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誰か、私がこの世界を好きになれる方法をご存知ありませんか?  作者: ふたーなる


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11/21

第11話 やっぱり祭りやるってよ

 そして、少しするとシャウエンが起きた。

 苦しそうに腹を抑えながら起き上がってキョロキョロと辺りを見回している様子は、少し可笑しかった。

 すると、私と目が合う。


 目は合ったが、おそらくまだ状況を理解していないのだろう

 目が合ったまま、私もシャウエンも動けずにいた。


「あら、起きたの」


 リオットが起きたばかりのシャウエンに声をかけた。

 すると、ようやく色々と理解したようで「なんで、こんなやつらを家にあげているんだ」と言ってシャウエンが怒り出した。


「あの、すいませんね。覚えてますか?もし、次も暴れるようなら私がもう一回ぶん殴りますよ」 


 シャウエンは「やれるもんならやってみろ」と言って立ち上がろうとしたが、まだ私に殴られた腹が痛むみたいでそのまま立てずに座り込んだ。


「シャウエンさん、あなたのことは色々と聞かせてもらいましたよ。色々あって大変だったんですね。お気持ちお察しします」


「お前みたいな若いのに、俺の気持ちがわかるわけがないだろ!」


「大丈夫です。私がわからなくても、あなたにはあなたの気持ちをわかってくれる人がいますよ。それに、私にはあなたの気持ちが手に取るようにわかりますが、あなたが本当に言いたいことっていうのは「お前に俺の気持ちがわかるわけがない」じゃなくて「お前には俺の気持ちをわかってほしくない」ですよね」


 私がそういうと、シャウエンは苦しそうにこちらを睨んできた。 それにしても、もう少し手加減したつもりだったんだけどな。そもそも、気絶しない程度に殴ったつもりだったし。


 こいつ、めちゃくちゃ弱いんじゃないか?でも、この街では一番だったんだろうな。

 それじゃなきゃ、首長なんて任されるはずがない。


「ほら、リオットさん」


 彼女は、少し照れくさそうにしていたが、椅子から立ち上がると床に座り込んでいるシャウエンの横に移動して、そして彼の手を握った。

 そういえば、と思って横を見ると、フレンダが今回は静かに大人しく話を聞いていた。


「あの、初めて出会ったときのことって覚えてる?」


「・・・なんだよ、急に」


「まだ小さかったときに、私のことをあなたが助けてくれたじゃん。魔物を追い払ってくれたじゃん」 


 シャウエンはだいぶ混乱しているようだ。


「もう、何回もこの話したと思うけどさ、・・・その、最近あんまり言えてなかったけど、私はまだあなたのことが好きなの!!」


「な、何を言っているんだ」


「いや、その、・・・」


 何を今更照れているんだよ。もう30なんだろ?

 恥なんて捨てて、「いつも愛してるにゃん」って言えばいいだろうが、

 と思ったのだが、私は口に出すのを抑える。

 それもこれも、勇者に言われたことだからな。

 もっとおしとやかにしてろって。

 今更、遅いけれどもね。


「・・・その、最近冷たくてごめんなさい。だから、皆にはもう迷惑をかけないでほしいの。それに、皆だって直接言わないだけであなたに感謝してるのよ」


「そ、そんな今更言われてもさ」


 シャウエンは、明らかに照れているのを隠していた。

 まあ、実際は白髪とヒゲで表情があまり読み取れない。

 それにしても、これで40はやっぱり無理があるんじゃないか、としか思えない。


「ごめんなさい。その、・・・私にとっては、あなたが勇者だわ」


「・・・うッ、・・・ぉ、オエッ、」


 私は急いで離席した。

 ああ、信じられない。なにそれ?

 でも、私も勇者に「キミは俺のお姫様だよ」って言われたら素直に喜んじゃいそうだな、と思うと余計嫌になった。


 見てるかな?

 これが、勇者が守った平和ですよ。

 私は、あんまり好きじゃないけど、これで良かったのかな?

 幸いにも、今回はミニマムなゲロだったので、こっそりと土を被せて、勝手に外にあった井戸を借りて口を洗ってどうにかやり過ごした。


 そして、私は部屋に戻った。

 戻ったときには、シャウエンがいなくなっていた。


「あれ、どこに行ってたんですか?」


 フレンダが私に聞いてきた。


「いや、ちょっとお腹痛くなっちゃって、」


「あれ、トイレの場所わかりました?」


 リオットが聞いてきたが、私は適当に「ああ、大丈夫ですよ」と答えた。そして、私が外でしたと思われても困るので、質問が来る前に「うまくいきましたか?」とリオットに聞いた。


