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デジャヴな異世界で追憶を  作者: シバザキアツシ
武闘大会編

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15/16

整理しよう

テズヴァイス公国、首都サンゲイルのスタンピード侵攻を退けたカード達は、復興の手伝いをしていた。


町を覆う大壁は幾つもの穴が空き、公園の時計塔も倒壊してしまっている。

半分はカードがやらかしたものだ。

後ろめたさも手伝ってか、カード達は復興作業に精力的に参加している。


「さて、壁の修復は目処は付いたかな?」


辺りを見回す灰髪、灰眼の長身の青年カード。


冒険者、住民、黒騎士等、総出で復興作業を行っていた。

思っていたより活気がある、心配はいらないようだ。


「そうだな」

「うん」

長身の茶髪、金眼の虎人のサエラと、短身の青銀髪、紅眼のスカイフェンリルのカイルも同意する。

「じゃ、一息付いたら探そうか?」

「探す?」

二人同時に首を傾げる。


「商業施設で、僕たちを助けてくれた狙撃手を探そうと思ってさ」

商業施設で遭遇したオーガキングとの戦闘中に、オーガキングの動きを一瞬止めてくれた謎の狙撃。

カードは、その狙撃手を見つけたいのだ。

「そんな奴もいたな」

「なんで?」

カイルは興味なさ気に横を向き、サエラは疑問にもう一度首を傾げる。

「仲間になってもらおうと思って」

カードは頬を掻きながらそう答える。

「パーティに入れると?まぁ、確かに遠距離攻撃が出来る人材は有難いがな」


カードのパーティは全員、前衛のゴリ押しパーティだ。

戦略の幅が広がるという面で、遠距離攻撃役は欲しい人材である。


アビスとこちら側を繋ぐ、扉の破壊をアビス対策本部のレンに頼まれたカード。

アビス対策本部の思惑は分からないが、未知の領域での戦闘を考えると戦力増強は急務と言えた。


◇


狙撃手を探す前に、暫く遠征するため、首都サンゲイルを離れる旨を、冒険者ギルドのギルドマスターに告げた。


冒険者ギルドを出た所で、ある人物が待ち構えていた。


「何か用ですか?」

カードはその人物の正面に立ち、用件を聞く。

アビス対策本部の、レンの護衛についていた教会騎士だった。


「貴方を裁きます」

真っ直ぐな目で、唐突に衝撃発言をする教会騎士。

「それは、神の意志ですか?」

カードは臆することなく聞く。

「私の意志です」

淡々と答える教会騎士。


「しょうがないなぁ、じゃ、広い所でやろうか」

あっさり受け入れるカード。

「え?いいのですか?」

思わぬ答えに狼狽える協会騎士。

「え?やらないの?」

「…やります」


「主に喧嘩を売るとは、死にたいのか?」

「阿保なんだ」

サエラとカイルは今日も平常運転だ。


◇


町の北東にある大きな公園の一角。

周りに何もない広場を選んだ。

現在、午前九時を回ったところ、都合が良い事に人通りはほぼ無い。


「裁くって、決闘ですよね?」

「そうだ」

「まぁ、僕も自分の力量を知りたかったし、ちょうど良かったかもね」

カードは背中の鞘から、黒の大剣を抜いた。


「舐められたものだな」

そう言うと騎士騎士は、腰の長剣を抜いた。

「周りに被害があると不味いから、スキルなしでいいですか?」

「構わん」

カードの提案をあっさり呑む教会騎士。

余程、腕に自身があるのだろう。


「じゃ、はじめるのじゃ~!」

カイルの温(ぬる)い開始の合図と同時に走りよる二人。

一瞬で両者の距離がゼロになる。


剣同士がぶつかり合い、鍔迫り合いで火花が飛ぶ。

「くっ!」

力負けした教会騎士は、一度後ろに跳び距離をとる。

教会騎士は突きの体勢でカードに突進する。

すると、カードは防御を捨てて、腕を大きく開いて待ち受ける。


「何の真似だ!」

「いいからそのまま」

カードは全く焦る素振りもない。

「お前がそのつもりなら、貫くのみ!」

思い切りカードの胸に剣が突き刺さる。


いや、刺さらない。


「何だと!?」

カードの胸には傷ひとつ付かなかった。

「ふむ、今の攻撃で減ったHPは0.01%ほどか」

自身のステータスを、看破スキルで確認するカード。

「そんな…私の攻撃が効かないだと?」

