その①
気がつけば男は、見知らぬ天井を眺めていた。
・・・・・・ここは、どこだ?・・・・・・・
起き上がり周りを見渡すが、見た事の無い物ばかり置いてあった。
「あっ・・・・気がついた。」
手に水の入った用器を持った若い少女が、そう話しながら突然入って来た。
人の侵入に予想すらしていなかった彼は、咄嗟に身構え、腰のベルトに手をやるが・・・・。
ある物が腰に無い事に気づき、顔色を変えて周りを見回す。
「あぁ・・・・。多分、それの事?」
少女は用器を机に置くと壁に立てかけてある物に指を差す。
そこにあるのは一本の剣。
慌ててそれを取り女性を睨む。
彼の行動の意味をようやく理解して真っ青になり、今にも泣き出しそうな少女。
「オレの名はナスカ・アキト国軍魔道士部隊隊長に就いている者だ。
ここは何処だ?そしてお前は何者だ?国民番号を言え!」
その強い口調は泣きそうな彼女を完全に泣かすには十分だった。
「わたしは、大宮勇十八歳。」
涙を手で拭いながら懸命に話す彼女。
・・・・・・珍しい名前だな。
それより十八には到底見えない幼さだ・・・・・・
彼は一瞬そんな事を思い、目線を先程の水の入った容器に向けた。そこにはタオルが入れられていた。
アキトは暫し考えた。
「もしかして、オレを看病していたのか?」
聞かれ、涙ながらコクコクと頷く彼女。
それを聞き頭を掻き毟り、剣を床に置き片膝を付いて・・・・。
「すまない。恩人とは気付きもせず、とんだ無礼を。」
突然の彼の変わり様に、あたふたして、彼女も頭を下げた。
「わたしは、鳥が咥えていた人形を奪い取ったら突然、その人形があなたに変身して・・・・気を失ってる様だったし放置しているのも不敏だと思って家まで引きずって連れて来ただけ・・・・。」
ぴくっ
アキトはその言葉に心当たりがあり反応した。
・・・・・・人形・・・・人形使い・・・・アルバート・二コル・・・・・
彼は目覚める前の記憶を辿っていた。
・・・・・確か、あれは、軍事指揮官どのの指示で、人を人形に変えて楽しむ狂人の住処へと足を運んだんだ。
奴がねぐらとしている砂漠の遺跡にオレ達は夜、逃がさない為にと周囲にこっそりと結界を張った。そこまでは良かった。
だが、奴はオレ達、軍の行動に気付いて先に先手を打って来やがった。オレと指揮官どのは岩場に隠れ難を逃れたが、奴の持つおびただしい量の人形に攻撃され、オレ達以外は殺されたり人形にされたりしてしまった。
軍は壊滅状態。オレは戦力にはならない指揮官どのを逃がす為、奴に真っ向から勝負を挑んだ。
奴はその誘いにすんなりと応じてくれた。
それからは術のぶつけ合いだ。それが数時間続いただろうか。瓦礫に身を潜めたり、相手の気配を必死で探したり・・・・・。そして明け方、フラフラのオレは必死で出した術も不発で終わり、奴の術にかかり気を失った・・・・・・
「あの野郎!!!」
今まで黙っていた彼は全てを思い出した拍子に、怒りを抑えきれず突然大声で怒鳴り出した。
それをあっけらかんと見つめる勇。
「いや・・・・な・・・・その、思い出したんだ。オレを人形にした奴の事を・・・・。」
彼の怒りは、部外者で話しの内容が全然分からない彼女の顔を見て、ふっと消えた。
「ちなみに聞くが・・・・ここは何処だ?人形にされていた間、結構な時間も流れていただろうからな。
海の底や土砂の中で目覚めなかったのが全て物救いだが・・・・・。
そもそも人形にされてたのに生きてる事態おかしな話しだけどな。はははっ。」
笑いながらアキトは立ち上がり、カーテンを捲り窓の外を見た。
外の景色を見て彼は愕然とした。
「え~と・・・・・・ここは何処?」
全身硬直したままカクカクカクっとぎこちない動きで顔だけ彼女に向けて、もう一度聞いた。
「日本だけど・・・・・。あなたは日本人じゃないの?」
・・・・ニホン?・・・・・・・
職業上、頭には自分の世界地図名は全て叩き込んであるはずなのに、いくら考えても出ては来ない。
勇はタンスに閉まってる小さな地球儀を取り出して彼に手渡した。
「これが、この世界の全て。」
彼女が手渡した地球儀を手に取りクルクル回して見た。
だがそれは彼が納得いく様な物では無かった。
「違う。オレがいた世界じゃない。
何なんだ!ここは!?」
地球儀を下ろし、もう一度彼は外にある風景を眺めた。
「・・・・・・オレがいた所は、砂漠ばかりで、周りには白い建物がオアシスを中心に並んで建てられていた。
なのにここは何だ。あの馬鹿高い天まで届きそうな程の建物は!?
まさか本当に天を目指しているんじゃないだろうな?」
そう喋り倒し、彼は脱力し床にしゃがみ込んだ。
それを見て勇はまるで自分の事の様に悲しそうな顔をした。




