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ドール・ナイツ  作者: 天草
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2/6

その②

あれからアキトは黙ったまま外の景色を眺めていた。

 これからどうしたら良いのかを考えていたのだ。

・・・・・・・運動能力は今一な方だったが、メイビス軍事指揮官どのならこの状態をどう切り抜けるだろうか。

あの方なら、きっとこの世界に馴染む事を速球に考えるだろう。オレに出来るのか?・・・・・・

「あのぅ・・・・・

帰る所が無いのなら、暫くここにいたら良いと思う。」

 そう言い放つのはずっと側で一緒になって考えてくれていた少女、勇。

 ガチャっ!

 突然部屋に入って来る二十代後半位の眼鏡の男性。

「勇・・・・彼が目が覚めたなら目が覚めたと言えって言ったろ?」

 突然の男の侵入に驚き剣を握るアキト。

「駄目。この人わたしのお兄ちゃんなの。何も害は無いから。」

 言ってアキトの服の裾を掴む彼女。

 妹に害は無いと言われ何だか複雑な心境な兄。

「とにかく、家から出て行ってくれ。」

 すると勇は、立ち上がり兄の元に近付き彼の頭にチョップを入れた。

「あたっ!

何するんだ勇~!!!

兄ちゃんは、お前の事を心配してだな。」

 首を傾げる勇に顔を赤らめる兄。

「とにかく、だ!死んだ両親に言われているんだ。勇が二十歳を迎えるまでお前が勇を守れ!って。もしお前に何かがあったら父さんと母さんに申し訳無いだろ?」

 更に首を傾げ・・・・。

「この人だって大変なんだよ?行くあて無いんだもん。」

 勇はアキトの方を指差した。

「そんな訳分からん奴はほっとくんだ!

第一、この日本で剣なんて代物持ち歩いている事態、銃刀法違反なんだよ。」

 勇はほっぺを膨らまして・・・・・。

「じゃあ、ここの家に隠しとけば良いじゃん。外出る時は何も持たないで出る事にすれば良いと思う。」

 言って勇はアキトの後ろに隠れた。 

 それを見て頭を掻き毟る兄。

「兄ちゃんはお前の事を思ってるのに・・・・・何で分かってくれないんだ?」

「わたし・・・・・人に親切にしないお兄ちゃんなんて嫌いだよ。」

 彼女の言葉が効いたのか、ヨロヨロと床に崩れる兄。

 アキトは一部始終を見て、大元である自分が今の現状をどうやれば上手く治められるかと考えを巡らせていた。

 すると突然ムクっと兄は立ち上がりアキトの元に歩み寄り・・・・・。

「オレの名は、大宮弘樹(おおみや ひろき)会社員。事情はよく分からんが、愛する妹の頼みだ。お前を暫くここの家に置いてやる。

だが、妹を泣かす様な事だけはするなよ。」

 今にも食ってかかりそうな勢いで顔を近づけられ逃げたい気持ちになるアキトだが礼儀はわきまえているつもりだ。

「オレは国軍魔道士部隊隊長ナスカ・アキト。おそらく異界から来た者。」

・・・・・国軍?・・・・・

 弘樹はそう心で思い、考えるが意味が分からなかった。

「なぁ・・・・勇・・・・・この人何処かおかしいのか?」

 すると彼女はナスカの後ろからひょこっと顔を出すと首を横に振り・・・・。。

「違うよ。隊長は普通だよ。服と行動はかなり変だけど、わたしは普通に見えるもん。」

 彼女の言葉に二人は沈黙した。

・・・・・・変って言いきってる分、説得力が無いよな・・・・・・・

 ナスカはそう心で思った。

「まぁ、勇が普通と言うのなら兄ちゃんも普通の人だと思う様に努力するよ。」

・・・・・・何か腹立つ・・・・・・・

 ナスカはちょこっと眉間にシワを寄せた。

「まぁ良いけど・・・・・。

ここの部屋が丁度空いているから、ここを使えば良い。」

 弘樹はそう言うと後ろを向きドアの方へと歩き出し、顔だけアキトに向けて・・・・。

「良いか。絶対に妹を泣かすなよ!」

 そして部屋から出て行った。

 暫く二人は沈黙するがアキトは疲れた顔をして口を開いた。

「お前の事、相当心配してたな。」

 彼の言葉にコクコクと頷く勇。

・・・・・・しかし、さっきも思ったが・・・・・こいつ年齢の割に幼い気がするが気のせいか?・・・・・・・

 横で無邪気に笑う彼女を見て彼はそう思った。

「そうだ。外出よう。隊長は何も分からないんだよね?