目を見開く協会騎士。

「効いてますよ?しっかり9600程ダメージ喰らってます」

「は?」

「僕、人よりHP多いんで」

「多いとか言うレベルではないだろう!バグレベルじゃないか!?」

声を荒げて叫ぶ教会騎士。

「まぁ、そうですよね」と頬を掻(か)くカード。

「まさか…ユニーク職なのか?」


この世界にはステータスが存在する。

レベルや細かい数値は表示されず、HPとMPだけが表示される。


数字以外では、ジョブ、アクティブスキル、パッシブスキル、装備等々が表示される。


その中のジョブというのは、スキルなどを司る根本のようなもの。

一次職、二次職、三次職、その次ぎがユニーク職となる。


ユニーク職は、一種類ずつしか存在しないジョブである。

つまりは、同じジョブの人はいないと言う事。


「いえ、何か、LGってなってますね」

「LG?何だそれは…いや、どこかで聞いたことがあるような…」

決闘を忘れ顎(あご)に手をやり、遠い記憶を探ろうとする教会騎士。

「それより、続けますか?」

「…続けられる訳がないだろう。九千万以上のHPを削れる気がしない。無理だ」

匙(さじ)を投げる騎士騎士は、長剣を納める。

「それは良かった」

カードも黒の大剣を納める。

「良いことなどあるか!」

教会騎士は怒りに震えている。

「どうしたいのさ?君は」

困り顔のカードと、後ろで笑いを堪(こら)えるサエラとカイル。

「私はレン様に…レン様と…ええい!今は引いてやる!いつか…その…あの…覚えてろよ!!」

上手く言葉を伝えられない教会騎士は、全力で走り去った。

「何だったんだ?」

三人は同時に首を傾げた。


◇


「聖女様」

「名前で呼んでって、いつも言ってるじゃない」

「そう言う訳にまいりません」

聖塔教会のローブを羽織った、初老の男性が聖女セレンの後ろから声をかけ、恭(うやうや)しく頭を下げる。

「それで、中央議会の幹部様が、私に何の用ですか?」

緑髪を揺らしながら振り返るセレン。


二人が今いる場所は、城砦オロバスの四つの塔の南に位置する、オーガスの塔。

その屋上。


「聖女様が魔王城で発見された、《巨神の欠片》の解析が完了しました」

「分かりました、案内してちょうだい」即答のセレン。

「畏(かしこ)まりました」

胸に手を当て頭を下げる男性。


「魔王が生きていれば、詳しい事を聞けたのにね」

少し悲しげに言うセレン。

「先代の勇者様が討伐したとされてますが、その遺体は発見されていません。何処(どこ)かで生きながらえている可能性はあります」

「ま、今は憶測(おくそく)より、目の前の結果ね」

「そう言う事になりますね」

議員らしい言い方を崩さない男に、苦笑するセレンだった。


◇


「さて、“石”が反応してるのは、ここか」

ある紋章の入った、ローブのフードを目深に被った男が、要塞都市の長大な外壁を見上げた。

「中に入るには…」

遥か彼方に門らしきものを見つけ、深く溜め息を吐く男。

「どれだけデカイんだよ…あそこまで何キロあるんだ?」

憂鬱になりながらも、とぼとぼと歩きだす男だった。


◇


スタンピードの事件でも、城砦(じょうさい)オロバスは無傷で済んだ。

それは、住民より堀の中を優先したためである。


跳ね橋を上げ、断絶したのだ。

それにより、住民からは多少の反発はあったが、カード達の活躍により死者が出なかった事もあり、終息に向かっている。


◇


「カードと言う冒険者が、悪魔に命令して巨大化されたと?」

「その通りです隊長」


城砦オロバスの西の塔、サンドラの塔の執務室。

中に居るのは二人。

黒騎士隊長と、副長のグレイ。


「その目的は?」

「この町を守る為です」

「と、言うと?」

「カード殿はこの町に留まり続ける訳ではないので」


人類は悪魔との戦争中である。

そして、悪魔は軍団を持つ。

一柱につき数十単位で指揮を取るらしい。


ハルファスを巨人化させた本当の意味。


それは。


ハルファスの序列は38位、それ以下の悪魔が攻め込んでくる確率は減るだろう。

そして、それより上の悪魔は、簡単には動かないだろうと思うとのこと。

悪魔にだって立場はあるだろう。立場が上に行けばいくほど、枷(かせ)が増え動き辛くなるはず。


それは人も悪魔も変わらない。


その為に、ハルファスを巨人化させ、町全体に周知させたのだ。

