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誰か、私がこの世界を好きになれる方法をご存知ありませんか?  作者: ふたーなる


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第3話 祭りは終わらない

 昨日は色々と食べたせいか、朝はものすごくお腹が痛かった。

 しかし、外では人々は祭りに熱狂している。

 昨日は踊りだけでなく、色々なパフォーマンスが披露されていた。まあ、私は興味がなかったので何も見ずに、一人で食事を楽しんだ。


 虫も、なんという名前の虫なのかわからなかったけれども、甘辛い味付けで意外と美味しかった。


 まあ、お腹は落ち着いてきたのでそろそろ街に出ようと思ったのだ。しかし、宿の扉を開けて、すぐに閉じた。


 通りに人が多すぎたのだ。

 とてもじゃないが、外に出れそうもなかったし健全に祭りを楽しめそうでもなかった。


 仕方ない。


 だいたい、宿に泊まる連中はこういう祭りの真ん中で楽しみたいという貧弱な感性しか持っていない連中なのだ。

 特別なことなんてしなくても、もっと自分の感性を研ぎ澄ませれば日常の中にももっと楽しむべきものが見つかるはずなのに、それを怠っている。

 人間として、最下層なんだ。


 でも、どうせ、人間なんて皆そんなもんだ。


 と思いつつも、予想だにしない人混みに冷静になって宿のロビーで待機している他の旅人がいるんじゃないかと思い、私はロビーに行った。 


 まあ、残念ながらそこには誰もいなかった。


 仕方ない。そう思って部屋に戻ろうとしたのだが、そこで後ろから「祭りを見に行かないんですか?」という声が聞こえてきた。

 後ろを振り返ると、受付にいた、おそらくこの宿のオーナーと思われる中肉中背のおじさんが私に話しかけていたらしい。


 私は、一応スマイルを顔に貼り付けて「その、人が多いのが苦手でして」と言った。


「旅人さんでしょ?それに、まだ若そうですけど」


「いやあ、若いったってもうそろそろ30ですよ」


「あっ、そうなの?全然、29くらいにしか見えないよ」


「そろそろ30なんで、今29なんですけど」


「ハハハっ、冗談だって。若いねぇ」


 つまらない冗談をペロペロ使いまわしてるんだろう、どうせ。こういうおっさんはよお。

 私は口角をにっと上げてから「おじさんこそ、こんなところにいていいんですか?残り少ない人生ですよ。もっと有意義に過ごしたらどうですか?髪の毛がある内にいろいろやっておかないと後悔しますよ」と彼に尋ねた。


「俺は、ここを見守ってないといけないから。泥棒が来ても困るし」


「いつも、こんなに人が多いんですか?」


「そうだよ。勇者が魔王を倒してくれたんだ。この街だって、昔は酷いもんだった。毎日毎日魔王軍と戦ってさ。勇者が魔王を倒したっていって、ようやく敵もいなくなって、やっと平和が戻ってきたんだもん。そりゃ、みんな嬉しくなるよ」


 勇者が取り戻した平和のせいだ、全部。

 ていうか、皆私のことなんて知らずにさ、騒いじゃって、勇者になんか感謝しちゃって、

 そりゃ、勇者じゃないと魔王は倒せないけど、勇者がいない間に王都を守ったのは私ですよ!


「昨日は、祭りは楽しめたかい?」


「昨日は、色々と屋台で食べたりしました」


「そうか。それなら良かったよ」


「あ、あのお、やっぱこの街の皆さんも勇者のことが大好きで、」


 私がそう聞くと、おじさんは間髪入れずに「そりゃもちろん。さっきも言った通りだ」と言ってきた。


「その、勇者の仲間に他にも誰かいる、みたいな話は聞きませんでしたか?」


「え?勇者は一人で魔王城に忍び込んで、魔王と幹部を全滅させてきたんだろ?そういう話じゃないか」


 はあ、

 そりゃそうだけど、私は?

