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第10章:女王の最終オペ

#犬神家 #腐った愛の解剖学 #サイコスリラー #医学サスペンス #なろう小説 #創作

「家族を守るために化物を狩るファンタジーの英雄の話を読んだことがあるかもしれないが、犬神家において、僕たちは化物を解剖する方を好む。今夜、手術台はもはや海斗のような部外者のための場所ではない。母がついに、ずっと渇望していた永遠の美的『トリートメント』を受ける番だ。これは最終オペ――彼女の皮膚組織を切り取るだけでなく、僕たちの血縁を永遠に断ち切るための儀式だ」


地下室の手術灯が唸りを上げ、犬神蓮華の顔に無菌の白い光を投げかけている。彼女は高級なシルクのドレスを纏ってそこに横たわっていた。午後の紅茶に混ぜた高用量のジアゼパムがまだ効いている。彼女はひどく穏やかで、美しかった。間もなく僕が時間の中に凍結させることになる、偽りの仮面ファサードのように。


朱里は僕の傍らに立ち、狂気じみた微笑を隠すサージカルマスクを着用していた。彼女の瞳は輝き、まるで神聖な供物であるかのようにマイクロサージェリーの器具が並んだトレイを捧持している。


「始めましょう、江戸くん」朱里が囁いた。「彼女を世界で一番美しい彫像にしてあげて」


僕はスキサメトニウムの入ったシリンジを手に取った。この透明な液体は、横隔膜を含む全身の横紋筋を麻痺させる。彼女は呼吸ができなくなるが、中枢神経系は依然として血管を這う冷たい感覚の秒単位の記録を止めないはずだ。


僕は肘正中皮静脈にそれを注入した。ゆっくりと。正確に。


「母さん」僕は彼女の耳元に顔を寄せ、低く囁いた。「貴女はいつもそのシワが消えることを望んでいた。今夜、僕は貴女の顔の筋肉が二度と動かず、老化のラインを作らないことを確約します」


僕は医学史上、最もアグレッシブなフルフェイスリフト術を開始した。耳前部から髪の生え際にかけて輪状の切開インシジョンを入れる。レーザーメスを使い、マイクロメートル単位の精度で皮膚層を筋膜から剥離していく。飛び散る血はない。染み出そうとするすべての毛細血管を、電気焼灼器(電気メス)で即座に閉鎖していく。


「見て、江戸くん。彼女、なんて静かなの」朱里はリトラクターで母の顔の皮膚を牽引し、その下の純粋な解剖学的構造を露出しながらクスクスと笑った。「喋れない時の方が、ずっと正直に見えるわ」


処置の最中、母の目が突然わずかに開いた。縮瞳ミオーシス。瞳孔が収縮し、麻痺の暗闇の中で僕に焦点を合わせようとしていた。彼女は叫ぶことができない。涙腺さえも僕が麻痺させているため、泣くこともできない。彼女にできるのは、狂った執着のために自分の顔を剥いでいる実の息子を――僕を――見つめることだけだった。


「そんな目で見ないで、母さん。これが貴女の望みだったでしょう?」僕は皮膚のフラップをより高い位置へと縫合し、顔面が完璧に引き上がるまで締め上げながら言った。


突然、暗い部屋の隅から静かな拍手の音が響いた。


犬神貞人がそこに立ち、地下室のスチール製ドアに寄りかかっていた。彼は驚いていなかった。怒ってもいなかった。それどころか、彼は母の酸素飽和度の低下を示すモニター画面を、恐ろしいほどの興味を持って眺めていた。


「見事な縫合技術だ、江戸」父が賞賛した。「顔面神経を完全に遮断したな。彼女は二度と老いることはないが、二度と感情を表現することもできない。実に……犬神らしい審美的解決策だ」


父は歩み寄り、呼吸不全で死にゆく妻を、絵画を評価するアートキュレーターのような眼差しで見つめた。「二人とも、綺麗な仕事をした。だが忘れるな、江戸。地下室に埋められた秘密は、お前がこの『助手』をコントロールできている間だけ安全なのだということを」


父は朱里に視線を向けた。朱里は今、激しい憎悪を込めて彼を見返していた。


僕は深く息を吸い、レーザーで焼けた肉の匂いと、薄れゆく母の香水の残り香を嗅いだ。手術は終了した。犬神蓮華が二度と口うるさく騒ぐことはない。彼女は今や、僕たちのプライベート・ミュージアムにあるコレクションのひとつに過ぎないのだ。


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