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場面29 プレハブ設置

~これまでの転移一家~


異世界ではスマホ以外にインターネット環境がなく、電気も無い藤田家。

日本の跡地にプレハブを建てればリングを通してネットも電気もどうにかなるだろうと考えていた。


 誠司が目を覚ますと、そこは自分の部屋ではなく、居間の座卓だった。


 座卓の上には電源の落ちたノートパソコンが開いたまま置かれており、パソコンを触りながら寝落ちしたことが分かった。


 芽衣子と父の新之助も座卓に突っ伏す形で眠りこけていた。


「SNSに書き込みしながら寝ていたのか? 」


 誠司が寝ぼけ眼を擦っていると、ノートパソコンの隣でスマホが鳴った。着信画面にはジローと表示されていた。


「おはよう。どうした?何かあった?」


「プレハブの設置に来たよ。置く場所はこっちで適当に選んでいいよな?」


「設置?…いくら何でも早くないか?こっちは有難いけども。」


「業者から『今日の予定が空いけど、どうする?』って連絡を貰って急遽来たの。もう俺の目の前にはプレハブを積んだクレーン付きのトラックが有るけど、何処に設置するか聞かれてるんだ。別にこだわりも無いだろ?」


 次朗の目の前にはプレハブ小屋を載せて、ラジオを大音量で響かせたトラックが有った。DJは昨日の中山競馬場で久しぶりに連発した万馬券を話題にしていた。


「ああ、そのあたりは任せるよ。後々ネットやら電気やら引きやすい場所にしてもらえれば。出入口の方が良いのかな――ジローはどう思う?…ジロー?」


 次朗はトラックに意識を向けていたが、藤田家の跡地に赤い国産のスポーツカーが入ってのが見えた。


「ああ、入口付近で良いと思う。それと今、真奈美さんが来たぞ。昨日の今日でどうしたのかな。ちょっと待っててくれ。」


 今日は最初からコンバーチブル仕様だったので、運転手である真奈美の顔が見えた次朗は車に駆け寄った。


「おはようございます!どうしたんですか?!何か忘れ物でも?」


 真奈美はサングラス外してをダッシュボードの上に置くと、エンジンを切った。


「忘れ物?いえ、薬を持ってきました。」


 真奈美は助手席の赤い十字架がプリントされた銀色で大きな、正に医療用といった見た目のバッグをポンと叩いて次朗にアピ―ルした。


「もう薬を?早いですね。もう少し時間がかかるかと。」


 次朗は誠司達の苦労を知っていたので、まさかここまで早く入手してくるとは思っていなかった。


「芽衣子さんから聞いた病気の子の症状を考えるに、早めの方が良いと判断しました。」


 医療バッグは助手席にそのままにして、小さなポーチだけ持って真奈美は車から出てきた。昨日の白衣姿と違い、今日の真奈美は黒とピンクのツーピース姿だった。


「…あ、えーっと。そうだ、その医療バッグを持ちましょうか?」


 次朗は真奈美から目を逸らして、カバン持ちを提案した。


「いえ、まずは向こうとお話がしたいです。今は誰とお話を?」


 真奈美は次朗の持つスマホに意識を向けさせた。


「あ、そうだった!誠司と、弟の方と話してました。誠司!薬を持って来てくれたってさ!真奈美さんには向こうの連絡先も伝えたから大丈夫ですよね?じゃあ何か有れば声をかけてください。」


次朗は早口で伝えると、そそくさとコンテナを積んだトラックに向かった。



真奈美はポーチからスマホを取り出すと、誠司に電話を掛けた。


「もしもし?わたしは浜松真奈美。医師をしています。あなたはSNSで私に話しかけてきた女性の弟さんね?」


 プレハブの搬入業者に指示を出す次朗を見ながら、真奈美は誠司に電話で話しかけた。


「はい、誠司です。薬を持って来てくれたんですね。ありがとうございます。使い方も分からないので指示など頂けると助かります。」


「それは当然です。使用方法などは紙にも書きましたけど、ちゃんと説明や指示もするつもりで今日は来ました。あなた方もそのつもりで処置してください。」


 会話しながらも真奈美は次朗の業者への態度が気になっていた。それは腰の低い態度だった。自分の身の回りの人間、特に医師は出入りの業者や技師を奴隷のように扱うか、ぞんざいに扱うのが普通だった。