もし、悪魔が攻めてきたら、カードを呼べばいい。

どこにいても、感知出来るように、カードはハルファスをテイムしておいた。

テイム中の生物とは、どんなに離れていても意思の疎通(そつう)が出来るのだ。


「と、言う事です」

「なる程、そこまで考えての事なのだな」

「その通りです」

「黒騎士に欲しいな」

「それは叶いますまい。彼を縛(しば)る事は不可能です」

「どうして?」

「彼は力より、記憶を探していらっしゃる。情報を探す為、各地を飛び回るでしょう」

「う~ん、まぁ、一旦保留だな」

「では、次の報告を」

「あぁ…」

二人だけの報告会は続く。


◇


商業施設で、カード達を助けた狙撃手の捜索を開始した。

先(ま)ずは、十二階建ての商業施設の最上階から、狙撃が可能な場所を探ってみる。


「どう?分かりそう?」

360度見渡せるガラス張りのフロアで、カイルが矢が飛んできた方向を分析する。

「うむ、恐らく…南東のあそこだな」

カイルが町の一ヵ所を指差す。

「え?」

彼女が指し示したのは、堅牢な城砦だった。

「城砦オロバス…!」


◇


城砦オロバスは、平時には堀の跳ね橋が下げられており、誰でも通行可能である。


「ここの北の塔、トゥーレの等が狙撃場所か」

「そう」

「ここって…」

トゥーレの塔の入口の看板に書かれていたのは。

「ハンター協会?」

カードの記憶にハンター協会の名はない。

扉は開かれている。


ここも入れそうなので、躊躇(ちゅうちょ)なく侵入する。


「サエラ、分かりそう?」

「たぶん」

「便利な能力じゃな」


犬のように鼻をひくつかせながら、ずんずん進んでいくサエラ。

その後ろをカードとカイルがついて歩く。


塔の三階にまで上がってきた。

道中、誰ともすれ違わなかった。


「ここ」

「ハンター協会、理事室?」


試しにノックをしてみる。

「どうぞ」

許しが出たので、ドアを開ける。

「失礼します」


「何の用か…な?」

「見つけた!」

サエラがカードの後ろから指を差した。

「何なんだ君たちは?」

それには答えずカードが質問を返す。

「君があの時、狙撃してくれた人?」

「お?何でわかった!?」

「匂い、臭い…」

サエラが鼻を摘まむ。

「臭い!?」


「ほう、中々やるじゃないか。うちに欲しい人材だ」

「逆だ」

「逆?」

「其奴を貰いたい」

仁王立ちで腕を組み、そう吐き捨てるカイル。

「は?」

「言い方が良くないよ…」

ポツリと言うカード。


「コイツはブロイルって言う名だ。そして、うちのエースを易々渡す気はないよ」

ハンター協会理事の目が鋭く光る。

「ごもっともで…」

当たり前だろう、いきなりやってきて、その人うちに下さいなんて、通るはずはない。

「でも、君達に付いていれば良い修行にはなりそうかな?」

「お、おやじ!?」

思わぬ発言に動揺するブロイル。

「おやじは止めろって」

無精髭を擦りながら、溜め息を履く理事長。

「どうすれば良いですか?」

「話が早くて助かるよ。今、俺と戦って欲しい」

「模擬戦ですか?」

「いやぁ、殺しあいだよ」

ハンター協会理事の、ブラズ・ゾルダンの目が光った。


「まぁ、いいですよ」

「いいんかい!?」

「この人に僕は殺せないんで」

「ほう、言うじゃないか。これでも俺は元傭兵、個人ランクS級なんだがな」

「それは関係ないかな?」

「わかった、場所を移そう」

ブラズの眼が鋭く光った。


◇


城砦オロバスの中庭に移動した。

中庭と言っても異常に広い空間だ。

体育館五個分は優にありそうだ。


「ここには結界が張られていて、中庭の外には出ないようになっている。思い切りやってくれ」

「大丈夫ですか?以前、ギルドの練兵場で、僕の一振りで五重の結界が破壊されたんですけど」

「マジか…」

ドン引きするブロイル。

「問題ない、ここの結界は隕石が落ちてきても、びくともしないように出来ている」

「それは良かった、じゃ」

カードは背中から黒の大剣を抜く。

ブラズは先端に小剣が装備されたクロスボウを構える。


「始めるのじゃ!」

カイルの合図と同時にカードが仕掛ける。

「断罪(パニッシュ)!」

巨大な斬撃がブラズを襲う。

「なかなかだ」

半歩動いて避けるブラズ。


「え?」