 なんで、せっかく歴史に名を残すチャンスだと思ってたのに。


「その、勇者の仲間に女の子がいて、みたいな」


「なにそれ?まあ、ここは勇者のいた王都からはだいぶ遠いからな。魔王城は近くても、勇者の王都での活躍っていうのはあまり耳に届かない場所だからな」


 ほんと、

 センスないわーー。

 ハア、


「いや、すいません、変なこと聞いちゃって」


「あれかい?勇者を探してるとか?」


「いや、そうじゃなくて」


「あ、そう。まあ、祭りも明日はもう少し落ち着くだろうし、ゆっくりしていきな。風呂は外に出ないとないから、タイミングを見計らって行きなね」


 そういって、おっさんは受付の奥の方に引っ込んでいってしまった。

 仕方ない。

 というわけで、私は部屋に戻った。

 一人になると、先程まではあまり気にならなかった外の音がガンガンと耳に響いてくる。


「ああ、ほんと馬鹿みたい」


 これなら、まだ魔王の脅威にさらされて大人しく生活していた方がマシだったわ。

 私は枕を折り曲げて耳に押し付けた。

 何もやることがないのでなんとなくベッドの上でゴロゴロしたり、うるさい音が聞こえるたびに「ころすぞ!!」と叫んでいたのだが、意外にも疲れていたみたいで、そのまま寝てしまった。


 そして、起きたのは日付が変わる頃だった。

 やってしまった。

 風呂にも入ってないし、


 なんとなく腕を上げてクンクンと自分の匂いを確認した。

 そもそも、この街は蒸し暑いのだ。

 正直、かなり臭っている。

 外も、だいぶ静かになっていて、部屋の窓を開けるとだいぶ心地の良い風が吹き込んできた。


 それに、外からはあまり人の気配がしない。

 そりゃ、昼間あんなに騒いでいたなら疲れるものか。

 これは、いいチャンスかもしれない。

 とりあえず、服を脱いで、半袖短パンに着替えた。


 まあ、これでいいだろう。外に出れば、きっと虫がいるだろうけどそれはもう仕方ない。

 というわけで、私は外に出た。

 受付には、おじさんがつばを垂らしながら寝ていた。宿主っていうか、宿の主っていうのも大変なんだな。


 まあ、魔王軍と戦うのと比べるとゴミクソみたいだけど、それでも世間的には大変という部類なのだろう。

 それなのに、

 なんで、私の話はここまで何も広まらないのだ。


 国でも、ちょっっっと金をもらったくらいだ。

 勇者だけずるい、

 そう思ってしまう。


 そんなことを考えながら、私は外に出た。

 夜の街は、とても涼しかった。ただ、看過できないほど通りは汚かった。その、嘔吐物があったり排泄物があったり食べかすがあったりした。


 しかし、中央広場につながる通り以外の細い道ではそんなことはなく、ただただ夜のひんやりとした涼しい空気が流れているだけだった。

 とりあえず、私はそこで深呼吸をしてみた。

 昼間のような蒸し暑さはない。これは素晴らしいな。


 通りを歩いた。どの家も、風通しを良くするために窓が開いていたり、と不用心だなと思った。

 昼間はあんなに騒がしかったのに、


 それもこれも、勇者のおかげなんだな。

 勇者が命を賭けて守ったものなのだ。

 そんな家々を眺めながら、私は街をぐるっと回った。


 それにしても、家が多い。

 はあ、こんなにも人間は増えやがって。

 まあ、騒がしい人間よりも私は鬱陶しい自然の方が嫌いだからな。


 人間に生まれてまだマシだったな、と思っている。

 でも、雲とか星とか、そういうのは孤独で気が楽だろうな。


 不意にそんなことを思いついたので、私は空を見上げてみた。

 おそらく、私以外の人間は夜空に輝く星を見て「綺麗だ」とかいうのだろう。

 しかし、私としては他人が「綺麗だ」と言ったものに対して「私もそう思うわ」なんていう感性が貧弱な人間が嫌いだった。


 空なんて、所詮は自然のまがい物だ。

 人間が長い間築いてきたものとは比べ物にならない。

 大きさでごまかしているだけで、見かけだけのこんなものとは人間はレベルが違うのだ。


 まあ、あんまり好きじゃないけどね。


 ・・・・・


 さっきは、星になりたいとか言ったけど、やっぱり撤回しよう。

 なんかな、人間以外に生まれていたら、それこそ人間のことを羨ましいって思えたのかもな。


 魔王だって、どういう気持で人類を滅ぼそうとしていたか私にはわからない。

 私が勇者だったら、魔王になんで人類を滅ぼそうとしたのかだけは絶対に聞いてくるのにな。

 空を見ながら私は考え事をした。

 なぜそんなことをしたかといえば、空にはじっくり見るほどの価値がないからだ。


「まあ、帰るか」


 この街にずっといても仕方ないな、と思った。

 別に、悪い街じゃない

 じゃないわけがない。悪い街だ。ナンパされるし、暑いし騒がしいし。

 でも、美味しいものを食べれたし、

 なにより、人々が平和を満喫しているか確認できれば、それでいいんだ。


 平和が一番って、勇者がよく言っていたではないか。

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