だったら外を見て状況を学ぶ必要があると思うの。」

・・・・・・まぁ、それもそうか・・・・・

こういう時は多分指揮官どのもそう言うに違いないだろう。・・・・・・

 彼は納得して勇に笑みを浮かべた。

 それが初めて彼が彼女に向けた笑みであった。


 外へ出ると彼にとって初めて見る物ばかりだった。

「馬のいない車とは・・・・・

向こうでは馬車が主流だ。

だが、魔力車って言う物もある。動力源は魔力その物。

これは何が動力となっているんだ?」

 アキトは自動車に指を差して、横にいる勇に尋ねると彼女はしばし考え込み・・・・・・。

「水素やらガソリン?あ・・・電気もあるかな・・・・。あれ?ハイブリットカーって何だっけ?」

 逆に聞き返されてしまった彼は苦笑した。

・・・・・・向こうとは本当に全然違うな。・・・・・・・・

 そんな事を思い彼は苦笑した。

「勇ちゃん!!!今暇???」

 突然後ろから声がして来て五・六人の子供達がわらわらと勇の周りを取り囲んだ。

「ん?

今はこの隊長さんと一緒だから駄目。」

 勇の言葉に子供達の目線はアキトへと移った。

「誰?このおじさん?勇ちゃんのお友達?」

 おじさんと言う言葉にムっとした顔をするアキト。

・・・・・・・まさか二十一歳でおじさん呼ばわりされるとはな。・・・・・・・ 

「お友達?って言うか・・・・今日から家で預かる事になったの。」

・・・・・・・預かるって・・・・何かオレ、貰いっ子みたいな感じになってねーか?・・・・・・

 ちょっぴり複雑な気持ちのアキトだった。

「しかし・・・・・変わった服着てるよな。ベルトもかっこ良いし・・・・。これで剣ついてたら完璧だよな。」

 この国では剣を持って外を出歩いてはいけないらしく剣は勇の家に置いてあるのだ。

・・・・・・・・何が完璧なのか意味が分からん・・・・・・・

「どーせコスプレか何かだろ?」

「じゃ・・・・オタクかなんかか?」

「コスプレとオタクは違うだろ?姉ちゃん言ってたし・・・・。」

「あっ・・・・お前ん所の姉ちゃんコスプレやってたんだったな。」

 子供だけで今度は口々に話しが始まった。

「皆、わたし達そろそろ行くから。また今度遊ぼう。」

 勇は男の子の頭を撫でてニッコリ笑みを浮かべた。

 顔を赤くする男の子。

「うん。また今度だよ。」

「勇ちゃんがいないと僕等ちょっと退屈だからさ。学校終わったらまた遊ぼう。」

「また前みたいに冒険しよう。」

 子供達はそれぞれ勇に向けて口々に言葉を交わし、彼等は走って何処かへと行ってしまった。

「元気な奴等だな。」

 アキトはそう言って苦笑した。

「子供だからね。」

・・・・・まぁ、そうだが・・・・・

 彼女の言葉にアキトは納得した。

「あの・・・・・」

 突然前から歩いて来た女の子がアキトの顔を見て声をかけて来た。

 また子供!と嫌そうな顔をするアキトだが何だかさっきの腕白小僧達とは別な雰囲気が漂っている事を感じ女の子の背に合わせて彼は中腰になり・・・・。

「何だ?オレに何か用か?」

 すると女の子はアキトのほっぺを両手で掴んだ。

・・・・・・え~と・・・・・・・

 沈黙するアキトと勇。

「やっぱりそうだ。あなたはフェルシモだよ。」

「は?」

 言ってる意味がよく分からず間の抜けた言葉をもらすアキト。

「数日前ベランダに置いてたら突然いなくなっちゃった、わたしのお人形さんだよ。」

『!?』

 その言葉に驚きアキトと勇は顔を見合わせた。 

 アキトは彼女の肩に手を置いて・・・。

「何でオレだと思うんだ?」

 すると女の子はアキトの後ろで括った長い髪と服を指さして・・・。

「同じだから・・・・・・」

・・・・・成程・・・・・・

「仮にオレがその人形だったとしてお前はオレを最初何処で拾った?」

 すると彼女は・・・。

「拾ってないよ。長い間家にあったってお母さんが言ってたから・・・・・。」

・・・・・長い間?・・・・・・

「その母親に話しを聞きたい。家へ連れて行ってくれないか?」

 すると彼女は笑みを浮かべて・・・・・。

「良いよ。フェルシモの頼みだったら何でも聞くよ。

あっ・・・・わたし近藤真沙美。」

 するとアキトは身を起こし、真沙美の頭の上に手を置き・・・・。

「オレはフェルシモじゃない。ナスカ・アキトって言うんだ。悪い魔法使いに人形に変えられた普通の人間。」

 沈黙する真沙美だが笑みを浮かべて。

「凄い!魔法使いって本当にいるんだ!」

 キャッキャッとはしゃぎ出した。

「あぁいるさ。奴がどうなったのかは全然分からないが。少しでも情報が欲しいんだ。だから連れて行ってくれ。」

「うん!!」

彼がそう言うと、真沙美はナスカの腕と勇の腕を引っ張って走り出した。

 

 真沙美の案内で暫く歩いていると、夕日の光を受けキラキラ光る大きな湖が見えて来た。

「着いたぁ!