カードの視界が反転する。

ブラズの前に、無防備に仰向けに転がってしまった。

カードは、何をされたかも分からなかった。


「チェックメイト」

ブラズはカードの額に、思い切り小剣を振り下ろした。


ブロイルが息をのむ。

「ほんまもんの、殺しあいかよ…」


「は?」


しかし。


刺した小剣の方が砕け散った。

「強度が足りないようですね。新しい武器に変えてもいいですよ?」

無傷のまま立ち上がるカード。


「頑丈過ぎんだろ!?」

「頑丈と言うか、HPが多いだけですけど」

「因(ちな)みにいかほど?」

「九千万ちょっとですけど?」

さらっと言うカード。


「そんな出鱈目(でたらめ)な数字、聞いたことねぇよ!」

声を粗げるブラズ。


「そうですか?続けますか?」

黒の大剣を構え直すカード。


「今のでどれくらい減ったんだよ?」

「六千ほどですね」

「…無理だろ、削り切る自信がねぇ…」

即答で敗北宣言をするブラズだった。

「つまり?」

「お前の勝ちでいい。ったく、何て奴だよ…」

ガシガシと頭を掻(か)くブラズ。

「連れてけ…いや、ブロイルを連れていって下さい」

そう言ってブラズは、頭を深く下げるのだった。

「おやじ…」


◇


「そいで、これからの予定はどうなっとんかの?」

「取(と)り敢(あ)えず、アビス対策本部から依頼された扉に向かおうと思う」

「いきなり大仕事じゃの…」

「心配いらんじゃろ」

「ん、カードの強さは見たでしょ?」

「おう」

「カイルは伝説のスカイフェンリル」

サエラはカイルの紹介をする。


「は?」

「そして、そのサエラは金眼の虎人じゃ」

今度はカイルがサエラの紹介をする。


「はぁ?凡人はおいだけかの?」

目を丸くすブロイル。


「どこが凡人じゃ、赤眼のハーフエルフが良く言うわ」

「何のことじゃ?」

「知らんのか?まぁ、その内分かるじゃろ」

「教えてくれ!」

「…断る」

「なんでじゃ!教えてくれぇ!」

「嫌じゃ」

「頼む…」

「本当に知らんのなら、尚更、我の口からは言えん。意地悪で言っている訳じゃない。心配しなくとも時がくれば分かる」


「…何かよう分からんが、分かった」

憮然(ぶぜん)の表情のブロイル。

「年長のカイルがこう言ってるんだ。信じて待とう」

「年長?まぁ、分かったわ、ところでカイルは何歳なんじゃ?」

「女性に年齢を聞くとは、死にたいのか?」

カイルは腕を組み殺気を放つ。


「すまん、すまん!田舎の出身じゃで、そう言うのには疎(うと)いんじゃ!許してくれぇ」

「まぁ、良い。許してやる、我は寛大(かんだい)だからな。覚えておけ子童、我は今年、82歳になる」

「は…82歳?」

「フェンリルは長命だからの、我はまだまだピチピチの若者じゃ」

「ほうなんか…ほうか…」

ブラズより年上だが、そう言うしかないブロイルだった。


◇


カードはジョブ奴隷の意味が分からない。

誰かに仕えている訳でもない。

その内分かるのだろうか。

今のところ支障はない。


「そう言えば、固有スキルを使った事がないな…」

カードは自身の固有スキル、《解放》を使った事がない。

効果も分からない。


「我のは攻撃スキルだから分かりやすいが、主のは少し特殊らしいな」

「意味分からないから、使うの怖いけど…」

「無理に使う必要はないじゃろ?」

「そうだね」


「後は、スキルと一緒に手に入れたスキンだね」

「まんま、見た目を変えるものだろうよ」

カイルは鼻を鳴らす。

「まぁ、そうじゃろうな」

ブロイルも同意する。

サエラはその辺でふらふらしている。


「これも後々試していくかな」

「今は試さんのか?」

「うん、使わなくても問題ないからね」

「主の好きにすればいい」

「そうだね」


置いてきたハルファスは、首都の守護を任せている。

何かあった時は、連絡が来る手筈(てはず)だ。


追憶を経験する度に、何故スキルを得るのか。

分からない事は山積みだ。

それでも、何とかやっていけてる。

カードは一人じゃない。

それが心強い。


大丈夫。


大丈夫。


「さて、出発しようか?」

カードは自分の記憶を求めて、新たな一歩を踏み出した。

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