ピンチ襲来
「このパーティのリーダーは、茂野くんに、お願いしていいかな……」
……と、香穂 (カホ)。
「あぁ、わかった。あんたの言う通り、そうするよ。よろしくな」
女子に頼られたみたいに感じて、
俺は少しだけ照れていたので、下を向きながら、そう答えた。
「そこは、あんた…じゃなくて、名前で呼ぼうよ」
「あぁ、すまん。
じゃ、呼び方は、香穂 (カホ)に、愛水 (ヨシミ)で、ええかな?」
これまで、女子の事は、名字でしか呼んだことないけど、
「名前で」って、ゆうとったし、ちょっと強がって「名前呼び」してみた。
でも、正直、自分で言っておいて、照れている。
顔に出てないとええけど……。
「いきなり、名前呼びぃ?」
「名前でって、ゆうたやん。もしかして、あかんかった?」
「構わないけど……?」
「それじゃ~、あたしらも、茂野くんじゃなくて、真音って呼ぶわ」
――なんだか、2人との距離が近くなった気がした――
「さて、早速だけど、状況を整理して、共有しておきたいと思う」
「うん」
……と香穂 (カホ)。愛水 (ヨシミ)の方は、コクリと頷いた。
俺は、王都でパクッてきた「地図」を広げる。
この地図は、不思議な言語で書かれてる。
初めて見る文字や。だけど、幸いな事に、なんとなく読める。
「この地図は、さっきまでいたとこで、パクッてきた」
「へぇ~、やるじゃん」
「俺らは、今、この森に入ったとこやと思っとる。
道なりに進んで、出来る限り、日が沈む前に、
村か、野宿に耐えうる安全地帯に辿り着きたい。
今後について、何か、意見があったら、聞かせて!」
「看破の能力で、道を調べたけど、
この道に繋がってる宿までの、時間がわかるみたい。
ここでは、道なりに徒歩8時間から15時間の間に、
宿屋か、東屋のようなのがあるみたいで、
次の宿までは、徒歩6時間くらい」
「建物あるんなら、野宿は、考えんで良さそうか……
路銀が足りれば……だけど」
そう言って、パクッてきたお金の袋をジャラジャラして見せた。
「それも、パクッてきたのね」
「価値、わからんけどな……」
「ちょっと見せて……」
香穂 (カホ)が、看破の能力で、お金の束を見る。
「2部屋だと、3回泊まれるかどうかかな……」
「ちなみに、国境まで、どんくらい、かかりそうや?」
「途中の宿か町が、10個だから、11日ほどじゃないかな」
「結構、あるな……。
途中で、何か仕事せんといけんな……」
「進んで行く方向は、
こっち(王都と逆方向)で、当っとる?」
「うん」
そんな、やりとりを経て、俺たちは、道なりに、歩き始めた。
――しかし、スグにピンチに直面した――
少し前方の方に、大きくて、黒いものが動いた。
ん……!?、見間違えだと、ええんやけど……
目を凝らして、必死にそれを見定めようとした。
あれは……!?
クマだ……!! やばいやん!!
しかも、身長5mくらいはあるデカいヤツだ。
……と思っていたら……
――目があった――
ヤツは、巨体を、ゆらりと、こちらに向いた。
2人は、まだ、気づいていない。
さて、どうする……!?
俺たちは、今、誰一人として、武器らしい武器をもっていない。
持ってたとしても、直接戦うには、あまりにもデカすぎる相手だ。
落ち着け……。
とにかく、落ち着け……。
俺は、自分に言い聞かせながら、深呼吸をして冷静になろうと努めた。
そして、頭の記憶を、総動員した。
クマとの対処法を思い出そうと努力した。
日本と同じような対処で良いのか保証はないが、
それに準ずる行動をした方が、生き残れる確率を上げれる気がした。
――確か…… クマに出会った時は……
急な動きはクマを興奮させる可能性があるため、
突発的に走って逃げるのは厳禁。
静かに行動することが大切で、
クマから目を離さないようにしながら、静かに後退……。
……だっけか。
……と、考えを巡らせている間に、
愛水が、クマに気づき、ビックリして、悲鳴を上げた。
その上、元来た方向に走り出してしまった。
ちょ……!! 一番、やっちゃいいけない事を……!!
しかも、このクマは、
案の定、俺たちの知ってるクマとは違っているようだ。
こちらに向かって、歩みだすと、頭から、角が、ニョキっと出現した。
そして、角が、気持ちの悪い紫色で、淡く光り始めた。
う……わ……!!
どうする!?、見捨てて、囮にするか?
いや、ダメだろ。
一緒にやっていこうと決めた矢先、そういうんは、あかんと思う。
それに、俺も、クマと目が合ったし、俺もやばいんとちゃうか?
――もう、ピンチから、逃げられないと察した――
頭の中は、ちょっとしたパニック状態に陥った……。




