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天罰必中暗闇姉妹 〜魔法少女の始末人〜  作者: 村雨ツグミ
??編

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幻惑の時②

「そんなことは!」「させねーぜ!」


 グレンとリコは同時にマンダーレイアの前へ立ち塞がった。二人には、白い悪魔が大切な存在に見えているのだ。


『しっかりして!二人とも幻惑されているのよ!』


 そうレジーナが無線で呼びかけてみるが、二人が正気に戻る気配はない。


『しかたない!レイア、二人に構わないで悪魔を殺して!』


 レイアは口から火炎放射を放った。しかし、相手が悪い。炎の閃光少女であるグレンバーンにとっては児戯のように見えた。


「甘い!」


 グレンは炎の結界を前方に生じさせ、悪魔を炎から守った。その様子は、レジーナからも見えている。


『レイア!ミサイルよ!』


 今度は、マンダーレイアのお腹のハッチが開き、ミサイルが悪魔に向けて発射された。だが次の瞬間には、ミサイルの向きが180度反転した。


『えっ!?』


 ミサイルはレイアに着弾して爆発した。リコがそれを見て、フンと鼻を鳴らす。


「悪いが時を止めたぜ。ミサイルは自分で喰らっていな」


 どうやらリコによって時間停止中にミサイルの向きを変えられたらしい。そうと知ったレジーナはレイアを心配した。


『レイア!大丈夫!?』

『駆動部に問題ありません。しかし、発射機構にダメージを受けたため、もうミサイルは使えません』

『くっ!』


 レジーナはレイアのカメラアイで、彼女が受けたダメージを目視した。腹部のハッチに直接ミサイルを当てられたせいで、電子回路が焼き切れ、電流が火花を散らしている。レジーナは、状況を打破する方法は、もう一つしか思いつかなかった。


『こうなったら……レイア!ごめん!』


 レジーナからそう言われたマンダーレイアが、その腕を、側面にある水槽に叩きつけた。水槽が破損し、廊下がさらに水浸しになる。


「一体、何をするつもりだ?」


 そうつぶやくリコが真意を悟るより早く、レイアの行動は終了していた。マンダーレイアは、自身の内蔵とも言うべき電線の束をお腹から引きずり出し、水浸しの廊下へ接触させたのだ。そして、その廊下の上にはグレンたちが立っている。


「ああああ!?」

「うげえええ!?」

「ピギャアアアアアアッ!?」


 二人と悪魔は高圧電流に悶えてその場に崩れ落ちた。マンダーレイアは機械がショートし、それ以上の行動はできなくなる。しかし、マンダーレイアの犠牲は、それを行った甲斐があった。


「あ、あれ……?」

「オレたち、ここで何をしていたんだっけ?」


 グレンとリコは正気に戻った。もはや二人は、人類は滅びるべきだと考えていないし、高圧電流で気を失った白い悪魔がグレンサンだとは思っていない。


『二人ともしっかりして!』


 レジーナに無線でそう叱咤され、リコたちは自分たちの置かれた状況を思い出す。


「コイツ!」


 怒れるグレンは横たわる白い悪魔に蹴りをお見舞いした。そして、水槽にただよう他の白い悪魔たちへ向かって叫ぶ。


「アタシたちの邪魔をするなら全員ぶっ殺すわよ!!」


 グレンの言葉が、どこまで通じたかはわからない。だが事実として、白い悪魔がそれ以上、水槽から飛び出してくることはなかった。


「行こうぜ、グレン!お前の子を探すんだ!」


 リコにそう促され、グレンは先を急いだ。



 サナエとトコヤミの戦いにも変化が生じていた。


「あ!ビームが曲がった!」


 サナエを狙うトコヤミの殺人光線が、サナエを避けて湾曲したのだ。トコヤミが光線の照射を止める。サナエとトコヤミの間に、凹レンズのような光る物体が浮かんでいた。


「お待たせ!おギンちゃん!」


 その声と同時にトコヤミへ向けて光るトランプが数枚、投げつけられた。トコヤミは転がりながらそれを避ける。やがてサナエの側に駆けつけたのはアケボノオーシャンであった。


「あの、コレって……?」


 サナエが光の凹レンズを指差したので、オーシャンが説明をした。


「私が結界で作った光線よけだよ。ほら、おギンちゃん!早く、スイギンスパーダに戻ってよ」

「あ、はい!」


 オーシャンがトコヤミと対峙している隙に、サナエは自立していたスイギンスパーダの強化服に駆け寄り、エビの殻が剥けるのを逆再生するような動きで、それを装着した。トコヤミサイレンスは、奇襲をかけることはもうできない。もしも身を隠すようなことをしたら、魔法少女たちにグレンサンを連れ去られてしまうからだ。


 よって、トコヤミからすれば、重装甲のスイギンスパーダと、殺人光線を偏光できるオーシャンの二人を同時に相手にするしかない。その上、グレンと風見リコもまもなく、この場所に駆けつけるだろう。


 しかし、トコヤミに焦るそぶりはない。魔法少女を虐殺してきた彼女にとって、この程度のピンチには慣れている。


 オーシャンが結界のカッターをトコヤミに投げつけようとした瞬間のことだった。


「やめて!アケボノオーシャン!私だよ!ツグミだよ!」

「あ、えっ?」


 トコヤミがツグミを自称した事で、オーシャンはわずかに動揺した。トコヤミにとって、それで十分だった。トコヤミを包む黒い包帯が、ムチのようにオーシャンへ飛ぶ。


「わわっ!?」


 オーシャンは結界で防御したが、そのまま壁まで吹き飛ばされ、したたかに叩きつけられた。そして、すぐさまトコヤミの目が赤く光る。


(光線が来る!)


 オーシャンはそう判断し、結界のレンズを咄嗟に展開した。だが、トコヤミの狙いは別にあった。殺人光線はアケボノオーシャンの直上を狙う。


「うわああ!?」


 オーシャンの直上にあった天井のコンクリートが破壊され、オーシャンを下敷きにした。それで死ぬオーシャンではないだろうと、トコヤミは思う。だが、これで厄介なレンズはしばし封印だ。


「あわわわ!?」


 光線はそのままスイギンスパーダに向けられた。

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