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《書籍化決定しました!!》バッドエンドから一年後~誰にも期待されない魔法使いの私が、伝説の精霊魔法使いに実力を認められ王子を救う~  作者: 天壱
魔法使いと第三王子

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招き、


「………こ、こは………?」


コポリ、と。口から気泡を溢しながらギルバートは目を見張る。自分が水中にいることにも気泡を目で追いきってから理解した。

自分の口を両手で覆い、慌てて呼吸を止めようとしたが、口の中に水が全く入ってこなかったことを冷静な思考が気が付いた。水中で浄化魔法を浴びるまで精霊堕ち状態だったギルバートは、その直前にセシルからエリアスごと水中魔法をかけられたことも記憶にない。


水中にも関わらず呼吸ができるのは魔法だと考えれば、こんな魔法を扱える可能性があるのはエイの精霊を宿す兄セシルだ。しかし、兄は水を出すことしかできず、水中を自在にまで操れると聞いた覚えもなかった。

ならばもう一人、可能性があるのはと思考に一人の魔法使いが過った。正体は師匠から破門された見習魔法使いで、それこそ自分達王族の誰よりも魔法が下手な少女だった。

しかし、擦れる記憶の中で彼女が何かを言っていたとまで記憶が一番近いものにまで遡った、その時。


「!エリアスッ……!」

ゴポリッと気泡が溢れたと同時に、やはり水が口の中には入ってこない。それどころか、開けた口のまま剥き出しの歯を食い縛っても水に侵されることはなかった。

呼吸もできる理解不能の空間で、眼光を向ける先にいる存在を捉えればギルバートは数時間前の記憶も鮮明に思い出した。

エリアスが、帰ってきた。自分はまさに彼に炎を向けようとしたところで意識が途切れたのだと、そこまで思い出せばここは湖の中かと見当付け、止めた。腰から剣を抜くような気軽さで、身体に再び不死鳥の炎を宿す。


エリアスは、今にも手が届きそうどころではなかった。既に、手がしっかりとエリアスにより掴まれている。

思わず振り払えば、すんなりと離されたがエリアスの余裕を見せるようなにやけ面は変わらないことに、苛立ちが身体が表面だけでなく内側にも熱を帯びさせた。

死ね、死ね、死ねと衝動的に思考が燃える。自分より水中下へと背中を向けたまま沈んでいくエリアスは、まさに格好の的だった。いくら呼吸ができようとも、水中では動きも当然制限される。

人よりは遙かに泳げる自信があるエリアスだが、始めから避けるのは不可能だと理解して泳ごうともしなかった。ただの競泳ならばギルバートにも負ける気はしない。しかし呼吸もお互いできる中、ギルバートには精霊がいる。

水中とはいえ、それで不死鳥の炎が完全に打ち消されるわけがないとエリアスも考えるまでもなくわかった。しかもここはただの水中ではない、セシルの精霊により生み出された魔力による沼だ。

いくら進化した精霊であろうとも、ギルバートの不死鳥にだけは叶う筈がない。同じ精霊でも階級が違い過ぎる。


ボワリッと、燃える炎の玉が水中で怪しく光った。水中を照らすように輝く炎と、燃えるギルバートの姿を仰ぎ見ながらやはり美しいと心底思う。

賢しいエリアスは、飛び込む前からわかっていた。セシルの魔法へ飛び込み浄化魔法を当てることはできても、そこでギルバートが攻撃をやめるわけがないと。

もともと精霊堕ちしていても自分を狙った理由が、直前のギルバートの意志だったからだ。そして、セシルとスロースの話を聞くだけでも勇敢に魔獣討伐に務め続けたギルバートが、たかが水の中というだけで戦意を喪失するわけも戦闘を放棄するわけがないとそれは、確信にも近かった。


自分もまた、王子時代の時は無数の戦場で生きて来たからこそ知っている。戦うことを覚えた者は、決して自分に置かれた状況だけでその手の矛を手放しはしない。

そしてこの水中で炎を放たれれば最後、自分は避けられない。泳ぐことはできようと、瞬発的な速度は出せない。

ただそれでも、ギルバートが無事正気に戻せたのならばそこに悔いはなかった。

水中の感覚と相まって、まるで別世界にいるようだと錯覚を覚えながらエリアスはギルバートを注視する。水中の影響で炎を表出させることに通常より時間はかかるものの、球体状に渦巻く炎の固まりはまるで太陽そのものだ。

こんな魔法に焼かれるなら悪くないと、魔法を放たれる前から熱に包まれ全身が茹でられるのを感じ



ぞわりっと、背筋に冷気を走らせた。



初めてギルバートから顔を背け、エリアスは振り返る。

自分より更に水深部、自分達が飛び込むより一手前に沼底で待機していたスロースがギルバートの太陽に照らされた。

目を絞り苦しそうな表情をしているのは、太陽が眩しいわけでも呼吸ができないわけでもない。不死鳥の炎により急激に熱された沼湯に、綴じ込み茹でられるのは彼女もまた同じだ。


エリアスのように人並み外れた丈夫さもなければ、魔法にも身を包む熱湯から肌を守る術などない。それがあればとっくにエリアスにも自分にも使っている。熱湯に肌を焼かれる感覚を覚えた時点で、そうなのだとエリアスは理解した。

いくら水中で呼吸ができようと、耐久できない温度で茹でられ逃げ場がない。ギルバートを止めようにも、自分が近付けば彼は更に炎を放ってしまう。ギルバートの攻撃規模ではどう避けても間違い無くその先にいるスロースも巻き添えを受ける。

自分がギルバートではなく彼女の方へ向かってもそれは同じであり、そして魔力のない自分にはどうすることもできない。

戦歴と勝利を欲しいままにしたエリアスにさえこの状況を確実に打開する方法は見つからない。


魔法を解除するようにギルバートにもセシルにも向けて叫んだが、泡になるばかりで声としてまともに響きはしなかった。ギルバートは、太陽を育てながら睨み続けるもののその視界に入っているのはエリアスだけだ。

きっと、スロースが傍にいることにも気付いていないのだろうとエリアスはその目の色を見て理解する。自分が追い詰められることは覚悟の上でも、スロースが巻き添えになることまでは想定していなかった。そしてスロースも



自分のことは覚悟の上で、ここにいた。


明日も更新致します。よろしくお願いします。

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