第5章 影の先にあるもの 2 変わらない日常を守るために
「ねえ、響。これからどうする? 私、復讐が終わっちゃって、なんだか変な気分よ」
瑞希は少し照れくさそうに、響の学生 鞄の隅をつついた。響は苦笑して眼鏡を指で直す。
「どうするも何も、普通の高校生に戻るだけだよ。テスト勉強をして、週末には両親と買い物に行って、時々こうやって屋上でサボるんだ」
「ふふ、それもそうね。それが私たちにとって、一番過激な戦いかもしれないわ」
響にとって、これまでの戦いは、自分自身が「何者かになろうとする焦燥」との戦いでもあった。
デーモンのように気に入らないだけなのに、悪者に仕立て、集団でいじめをさせるような輩が台頭してくると、この世は、ターゲットを集団いじめしなければ交流できなくなってくる。学校でも、職場でも、趣味のサークルでも。
デーモンも学校や職場のいじめっこたちもあまり変わらない。いじめの規模がちがうだけだ。
響は、正義感を振りかざし、挫折し、影に隠れ、そしてまた瑞希という光に出会った。
デーモンのような巨大な力に、正面から勝てなくてもいい。彼らが仕掛けてくる理不尽なハードルを、一つずつ丁寧に跳び越え、時にはそのコース自体を外れて、自分たちだけの道を歩めばいい。
たとえデーモンがこの世界から消えなくても、響と瑞希が「自分らしい人生」を笑って歩んでいる限り、それは彼らにとっての本当の敗北ではないのだ。
「誰かに支配されるんじゃなくて、自分の足で選んで走る。……それこそが、僕たちの本当の勝利なんだよ」
響の言葉に、瑞希は深く頷いた。