わたしの家、湖の横なんだ。良いでしょ?」

 自慢気に言う彼女の視線の先には一つの白い石造りの洋風の家が建っていた。

 外の彼方此方に植物を植えたプランタが並べられ、綺麗な花が咲き乱れる。

「ここの家だったんだ。」

 両手を胸の前に組み合わせ目をキラキラさせている勇。

「知ってるのか?」

 アキトの言葉にコクコクと頷く彼女。

「冒険してた時、たまたま通りかかって綺麗な家だな~って思ってたんだよ。」

・・・・・・冒険って・・・・・さっきのガキどもとか?・・・・・・

 勇と子供達が冒険してはしゃいでる様子を思い浮かべ苦笑するアキト。

「ママ。フェルシモが帰って来たよ。」

 真沙美は玄関で花の手入れをしていた母親の腕を引っ張ってアキト達の前まで連れて来た。

・・・・・フェル・・・その紹介じゃ凄いオレ等怪しい人なんだけどな・・・・・・・

 アキトは真沙美の発言に口元を引きつらせていた。

「フェルシモ・・・・・・

あら本当。フェルシモだわ。え?でも人間さんねぇ。」

 何だかのんびり口調でそう言い考え込むおばさん。

「あの・・・・・オレ達。そのフェルシモと言う人形が、昔どういった経緯でこちらの家に来たのかを知りたくて来たんです。」

 するとおばさんは・・・・・。

「あらあら・・・・。ご丁寧に。お飲み物でもお出ししなくちゃね。」

「いや、あまり気を使わないでください。逆にこっちが気を使いますから。」

「そうなの?お若いのに礼儀正しくて感心ね。

だったらここでお話ししましょう。その方が丁度良いもの。」

 ニコニコと笑みを浮かべるおばさん。

 勇は全然話しを聞くつもりは無いらしく真沙美と二人で植物の観察をしていた。

 おばさんは湖の方に足を向かわせて・・・・・。 

「あの人形はわたしのお祖母ちゃんがここで拾った物らしいの。」

 湖に指を差しそう言葉は始まった。

「湖の中でですか?」

アキトの言葉に面白そうな顔をして首を横に振ると・・・・。

「いえ。ここは元々、普通の畑だったらしいわ。

なのに突然地面に光が落ちて来て窪みが出来た。

日を追う事にその窪みに地下水が貯まり湖が出来たって言ってたかしら。

その時、偶然にお祖母ちゃんはフェルシモを見つけて拾って来て、今まで大事にしていたわけよ。」

・・・・・・・・光が落ちた・・・・か・・・・・かなり有力な情報だな。

一度湖を調べた方が良いかもな・・・・・・・

 アキトは視線を湖に移した。

「・・・・・でも、まさかこんなにそっくりな方がいるなんて思いもしなかったわ。あなた本当はフェルシモじゃなの?」

 言われ沈黙するアキト。

「別に信じてくれとは言わないが、オレは悪い奴に人形の姿に変えられていたんです。

で・・・・目覚めたばかりのオレは色々と手掛かりを探していると言う訳です。」

 するとおばさんはニッコリと微笑み・・・・。

「こうも似ていたら信じない訳にはいかないわよね。

そうそう彼女とはどう言ったお知り合いかしら?」

 おばさんは真沙美と話す勇の姿を見てそう尋ねた。

「オレの魔法を解いて家で看病してくれた恩人・・・。」

・・・・・・・魔法を解いたってのは多分偶然だろ。普通の人間に解けるはずがないからな・・・・・・術の効力がきれたとか何かに違いない・・・・・。

「そうなの・・・・。じゃあ大切にしなくてはいけないわね。」

 クスクスって笑うおばさん。

 それを見て一瞬沈黙するが何となくその言葉の意味を理解して顔を赤くさせ・・・。

「か、からかわないでください。」

 そう言うと直ぐ、アキトは勇の方へと歩み寄ると再びおばさんの方へと向いて一礼して・・・・。

「わざわざ忙しい所お呼び立てしてすみませんでした。有力な情報をありがとうございます。

オレ達はこれで帰りますんで・・・。」

「・・・・そう。役に立ったのなら嬉しいわ。

日が完全に暮れる前に気をつけてお帰りなさい。」

 にこにこ笑みを浮かべ礼をするおばさん。

「ママ、フェルシモ帰っちゃうよ?良いの?」

 真沙美は勇の元から離れ母親の元へと駆け寄り悲しそうな顔をした。

「仕方が無い事なのよ。」

 おばさんが真沙美をなだめる様にそう言うと、真沙美はアキトの方を見て何かを言いたげな顔をした。

 彼は大体言いたい事が何なのかを分かっていたので真沙美の所に向かい彼女の頭を撫でた。

「明日、ここの湖に用があるからその時また遊ぼうか?」

 するとその言葉にパァっと花開く様に真沙美は満面に笑みを浮かべ・・・。

「本当?」

「ああ。オレは嘘はつかない主義だ。珍しい物を見せてやるから期待しといてくれよ。」

 嬉しさのあまり彼女はキャッキャっと喜びながらアキトに飛び付いた。

「良かったわね真沙美。」

 おばさんも彼女の様子を見て嬉しそうな顔をした。


そして夕暮れの中アキトと勇は二人帰路についたのだった。

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