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天罰必中暗闇姉妹 〜魔法少女の始末人〜  作者: 村雨ツグミ
??編

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もう人間をやめた時、修羅

「なんなのよ……コイツ…………!?」


 そう漏らすグレンの目前で、本郷チドリの変身が始まっていた。


 体全体が。白かった皮膚ですら、黒く、硬くなっていく。メキメキと音を立てながら、チドリの小柄な体が、骨格ごと大きくなっていった。今では、大人の男性よりも、一回りも大きくなっている。体を包んでいた黒い包帯が鋭利に成長して、竜の鱗(うろこ)のように体を包んでいき、手足の指が、不気味に伸びた。


 チドリは言葉を発しない。影に包まれた顔は、もはや人間の言葉を失ってしまったかのようだった。


「あれが、あの人の本当の姿なんです」


 とグレンサン。


「魔法少女の力で無理矢理人間みたいな姿を保っていただけです」


 サナエは呆然とチドリの変身を見つめていた。ここにいる魔法少女たちの中で、唯一彼女だけは、チドリともきっとわかりあえると信じていたのだ。


「ああ、チドリさん……もう人間ではなくなっていたのですね…………」


「だから何なの!」


 そう吠えたのはグレンバーンだ。


「こいつがもはや人間ではない、人でなしだなんて、わかりきっていたことじゃない!今がチャンスなのは、何も変わらないわ!」

「待ってグレン!もっと慎重に……!」


 オーシャンがそう叫んだが、グレンは止まらない。炎を帯びたグレンの正拳突きが、チドリの顔面をとらえた。


「おらおらおらおらおら!!」


 グレンはたたみかけるように攻撃を重ねる。たしかに、彼女の重い一撃が決まるたびにチドリの体が後退するが、それが効果的ではないことをサンは感じとっていた。


「いけない!お母さん、まるで効いてはいないよ!」

「バカな!そんなわけ……!」


 息子の忠告をグレンが真に理解した時には、グレンは瓦礫の山にその身を叩きつけられていた。グレンには、一体自分が何をされたのかわからなかった。ただ、胸の辺りがズキズキと痛むだけだ。


「な……何なの!?時間停止!?」

「いや、違う!動きが速かっただけだ!マジにな!」


 グレンが自分の真横に視線を向けると、風見リコが同じように倒れていた。


「どういうこと!?」

「オレが時を止めたんだ……!間違いなく時を止めたのに、アイツ、動きやがった!」


 アケボノオーシャンも結界のカッターを飛ばしてチドリを攻撃した。しかし、結界のカッターは簡単にチドリの鱗に弾かれた。


「わからない!どこが弱点なんだろう!?……あっ!」


 結界のカッターがオーシャンに向かって飛んできた。オーシャンは当たる寸前にかわしたが、結界のカッターが反転し、再びオーシャンに襲いかかる。


「ええっ!?なんで!?」


「落ち着いてくださいよ!みなさん!」


 そう叫んだのはサナエだ。


「グレンさん!自分でわからなかったのですか?あなたは自分で自分を攻撃したんです!リコさんも……ワタシには直接見えないことですが、自分の攻撃で吹き飛ばされたんですよ!オーシャンさんも!今だって!」


 オーシャンはやむなく、防御用の結界を展開してカッターと相殺させた。それを見ても、グレンはサナエの言葉を信じられないでいた。


「そんなわけないでしょ!アタシはたしかに魔王を攻撃したのよ!」


 サナエは無視して、サンに問いかけた。


「ねぇ!君ならわかるんじゃないですか!?チドリさんは、本当はあそこにいないんじゃないですか!?」

「あっ、ええ……ごめんなさい!ちょっとビックリしていたから……」


 サンは深呼吸をして、ジッとうつむいた。その間も、魔王チドリは動かない。少しして、またもやサンは動揺した様子で、こう答えた。


「みんなの後ろにいます!」

「はぁ!?」


 リコが素早く後ろを振り返った。だが、そこに魔王の姿は見えない。


「いねぇよ!」

「ちょっと待って!」


 グレンがそう言って地面を指差す。


「おかしいわよ!こんなに空が晴れて……はっきりと影ができているのに……変よ!みんな影の向きがバラバラだわ!」


「ああ!そういうことね!」


 アケボノオーシャンがそう叫び、背泳ぎをするように右腕を後ろに回した。その軌跡から結界のカッターが現れると、オーシャンの背面に飛んで行く。


 リコが叫んだ。


「あっ!結界の飛ぶ方向が変わった!」


 結界のカッターはブーメランのように軌道を変え、黒いチドリに向かって飛んでいった。


「光が屈折しているんだ。魔王の所業にしては子ども騙しじゃないか」


 結界のカッターは、今度こそ魔王に向かって飛んでいく。そして、魔王の首に光のカッターが当たり、真っ赤な血しぶきがあがった。


「ごめんよ、チドリちゃん。私たちにはこうするしか…………」


 だが、そう言いかけたオーシャンが、誰よりも先に異変に気がついた。首筋に激痛が走ったのだ。


「えっ…………!?」


 オーシャンは咄嗟に自分の首に手を当てた。血しぶきが上がっていたのは、アケボノオーシャンの首からであった。


 アケボノオーシャンの視界が徐々に暗くなっていく……

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