表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万象テイマーの異世界ログイン  作者: 翠碧ノ人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/25

第2話 最後のログアウト

「では、ユーマ」


 ディアスが顔を上げる。


 NPCとは思えないほど穏やかな金色の目だった。


「我らを育ててくださったこと、感謝いたします」


「やめてくれよ。そういうの」


 笑おうとしたのに、声が震えた。


「俺の方こそ、ありがとう。お前たちがいたから、十二年も続けられた」


 サービスが終われば、彼らは消える。


 データなのだと分かっている。高度な会話機能も、好感度に応じた反応も、すべて運営が用意したものだ。


 それでも、積み重ねた時間まで偽物になるわけではない。


 俺は一体ずつ名前を呼んだ。


 泣き虫だったスライム。餌を盗んでは逃げた小竜。命令を無視して俺を庇った狼。百回以上の進化実験に付き合ってくれた精霊。


 全員へ別れを告げているうちに、残り時間は三分を切っていた。


 機巧妖精ティアが俺の耳を引っ張った。


「ユーマ。笑顔、必要。記録します」


「今撮るのか?」


「今だから撮ります」


 ティアが空中へ小さな撮影水晶を浮かべる。


 ディアスが人型を解き、広場を覆う黒竜の姿へ戻った。ルカが俺の足元へ座る。小型の召喚獣たちは肩や頭へよじ登り、大型の仲間は後方で翼や腕を広げた。


 水晶が三度光る。


《記念画像を保存しました》


 その画像を現実へ持ち帰れることだけが、今夜の救いだった。


「うまく撮れたか?」


「はい。ユーマだけ、泣きそうな顔です」


「そこは撮り直してくれよ」


「残り時間が足りません」


 ティアは笑った。


 設定された表情だとしても、俺には本物と区別がつかなかった。


《サービス終了まで 00:02:51》


「最後は世界樹の下で迎えるか」


 召喚獣たちと並び、淡い光を見上げる。


 そのときだった。


 世界樹の幹に、見覚えのない扉が現れた。


「……イベント?」


 サービス終了用の演出だろうか。


 目の前にクエストウィンドウが開く。


《特殊クエストが発生しました》


《世界樹の最後》


《受注条件:異なる百種族以上との最大友好契約》


《受注条件:テイマーおよびサモナー系統の最終到達者》


《受注条件:強制契約使用回数ゼロ》


 攻略情報では一度も見たことがない条件だった。


 迷っている時間はない。


「みんな、付き合ってくれるか?」


 問いかけると、無数の咆哮と声が広場を揺らした。


 俺は扉へ触れた。


 景色が切り替わる。


 そこは星空のような空間だった。足元には水面が広がり、その中央に白い光でできた幼木が立っている。


 召喚獣たちの姿はない。


 幼木から、男女の区別がつかない声が響いた。


『世界の外より訪れし者よ』


『汝は、力なき命を切り捨てなかった』


『汝は、異なる命を縛ることなく、一つの群れとした』


 運営が用意した台詞にしては、妙に胸へ響く。


 水面に二つの選択肢が浮かんだ。


《終わる世界とともに眠りますか》


《次なる世界でも、命を導きますか》


「なんだ、それ」


 後者を選べば、二周目でも始まるのだろうか。


《サービス終了まで 00:00:31》


 考える時間はなかった。


 俺は後者へ手を伸ばす。


「次があるなら、もちろん行く」


《回答を受理しました》


《ELDER ARK SUCCESSOR――適合者を確認》


「英語?」


《方舟権限への接続を開始》


《警告。中枢応答なし》


《召喚記録を退避します》


《魂紋保存率――九十九・八七パーセント》


 見たことのないログが、猛烈な速度で流れ始めた。


 ゲームの演出にしては文字が不揃いで、警告音にもノイズが混じっている。


《サービス終了まで 00:00:10》


 水面の向こうに、召喚獣たちの姿が映った。


 ディアスがこちらへ手を伸ばしている。ルカが吠え、ティアが何かを叫んでいた。


「待て。俺だけなのか?」


 彼らのもとへ戻ろうとしたが、身体が動かない。


《00:00:05》


「ディアス! ルカ! ティア!」


《00:00:03》


『――また、お会いしましょう』


 ティアの声だけが、はっきりと聞こえた。


《00:00:01》


《対象の魂を緊急転送します》


 世界が白く染まった。


 ログアウトの表示は、最後まで現れなかった。

次回「レベル一からの再出発」。ログアウトしたはずの悠真が目を覚ました場所は、知っているようで知らない世界でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