世界には不老不死の霊薬があるかもしれないが、犬神家において『若返り』とは、母の肌に僕が施し続ける終わりのない医療処置のことであり、腐敗し始めた完璧さへの渇望を満たすための儀式だ」


犬神家の二階には、常にシャネルの香水とヨードが混ざり合ったような匂いが漂っている。ここが僕の母、犬神蓮華の場所だ。彼女は魂を飲み込みそうなほど巨大な鏡の前で、その時間を費やしている。


「江戸ちゃん、お帰りなさい」

声は穏やかだが、その裏には隠しきれないヒステリックな震えが潜んでいた。


僕は彼女の無機質な部屋に足を踏み入れた。蓮華は鏡台の前に座り、その美しい顔はまるで蝋人形のマスクのように強張っている。鋭いLED照明の下で、僕は素人には見えないものを見ていた。避けようのない細胞劣化の兆候を。


「こっちへ来て、いい子ね。これを見てちょうだい」彼女は震える指で目尻を指した。「シワよ。たった2ミリだけど、まるで腐敗した傷跡が広がっていくような気分なの」


僕は近づき、ポケットに常備している白い手袋をはめた。冷たい指先で彼女の顔に触れ、皮下組織を診察する。その肌は異様な感触だった。これまで何度も注入してきたヒアルロン酸や合成フィラーのせいで、弾力が不自然なのだ。


「江戸ちゃん、何とかして。あなたが学んだ技術を使いなさい。結合組織を持ち上げるのよ。老け込みたくないわ」

彼女は切実な眼差しで僕を見つめた。


「母さん、今月でもう5回目の処置です。真皮組織はすでに弾力性を失い始めています」僕は冷静に答えた。


「そんなのどうでもいいわ!」彼女は叫び、すぐに落ち着きを取り戻して僕の頬を撫でた。「あなたは私の一番優秀な息子でしょう? さあ、早く準備して」


僕は溜息をつき、メディカルバッグを取り出した。デスクライトの下で、局所麻酔液を準備する。


僕は彼女の生え際近くに小さな切開を加えた。傷跡が目立たないポイントだ。鋭い金属が皮膚を貫くとき、下層で硬化した組織の抵抗を感じた。蓮華は顔をしかめない。それどころか、安堵の溜息を漏らした。


「いいわ……それよ……もっと引き上げて、江戸ちゃん」

彼女のSMAS(表在性筋膜)層を操作している間、彼女は囁いた。


僕は母の顔を見つめた。外界が崇める美しさの裏側で、僕は解剖学的な混沌を見ていた。滲み出す出血、圧迫された神経、そして位置を変え始めた人工脂肪。これは美ではない。ただの「遅延された壊死」だ。


突然、部屋のドアがわずかに開いた。その隙間から、朱里の瞳が覗いているのが見えた。彼女は嫉妬などしていない。歪んだ喜びを浮かべ、僕が別の対象に執着している様子を観察していた。


犬神家において、僕たちは優雅に老いることなどない。僕たちはメスで時間を拒絶し、最後には非人間的な皮に包まれた美しい骨組みだけが残るのだ。

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