第18話 私の話を聞きなさい
私はアダムを連れて王子の家まで行った。王子の家は立派なものだった。2階建てだが、リビングは信じられないくらい広いし大理石がふんだんに使われている。
正直、あの演劇が面白いとは思わなかったのだが、色々あるのだろう。そもそも、舞台にいるんだからそれなりにわかりやすいセリフを言わないといけないのかもしれない。
定番のセリフを言っておけば、観客が「ああ、あれね」と聞こえなくても想像で補完できるのかもしれないしな。
そして、客間にはシャンデリアが置かれていて、黒い革のソファが四つも四角く置かれていた。
「まあ、座ってくれ。そっちの子もどうぞ」
アダムはだいぶ緊張しているみたいで、私の後ろに隠れるようについてきていた。
「ま、お茶でも出そう。座っていてくれ」
そういって、王子は客間から出ていった。
「え、これ、やばいやばい!!すごいやつでしょ?持ち出してもいいかな?」
この動物の死体から革を剥ぎ取って、その剥ぎ取ったものを森林の伐採によって手に入った木の骨組みに植物の種子で本来は植物の子孫繁栄のために使うはずだった綿花、彼らの何万倍とも言える命の源を詰めてその上から先程の革を被せたという、この人類の椅子史上最高傑作ともいえるソファという、自然の退廃物及び自然に人類に対する賠償製品を持ち出したい、ということか?
「そんな、人のなんですから」
「だって、でも、こいつらが私たちをやすい金で働かせているんだわ。まだ、魔王軍に攻撃されていたときの方がマシだった」
因果関係的には、この土地が魔王軍の攻撃で価値がなくなって、そのせいで個人資産家が参入してきたのが悪かったのだ。
元を辿れば魔王軍が悪い。
だがまあ、私たちの魔王討伐が遅れていた、ということなのだ。
でも、魔王がこちらとの均衡を破ってきたのはつい最近の話だったからな。
彼女には申し訳ないが、平和にはいつだって犠牲がつきものなのだ。
もちろん、私だってそんなつまらないことを言うのは不本意だが、勇者は、きっとこの世界が好きだったのだ。
もちろん、誰も犠牲になんてなってほしくないだろうけど、だからといって犠牲がたった一人で済むなんてことはないのだ。
すると、扉の外から「開けてくれないか」という声が聞こえたので、私は扉をゆっくりと開けた。
「ああ、すまん。これ、飲んでくれ。そっちの子も」
そっちの子と言っても、おそらく王子も含めて私たちはほぼ同世代だと思うのだがな。
「じゃあ、イレイン。話を聞かせてくれないか?」
私はニンマリと笑ってからお茶を少しすすった。
そして、「いいでしょう」と言って今度は心の中で笑った。
勇者に「笑わない方が可愛い」と言われたからな。
つくづく、失礼な奴だが、まあいい。
「その、私と勇者はずっと旅してたじゃないですか。勇者って、ほんと失礼な奴なんです〜、私のこと好きって言ってるのに、失礼なことしかしてこないし、私だってもっと可愛いって思われたいなって思ってたんです。
だから、彼の言う事は結構素直に聞くようにしていたんですよ。そのね、私って王子は知ってると思いますけど潔癖だったし。あ、そういえば、こないだ久しぶりに見つけたんですけど、このフクロウのお守り、彼が私のために作ってくれてたんですよ。
その、旅の中で街に寄ったりすることって結構あるじゃないですか。それで、私も彼に色々迷惑かけてるかなって思って街の市場にいって、慣れないですけどお守りみたいなのを買ってきたんです。その、勝ち守りみたいな、私も良くわかんなかったんですけど、でも、彼のためにはなるよなって思って、買ってきたら、彼もたまたま私のために作ってくれてたんですよ。
私、それでキュンキュンしちゃって。で、他にも、その、私彼と寝るのが怖かったというか、彼だって勇者じゃないですか。その、当時の私は自分の力をよくわかっていなくて、勇者とも余裕で戦えるだろうって思ってたんです。だから、魔王と戦って、それで生きて帰れる保証もないし、勇者のことが好きだったけど、でも、怖かったんです。
でも、彼はいつもいつも、しつこいって何回言っても私に「好きだよ」っていってくるんです。あああ、もう、きゃああって感じ。そうですよね、そうですよね。でねえ、途中で私が魔物と戦ってるときも、私全然一人で大丈夫なのに、いつも「手伝うかい?」って聞いてくれて、それで、でも、私だって彼にかっこいい姿を見せたいなって思うじゃないですか?
わかりますか?ね、ねえ?で、かっこいいって思われたくて、汚いのとか、本当は魔物とかめちゃくちゃ無理だったんですけど、頑張ったんですよ。いつも、私すぐ吐いちゃう体質っていうか、虫とかが嫌ですぐ吐いちゃうんですけど、そのときも優しく背中を撫でてくれて、それで、それで、宿で、ときどき部屋がなくて私と一緒に寝たりするんです。
私は、その、そういうことがあるんあじゃないかってすごい心配で全然ねむれないのに、彼はいっつもぐっすり寝てて、それで、まあ、さっきはああ言いましたけど、でも、彼に手を出されてもいいっていうか、もっと私だって普通の女の子なんだからそれなりの欲求というか、そういうのはあるじゃないですか。私ね、いくら変わり者と言われようが体は普通の女の子ですよ。心と体は別ですからね。
だから、私にとって彼ってすごく特別だったんだなって思いますね。そんで、魔王と戦うのも、段々心配になってきちゃって、大丈夫かな〜、心配だな〜、怖いな、怖いな〜って。でもう、そこから夜も全然眠れなくて大変だったんです。野宿は嫌だったんで、だいたい宿とかに泊まるんですけど、でもまあ、それでもドキドキしちゃったり、するじゃないですか、」
「あ、あの、ちょっといいかい?」
王子が、せっかく私が喋っていたのに、割り込んできた。
「・・・・・なんですか?」
「30文字以内で、簡潔に喋ってくれ」
「・・・勇者にもっと可愛く見てもらいたくて、旅の間頑張っていたんです」




