第6話 私
私は、せっかく街を守ったというのに誰も私のことを褒めてくれないのだ。
私は、この国でトップクラスの騎士の娘なのよ。
とりあえず、次に魔王が誕生したなら、まっさきに私はあの街を見捨てるわ。それだけは決定だ。
というわけで、私は次の街に急いだ。
しかし、だいぶ遅い時間帯だ。
はあ、野宿か。
私は背負っているバックからテントを取り出す。
「・・・」
やめよう。歩けば次の街に着く。それに、もう私の脅威となるような魔物はまったく生き残っていないんだ。
はい、急ぎましょう急ぎましょう。
私は先を急ぐことにした。
残念ながら、私は当分この世界を好きになれそうにない。
というわけで、ここからは私から回想させてもらいます。
そのね、私、勇者と一緒に冒険してたんですよ。
まあ、昔の話ですよね。それで、ていうか、そもそも私、普通に考えたら優秀な騎士が国王を守るべきじゃないですか。
それなのに、なんか冒険に行ってこいって命令されたんですよ。
で、私、そりゃよくわかんなかったからなんでなのか聞きましたよ。それでも、国王は答えてくれなくて、それに私のお守りする第12王子もなんにも答えてくれなかったから。
それに、誰と一緒に行くか聞いてなかったんですよ。まあ、騎士団長のあのイケメンの先輩かな〜とか思ってたら、最近田舎から出てきてぽっと出のキザ野郎ですよ。
まあ、あいつのことは気に食わないけど、魔王討伐に直接魔王城まで派遣されるっていうなら、重大任務だし悪くないかなって思ってたんですよ。
それで、歩き始めた途端、そいつが「俺、キミのことが好きなんだよね」って言い出してきたんです。信じられないでしょ?
ほんと、私なんて高嶺の花っていうか高値の花っていうか。そのねえ、皆に好かれるタイプだから、そんな私のことが、好きになっちゃったのって、なんかイタいなって思ってたんです。
田舎から来て、急に貴族の生活を体に喰らうとやっぱりお嬢様の私のこと好きになっちゃうんだなって。お嬢様ってのに加えて、戦えるっていうのが良かったんでしょうね。
でもさ、こいつ勇者として田舎から呼ばれてるなりにまあまあ強いからさ、二人で旅してたら絶対に何かあるって思うじゃないですか。
それも、初日にそんなこと言ってきやがったんですよ。
ああ、これはヤバいなって思いましたよ。
だから、嫌われたほうがいいのかなって思って最初は無視してたんです。
でも、まあ、好きだって言うならそれなりに向こうから話しかけてくるじゃないですか。そんで、最初は気にしないフリしてたんですけど、よくよく話聞いてりゃ、「空が綺麗だよね」とか「花が綺麗だね」とか、くだらないくだらない。
昨日のうんこの色とか話してたほうがまだマシだって思いましたよね。
だから、私言ってやったんですよ。
「あんたみたいな感性が平凡なカスとは、申し訳ないけどお話できない」って。
そしたら、なんて言ったと思いますか?
え、知ってる?
なんで?
まあ、じゃあいいです。そうですよ、「キミのことを好きになるのは俺くらいだよ」って言ってきたんです。ほんと、失礼しちゃいますよね。
私は、皆からモテるっつうの。
でも、
なんか、私その瞬間から、彼のことが気になっちゃって。
でも、やっぱ嫌じゃないですか。そりゃ、顔は大していいと思えないですけど、勇者なんて普通にモテる部類の人間じゃないですか。強いんだから、そりゃモテるだろって話ですよ。
それに、気に入ったのかその後も何回も言ってくるし。
私は、皆さんと違って強靭かつ繊細かつ荒唐無稽な感性の持ち主なんです。
だから、勇者を好きになるなんてありえないって思って。
でも、そこから冒険を続けて、それで、
まあ、ほんとはこんなこと言いたくないし、自分でも嘘だって思いたいですよ。
でも、やっぱりずっと二人でいるのがよくなかったんですよ。それが、今の私を生んでしまったわけですよ。
もう、勇者のことしか考えられないっていうか、二人で魔王を倒して、彼が結婚しようって言ってくれたから、結婚したいなって、子ども生んで彼と暮らしたいなって思っちゃったんです。
で、その他にも彼が、何回も私に言ってきていたんですよ。
その、私にもっと世界のことを好きになってほしいって。
そりゃ、最初はいくら好きな人とはいえ、所詮は常人レベルのまん丸の無個性の感性しか持っていないボンクラだと思ってたんですけど、その、もっと好きになってほしいとか思うわけですよ。
彼に振り向いてもらいたいとか、
その、皆さんだって思うことがあるわけでしょ?私の、この貴重かつ希少かつ奇形の乙女のガラスの心だってそう思っちゃうことはあるんですよ。
ね?
でも、それ以外は他の皆さんと一緒にしないでもらいたいですね。
まあ、そんなとこですよ。
勇者もね、
彼には、色々と心残りがあって、それで、私は今旅してるんです。
いいですよ、あんだけ「普通なんてくだらない」とか言っておいて普通に恋しちゃってって思ってるんでしょ?いいですよ。
笑えばいいですよ、ね?
馬鹿にしてればいいですよ。
でも、私だってそれなりに理由があって、今もこうやって言ってるんですから
勇者のことが、
・・・
彼のことが、未だに忘れられなくてね。