「え?うん、そうドクター。マウロ君の薬を持ってきてくれたって。あ、ちょっとメイ姉!何するんだよ!」


 弟を名乗った電話口の相手は誰か別の相手と話していると真奈美には分かった。その相手が誰なのかも分かった。


「あなたドクターZなの?薬を持って来てくれたって本当?」


「芽衣子さんね?ちゃんと直接お話するのは初めてですね。はい、私は医師です。ちゃんと薬も持ってきました。」


「そうなの。詐欺師だなんて言ってごめんなさい。その、私…。」


「いえ、それだけあなたが真剣だったというだけ。もしも私が同じ立場なら、もっとひどい手段も考えていたでしょう。だから気にしないで下さい。」


「そう?ありがとう。何かお礼が出来ればいいけど、生憎とコッチは何もなくて。」


「薬の代金はもう貰ってあります。お礼というなら、病気の子供をしっかりと治してあげて下さい。それが何よりのお礼です。それよりあのトイレも何も付いていないプレハブは何ですか?」


 聞かれて芽衣子は経緯を話した。しかし真奈美はプレハブを見て顔を顰めていた。


「苦肉の策だったと。ならコレも手を打った方がいいかもしれませんね。…いえ、それより今は薬が、治療が先決です。例の子はどこに?」


「ウチには居ないの。でも、指示を受けたりするなら連れて来た方が良いわね、やっぱり。ちょっと連れてくるから少し待っていて。リングとスマホは持って行かないからお父さん、こっちのトランシーバーをお願い!何かあったら。私たちの方に中継してね。それじゃドクターはちょっと待っててね!連れてきたら、また連絡するから!」


「ちょっと待って!お父様には一点ご相談事項があるので、お電話を代わって下さい!」


「お父さんに?いいけど…はい、お父さん。ドクターが話が有るって。」


 芽衣子はそう言って誠司のスマホを父に渡した。


「お電話変わりました。父の新之助です。この度はわざわざ薬をありがとうございます。」



 父と真奈美の会話を尻目に、芽衣子は立ち上がると玄関に向かいつつ、誠司を手招きした。


「メイ姉どうした?」


「やっぱりマウロ君たちをウチの離れで一旦療養させた方が良いと思うのよね。ドクターから治療の指示を受けるなら、こっちに泊まり込んでもらった方が何かと安心でしょ?」


 藤田家には母屋と納屋の他に、もう一軒の家屋が有った。現在の母屋が建築される前に利用していた家屋で築60年以上のベテラン家屋だった。


 風呂は薪を焚く五右衛門風呂だったりと日常的使いには手間がかかるが、法事などで親類が集まることもあるので、取り壊すことなく今日まで手入れされて存在していた。


「俺は良いアイディアだと思うけど、向こうがOKするかな?いきなり赤の他人の家に。」


「いきなりじゃないわよ。この前行った時に話してあるし。」


「あーなるほど。教会で『考えておいて』って言ってたのは、それだったのか。まあ、そういうことだったら、うん。じゃあ軽トラで向かう?あれなら荷台に寝かせたまま運べるし、ゆっくり走れば別に体に障らないだろうし。」


「うん、あんたには運転を頼みたいの。」


「なるほど、了解。」


 誠司は玄関の下駄箱の上に置いてあった軽トラの鍵を掴むと、芽衣子と共に納屋へ向かった。


良いペースという気がしてきたので、特に断りが無い限りは3日に1回ペースの投稿で続けていきたいと思っています。

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