↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰か、私がこの世界を好きになれる方法をご存知ありませんか?  作者: ふたーなる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/21

第13話 人類の勝利

 最悪だ。


 別に、今日もあの街にいればよかったのかもしれない。

 夜、鳥やら動物やらの声がキモキモしく森の木々に反射している。

 ただでさえ、動物の声を聞くと背中がゾワゾワとして気持ち悪いというのに、夜は酷いもんだ。


 街を出るときに、ブレンダからかなりの食料をもらった。独身の女性一人じゃ食べ切れないから、気にしなくていい、と言われたが私だって独身の女性だ。

 だがまあ、かなり助かった。お金を使わなくていいのは非常にいいことだからな。


 しかし、夜は暗い。


 そもそも、私は結構な年になるまで城の外に出たことがなかった。

 確か、10歳くらいのときに、部屋にゴキブリが発生したのだ。


 ・・・・


 うっ、

 ・・・・ふぅ、

 気を取り直して続けよう。思い出したくもない。


 けど、思い出す。


 それで、部屋の隅っこの方にいたゴキブリを、10歳だったけれども好奇心で触ったら、気持ち悪くて、ツルッとしてて私が触ると、私の手をヌメッとなぞるようにしてすり抜けていったのだ。


 それで、私は気絶した。

 それから、自然がというものが嫌になったし、絶対に城から出ないって誓った。

 でも、私は騎士として訓練を積んできたし、魔王を倒すのは私だって当時は信じ切っていた。父が、国の軍の将軍をやっていたからな。


 それは、勇者と旅をしている途中も、ずっとそうだった。

 だから、自然は嫌だったけど勇者についていった。いずれは、こいつを追い越すって思っていた。


 まあ、なんで私が潔癖かっていうと、上記の通りのものすごく重い話があったのだ。

 あのとき、ゴキブリにさえ触っていなければ、こんなことにはならなかったのに。



 てなわけで、今夜もいつ現れるかわからないゴキブリに怯えながら林道を歩いている。


 この道を進むと、世界的にもかなり技術の進んでいるとある街にたどり着くらしい。

 そここそ、人類の至高の楽園じゃないか。


 猫は連れて行きたくないけど、楽園だ。


 応用魔術とかいうのは、あんまり私にはわからない。魔法も、昔から苦手だったし、勇者は魔法なんてまったく使えなかったのに魔王を倒したのだ。

 でも、応用魔術っていうのは人類の力の最たるものだ。


 ガサゴソ、


「うわあああああ!!あ、びっくりした!!ああ、もう!!驚かせるなって!!ああ、怖い怖い」


 とりあえず、私は意味もなく何度も言葉を紡いで恐怖を紛らわす。

 ほんと、虫は小さいのに動くから汚らわしい。

 私は、旅人としてはとてもいい判断とは言えないが、スピードを上げた。


 ざっざと私が落ち葉を踏みしめる音に呼応するかのように、自然の声も私の背中を薄ら寒く撫でてくる。

 その旅に、私は全身を震わせて「助けて」と泣き出しそうになる。


 でも、まじで自然って調子に乗ってるけど、私が建物の中にいるときはこいつらなんにもしてこないんだ。

 所詮は、人間の力の前では無力なのだ。

 ほんと、とっととわからせてやりたいわ。


 そして、私は全力で走った。


 もうそろそろ30歳になるけど、これでも私は魔王を倒した影の功労者なのだ。

 魔王からの力の供給を失ったそこら辺の雑魚とはとてもじゃないが比べ物にならない。

 というわけで、私は昼夜を忘れて走り続けて、ようやく次の街にたどり着いた。


 たどり着いたというか、その明かりが見えるくらいのところにまで来た。

 それにしても、さすがは一番技術の進んでいる街なだけあるな。明かりの数が段違いだ。そして、モクモクと煙が街中に漂っている。私には、仕組みとか色々わからないのだが、簡単に言えば努力の結晶、ということなのだろう。


