第11章:捜査と潜入
#犬神家 #腐った愛の解剖学 #サイコスリラー #医学サスペンス #なろう小説 #創作
「ファンタジーのアドベンチャーでは、行方不明になったキャラクターは秘密の任務に就いているか、ドラゴンに誘拐されたのだと解釈される。しかし現実の世界では、東大生の失踪は、警察の捜査班が捜索差押令状を持ってドアを叩きにくるまでの時間の問題に過ぎない。結局のところ、人間の存在を隠蔽するのは、心臓の解剖学を学ぶよりも遥かに困難なことだった。鼓動を止めることはできても、青い制服の向こう側から次々と湧き上がる疑問を止めることはできないのだから」
僕は東大のキャンパス内にあるカフェテリアで、ブラックコーヒーを啜っていた。その時、安物のスーツを着た、およそ臨床現場には相応しくないオーラを纏った二人の男が僕のテーブルに近づいてきた。一人は佐藤刑事。疲れた目をしているが、検眼鏡のような鋭い眼光を持つ中年男だ。
「犬神江戸くんだね? 医学部の」佐藤は警察のバッジを提示した。「君の同級生、海斗くんについて少し話を聞かせてもらえるかな?」
僕はコーヒーカップを正確な動作で置いた。手の指伸筋に微かな震えも起きないように。「ええ、刑事さん。ですが、15分後には臨床講義の予定が入っています」
「長くはかからないよ」佐藤は促されることもなく席についた。「海斗くんの家族から、リハビリのために『自主退学』したと聞いて以来、連絡が取れないと通報があったんだ。大学側の話では、図書館で最後に彼と一緒にいたのは君だそうだね」
僕は人工的な同情の表情を浮かべた。「確かにあの夜、彼は精神的なプレッシャーについて打ち明けてくれました。海斗は優秀な学生でしたが、東大の競争的な神経症は、時にドパミンの安定を損なうことがあります。僕はただ、休養を勧めただけです」
「長野にある犬神家所有の施設で休養、か」佐藤は目を細め、小さな手帳を取り出した。「困ったことに、その施設を調べたが、海斗くんの名前は登録されていなかった。それどころか、現地の看護師はここ一ヶ月、新しい患者は受け入れていないと言っている」
頸部の脈拍が少し速くなった。忌々しい自律神経反応だ。父がデータの同期をミスしたのか、あるいは僕を試すためにわざと隙を作ったのか。
「事務的なミスかもしれません。父は多忙を極めていますから。今夜にでも確認してみます」僕は冷たく答え、立ち上がろうとした。
「図書館の駐車場で汚れも見つかっている」佐藤は声を低く保ったまま、プレッシャーを強めた。「大量の血ではない、ほんの数滴だ。だがDNA鑑定には十分だ。もし海斗くんのものと一致すれば、犬神邸の捜索令状を取ることになる」
僕は刑事を見つめた。白衣の下でスマートフォンが震えるのを感じる。朱里からのメッセージだ。
『江戸くん、家の門の前にパトカーが止まってるわ。中に入れてあげるべき? それとも……彼らも新しい「患者」にしちゃう?』
しまっ(クソ)た。朱里は本当に辛抱が足りない。
「刑事さん」僕は最も穏やかな、医師特有の笑みを向けた。「僕たちの家を訪ねたいのなら、ご自由に。ですが、事務的な憶測よりも強力な証拠を持ってくることです。犬神家は、その運営を邪魔されることを好みませんので」
僕は歩き去ったが、これが「社会的な腹膜炎」の始まりであることを理解していた。すぐに処置しなければ、感染は急速に広がるだろう。家に戻らなければならない。地下室の『コレクション』を片付ける前に、朱里が門前の刑事を切除してしまわないように。
ファンタジーの世界には逃げるための次元の門がある。僕にあるのは、今や蓋の閉じかかった棺桶のように感じられる地下室だけだ。