「嬉しそうにしてたので、大丈夫だと思います。部屋に帰っちゃいましたけど。ほんと、旅人さんのおかげですね」


「まあ、これも何かの縁、ですからね」


 自分で言っていて気持ち悪くなりかけたが、お腹の中に吐き出すものが何も残っていなかったので吐かずに済んだ。


「旅人さんは、どこからここまで来たんですか?」


「その、王都から来ました」


 「「えっ!!」」と二人の声が重なった。


「そんな遠くから来てたんですか?」


「まあ、仕事とか色々疲れちゃったので旅でもしようかなって」


 私がそういうと、「旅か、まあ夫はこの街にいないといけませんからね。それに、来年こそはこの街でお祭りも開かせようと思うので」とリオットさんが言った。


「私も、元の街に疲れちゃって、それでここに引っ越してきましたから、気持ちはわかりますよ」


 まあ、疲れたというよりは、これは私と勇者との約束みたいなものでもあるのだ。


「それでも、皆さん平和を満喫しているみたいで良かったですよ」


「・・・そうですか?というか、・・・まあ、・・・そうですか?」


 自分でも言葉足らずだったな、と思ったのでまあ伝わっていなくても仕方ない。


「あの〜、お祭りって勇者がぁ、魔王を救ったことを祝うぅ祭りをやるつもりですか?」


「・・・でも、他にないですしね。その、夫がそこまで皆に認めてもらいたいならまあ、可能性の一つとして考えますけど、いつか自分でも後悔しそうですし」


 それなら、


「あ、あの、その、・・・魔王を倒したのって勇者の功績だけじゃないと思いませんか?」


「・・・でも、魔王の城に勇者が一人で乗り込んで幹部も魔王も全滅させたんですよね?」


 まあ、そうだけど、


「で、でも、勇者がでかけてる間、守る人も必要じゃないですか」


 そういうと、ブレンダが「・・・つまり、シャウエンさんも勇者と同じくらい素晴らしい英雄として崇め讃えてもいいんじゃないかってことですか?」と言ってきた。


 ああ、もう!!

 なんでそうなるのよ。そもそも、今回は私が親切に助けてあげたけど、このジジイほんとめんどくさいわ!!大して強くもないくせに、自分の手柄を誇示してさあ、そんなんでもこの街のトップなんでしょ?それで満足すりゃいいじゃん。


 勇者に先を越されたからって、まだ拗ねてるわけ?


「イレインさんもそう言ってますし、リオットさんも、そういうお祭りにしてもいいんじゃないですか?私は全然シャウエンさんの武勇伝みたいなのは知りませんでしたけど、認められたいって思うのは当然のことですよ」


「・・・そうですか。いや、そうですね。夫のためにすいません。私も、もっとしっかりと好きだって伝えていればストレスで髪の毛が真っ白になったりすることもありませんでしたよね。昔は、結構な美青年だったんですよ。性格は変わりませんけど」


 えっと、そこからもいい風な話が長々と続いて、私の悲願であった私のことを褒め称える祭りの話はできそうな雰囲気にはならずに、終わった。

 一通り話すとブレンダさんが「イレインさん、そろそろ帰りましょう」と言ってきた。

 で、とくに「いいですよ」と答えた覚えもないのに、そのまま帰ることになった。


「あの、明日には外に出てきてもいいって住民全員に伝えますから、今日のところはすいません。明日、この街も色々見ていってください」


「あ、ありがとうございます。でも、旅をするといっても結構忙しいんですよね。世界中を見て回りたいと思っているので」


 まあ、いい。

 私の祭りを開いてくれそうにないなら、こんな街に用はない。

 せっかく、気難しいジジイを矯正してやったんだから、もっと何かしてくれてもいいじゃないか!!


 せめて、もっと褒めてくれてもいいじゃないか!!

 しかし、そう思う度にあのジジイの姿が思い浮かぶ。

 はあ、クソが。


「え、旅人さん。もう帰っちゃうんですか?」


「帰るというか、次の場所へ行く感じですね」


「そうですか。・・・また、来年の今頃はこの街でもお祭りをやりますから、来てくださいね」


「そうですね。また機会があれば、来させてもらいます」


 まあ、だいぶ先の話にはなりそうだが、一度もここに戻らずに人生を終えるのもそれはそれで損だろう。

 というわけで、私は一度荷物を取りにブレンダの家に戻った。


「王都から来たんですね〜。いつ頃から旅を始めたんですか?」


「もう、5年前くらいですかね、」


「一人で旅ってすごいですよね。その、魔王がいなくなったとはいえ、森には魔物だっていっぱいいますし、一人は大変ですよ」


「まあ、元々他の人と一緒に旅をしていたんですよ」


「あ、そうだったんですね」


 私は荷物の整理をしながら話していたのだが、途中でどうも会話が続かなくなり途切れてしまった。

 そして、とりあえず何かしら話しかけようと思ったので私は顔を上げてブレンダの方を見ようとしたのだが、いつの間にか彼女はいなくなっていた。


 仕方ない、

 私は荷物の整理を始めた。

 カバンをガサゴソと漁っていると、何やら底の方にゴリッと硬いものが入っている。

 私は腕を突っ込み、それを取り出した。


「あ、懐かしい!」


 思わず声が出てしまったが、これは実に懐かしいものだ。

 勇者からもらった、お守りだった。

 木でできたフクロウを模した、勇者が冒険の片手間に私のために作ってくれたものだ。

 もちろん、勇者からもらったものなので大事にしている。


 今だって、あの日々を思い出す。

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