 ここは、私のもとめる、完全に自然に打ち勝った街なのだ。

 というわけで、私は街に降りた。

 街では、残念ながら祭りが行われていた。


 街に、ところどころ「祭りやってるよ!!」というよくわからないポスターが張ってあった。が、人の声は聞こえないな。


「ハア、所詮は人間の考えることだわ。いくら技術が発展していても人間の感性が発展していないようじゃ、先は長くないわね」


 しかし、ここにはいい人工の空気が漂っている。


「んすぅーー、・・・・ゴホッ、オオ、ゴホッ、ゴホゴホゴホ、」


 素晴らしいわ。

 自然で汚れた肺が綺麗になる、素晴らしい。

 しかし、よくよく見てみると住民たちは皆口に布を巻いている。なにか理由があるのだろうか?


 街は建物がひしめいている。そして、その数少ない隙間を埋めるように煙が流れ込んでくる。

 いつものように、私は通りすがりの人に話を聞いてみることにした。

 最初に目をつけたのは、ボロボロの作業着を着たおじさんだった。


「あの、すいません」


「どうしましたか?」


「宿の場所を教えてもらいたいと思いまして、」


「ああ、宿ならこの、ちょっと数が多いんですけど、数えればわかるのでちゃんと聞いておいてくださいね」


 そんな注意文句を言われるのは初めてだ。


「今いるのが、14,12通りなんです」


「じゅうよん、じゅうに、」


「で、宿は37,21通りに乱立しているんです」


「さんじゅうなな、にじゅういち、」


「だから、ここから北に23個通りを進んで、そこから右に9個進めば行けるってことです」


「ああ、なるほど、」


 まあ、ちゃんと数えていれば間違えるようなことではないな。よくある、正方形がいくつも並んでブロックを作っている感じの道路なんだろう。

 王都も、そんな感じだった。

 それにしても、この街の道は狭い。狭い中を、譲り合うようにして人々が歩いている。


「ありがとうございます」


「あの、なんか布とか持ってますか?」


「・・・布、ですか?一応持ってますけど、」


「じゃあ、それを口に巻いておいた方がいいですよ。ここの空気をずっと吸っていると体によくないですから」


 本当なら、この人類の生み出した空気をもっと吸い込みたいところだが、勇者から「キミは、あんまり変なことをするな」と釘を刺されているからな。


「あ、ありがとうございます」


 そういって、私は親切な男性と別れた。

 そして、狭い通りだけれども私は端の方によって、布の切れ端を少しハサミで形を整えて口に巻けるようにした。


「仕方ない、」


 私は布を巻いて、宿に向かって通りを進んだ。

 しかし、少し進んだところで私は結局それを投げ捨てた。

 一つ一つのブロックは思ったよりも区画が大きくて歩くのが大変だった。

 私は、もう何日も寝ていないのだ。

 急ごう。

 とりあえず、ブロックの数を間違えないようにしっかりと数えながら私は進む。


 ブロックごとに建物の種類に違いがあるらしく、工場が固まっている場所もあれば、おそらく工場で働く従業員の住む集合住宅のようなものが一区画にびっしりと詰まっている場所もあった。


 場所にはよるのだが、ボオボオと煙の音がうるさい。

 それでも、私はしっかりと通りの数を数えながら歩いた。

 この辺の街は、当時はかなり魔王軍との激戦を繰り広げていた街だと思うのだが、この発展の具合は実に凄まじいものだ。


 そして、ようやく私は宿にたどり着いた。

 宿の立ち並ぶ通りは、他の狭い路地とは違って横幅が広く、私が10人横に寝転がっても問題ない程度の広さがあった。


 私は、その内の一つに入った。正直、どの宿も同じような見た目をしているので見分けることは不可能だろう。

 ただ、わかりやすいようになのか、宿の前には看板が置かれていてその名前でこっちは区別することができるのだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。