第7話 次の街
ずいぶんと暖かくなった今日、この頃。
そりゃ、季節の移り変わりもとい私の気分の移り変わりに伴ってそれに合った移動をしているのだから、温かくもなるだろう。
以前に立ち寄った街は、どうも蒸し暑いし住民はうるさいしであまり合わなかった。
それでも、今の時期は結構どこに行っても勇者を崇め称えるお祭りをしている。
でも、唯一といってもいいほどしていない街が、
きっとどこかにあるはず。
というわけでたどり着いたのが、この街だ。
まあ、心地よい程度の温かさ。それに、人もまばらだし、きっと魔王軍が世界を震撼させていたときもこんな感じで暮らしていた連中なんだろう。
周りのパリピ街に合わせずに、勇者が世界を救った日だろうとのんびりと暮らす。
スローライフを目指す私にはもってこいな場所だ。
そしてなにより、ここならワンチャン私の祭りを開かせられるかもしれない。
そんな野望も抱えつつ、私は街の宿を探した。
街には石造りの家が沢山立ち並んでいる。しかし、どの家も個性が無くてつまらん。
白い、なんだこれは?わからん。白い壁に、石レンガの柱。そんで、なんかオレンジっぽい色の屋根。
ハア、
もっと人の心揺さぶるような工夫をしろよ。
と思いつつも、美味しいものを食べさせてくれればいい。
というわけで、あまりにも街の通りを人が歩いていないので、私は適当な民家の扉をコンコン、とノックすることにした。
ほんと、祭りだ祭りだって騒がないのは良いことだけど、旅人かつ世界を救った私に敬意を払わないのは人として論外だわ。
「あの〜、すいません」
そういいながら、何度も扉をノックした。
すると、中から不機嫌そうなガタイのいいおっさんが出てきて「見ない顔だな」と私に言ってきた。
「顔だけじゃないでしょ」
「・・・なんだよ、今日は皆家にいるんだよ」
そういってから、「他の家も見てみろ」と言って他の家を指さした。
まあ、確かに誰も歩いている人がいない。
「わかっただろ?」
「・・・えっと、何もわからないんですけど、今日ってなんかとk別な日かなんかですっけ?」
私は、一応下からそう言ってみた。
もちろん、屈強な男だろうが魔王軍と戦ってきた、ましてや勇者の隣でそれなりに戦ってきた私には雑っ魚ぉでしかないのだが、いい。
旅人だからな。それなりの礼節及び常識兼わきまえた行動というのは大事だ。
「今日っていうか、今月は勇者が魔王を倒した記念すべき日だろ?お前は外から来たのか?」
「まあ、その、旅をしてまして」
「それでも、勇者の記念日くらい知ってるだろ?この街では、勇者に祈りを捧げるために家に籠るんだよ」
ああ、なるほど。
「あ、そうだったんですね。その、他の街では皆騒がしくしてたんで、もちろん勇者が魔王を倒したことは知ってますよ」
「宿もやってないから、どっか行きな」
しかし、どっか行ったらそこは騒がしく馬鹿らしく惨めったらしく祭りをしているんだ。
できれば、ここで数日泊めてもらいたい。もう、ここ2日寝ていないし辛いのだ。
「で、でも、私、旅人で、その、泊めてもらいたいなって」
私がそうモジモジしながら言ってみせると、おっさんは私の全身を舐めるように何往復か見てから「・・・家でよければ」と言ってきた。
まあ、別にいい。
私が負けるような相手じゃないからな。
というわけで、私が家の中に入ろうとすると、おっさんはさっそく私の尻を触ってきた。
もちろん、私はその手を思い切り握った。おっさんが言葉にならない悲鳴を上げて手からゴキゴキという音が聞こえてきた。
「なにやってるんすか」
私はおっさんの手を離すつもりはない。おっさんは、痛みで床に転がる。
「あのねえ、まあ気持ちはわかりますよ。そんなね、旅人の若い姉ちゃんに手え出そうとするなんてさ、ほんと弱いものいじめもいいとこよ」
「あ゙っ、お、お前、だって、家に入ってくればああああああ!!」
私は手を握る力を強める。おそらく、小指くらいは折れているだろうな。
「まあ、どっか泊まれる場所探してよ。あとさ、勇者を崇めて家に籠もって何しているかも教えてよ」
おっさんがあまりにも苦しんでいるので、私は手を離してあげた。
おっさんがこちらを睨みつけるとも小動物が命乞いをするようにも見える目で見てきた。
もちろん、小動物が命乞いをするような場面を見たことはないけど、その、ぱっと思いついた言葉をただ心の中に並べただけだからそこは勘弁してもらいたい。
まあ、また次までに考えとくから。
というわけで、私はおっさんの手を握ったまま外に出た。そして、おっさんがこの街の私と同じくらいの年の女性の家に連れてってくれるっていうので、私はそこに泊めてもらうことにした。
さすがに、寝てるときに襲われたらどうしようもないからな。
まあ、悶々としている最中に急に私みたいな美少女っていうには年を取りすぎた気もするけど、美女が来たら溜まっていたものが我慢できなくなったりすることもあるだろう。
というわけで、無個性な通りをすり抜け、目当ての家に着いた。
おっさんは、そこで帰っていった。まあ、おっさんに家を知られているのが異常なことなのかこの街では当たり前のことなのかわからないけど、私に手を握られてる場面を見られるのは恥ずかしいだろうしな。
というわけで、私はコンコンと扉をノックした。
すると、私よりだいぶ若そうな髪の長い女性が出てきた。
「・・・あの、今は」
断られると困るので、彼女が何か言い切る前に私は「旅人なんですけど、泊めてもらっていいですか?」と彼女に尋ねた。
「ああ、そうなんですか、でも、・・・まあいいですよ。宿もやってないですしね」
ああ、ありがたい。
私はありがたくそこに泊まらせてもらうことにした。
家の中は、
フッ、説明するまでもなく普通だ。
私は凡チェアに腰掛けて私は足をプラプラと揺らした。
「いつも、この時期はこうやって家にいるんですか?」
彼女が遅れて部屋に入ってきて、一瞬なんの遠慮もなく椅子に座っている私のことを見て動きを止めたが、そのあとに「最近街の首長が変わって、それでこうなったんですよ」と言った。
「ああ、そうなんですね」
「その、勇者が若い男だっていうのが気に食わないみたいで、信じてないんですよ。その、年寄りなんですよ、首長が。でも、皆に言ってもわかってくれないからこうやって拗ねて、家から出るなっていう祭りになったんです」
それは、厄介なこった。
ひねくれ爺さんのせいで、つまらない記念日を送っているわけだ。
「それは、大変ですね、」
そこまでムカつく内容なのか、と思いつつも、これはチャンスかもしれない、と思った。
そうだ。
勇者の代わりに私を祝う祭りをやってもらえばいいんだ。そうしよう。
しかし、今日は疲れたのだ。
「・・・あの、実は私全然眠ってなくて、」
「あ、そうなんですか?あ、ベッドが一つ、・・・ああえっと、ベッド使っていいですよ」
「あ、いいんですか?ほんと、ありがとうございます。親切な方に泊めてもらえてよかった〜」
「いやいや、こちらこそ、せっかく楽しみに来てもらったのになんにもやってなくて申し訳ないですよ、」
てなわけで、私はこの家に泊まらせてもらうことになったのだった。




