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第5話:〔オービタルドライブ〕

輸送車に乗ってから約1時間後。完全に暗闇に目が慣れてくる頃。


「それでねー__」


ふたりが会話をしている中、ブゥーン…ブゥーン…。と羽音が荷台の中に響く。


「ンむ?虫かなー?」


ブゥーン…ブゥーン…


「結構音がおーきーね。」


「そうだね。」


にしても羽音がうるさいな。異世界の虫はサイズがでかいのかな?


リジジジジジ……


〔変な鳴き声?だな。〕


この鳴き声に聞き覚えがあるのかポロンが声をあげる。


「ん!この声!やばいよー!この虫は…」


「インセクト・ヘルっ!」


「口の針から毒を入れられたら…」


「入れられたら…?」


「死ぬっ!」


〔なにィ!?〕


「すぐには死なない。だけど…ゆっくりとじっくりと毒が回っていき徐々に死が近づいくるっ。そーゆー虫!」


「おにーさん!刺されたらまずいよっ!だから!早くソイツの位置を探してー!」


「わかった!」


耳を済まし羽音を聞き込む。


ブゥーン…ブゥーン…


あちこち動き回っているのか全方向から音が聴こえる。


ブゥーン…


何処だどこだと探っていたその時、サクマの耳元近くに羽音が響く。


まさか!


「まずい!ポロン!離れてッ!」


ポロンの首筋に10センチ程の虫が針を尖らせていた。


「刺されるぞぉッ!」


針と首までの距離あと数ミリとなった時ポロンがこう叫ぶ。


「ミミクリー・テクスチャっ!」


その瞬間、煙と音を立てポロンの身体が鉄の塊に、変化(へんげ)する。鉄塊となった身体に針は刺さらない。そう判断した虫は再び何処かへと隠れる。


「ふふん!いくら地獄の虫だとしても鉄塊には刺せないでしょー!」


〔なんとかなったがヤツはまた何処かへいってしまったぞ。〕


そうだね。なら…


「ポロン。またいつどこから来るか分からないッ!だからお互いがお互いを見張れるように角と角、対角線上に移動しよう。」


「でも荷物が邪魔だよー?」


「大丈夫。少し乗るくらいなら問題ない。」


「わかったー!」


変化を解除し二人は対角線上の位置に待機しお互いを見張る。


「次は何処から来るッ?」


ガタガタガタガタ……。舗装されていない道に入ったのか荷台が良く揺れる。


〔集中力を保てよぉサクマ!〕


わかってる!


……。


その時サクマは虫を発見する。


「…ッ!ポロン!乗っかっている荷物の中に虫が入り込んだッ!」


「えっ!えっ!」


ポロンは慌てる。


「落ち着いてッポロンッ!ボクが出てきたところを撃ち抜くッ!だから!立ち上がって荷物からなるべく離れるんだッ」


「うんっ」


立ち上がり、荷物から身体をなるべく離し隙間を作る。サクマは人差し指を構え集中力を高める。


ザシュッ!荷物の梱包を突き破り虫が飛び上がってきた。


「今だッ!スタープローブッ」


サクマの指からエネルギーが突き進む。


しかし


「避けたッ!?」


虫は攻撃がわかっていたかのように回避しポロンの首に近付く。


「まっまずいッ!」


その時、乗っかっている荷物が崩れ下へと落っこちた。そのお陰でひとまずの回避に成功する。そして虫はまたもや離れ辺りを飛び交う。


〔運が良いな。アイツ。〕


だけどそうもう一度は起こらない。だから早く倒したいんだけどあの虫、とても…素早い。ボクのスタープローブを避けれる程にねッ。


〔そうだな。動きを制限出来れば良いが…〕


制限…


…はッ!


〔閃いたか。サクマ。〕


「ポロン!今度はボールに変化できる?とびきり跳ねやすいボールにッ!」


「できるよー!」


「じゃあこっちに来てくれ!」


ポロンは荷物から荷物に飛びサクマの元に来る。


「ボールになったらボクが投げる。そしたらポロンはそのまま壁と壁を行きかい跳ね続けるんだ。色んなところをずうっと同じように跳ねてくれればいい。それにキミがボールになれば狙いはボクに変わるッ」


「わかった。ずうっとだね。よーし!ミミクリーテクスチャっ!」


ボールとなったポロンを握り構えをとる。


「投げるよ!ポロン!跳ね続けて方向進路が確定したらその道をずうっとだよ。何があっても自分の意思で変えないで。」


「了解だよー!」


ヒュンッ。ボールを壁目掛け投げつける。するとぶつかったボールは跳ね、別の壁にぶつかる。そしたらまた別の壁、さらに別の壁、別の壁、別の壁…。延々と壁を跳ね続ける。


無限に飛び交うボールにより動きを制限する。


「こうなれば…おのずと、道は見えてくる!あとは!そこを迎え撃つだけッ!」


さっき撃った手とは反対の人差し指を構える。


「来るとしたら…ここらの3箇所のみッ!」


バンバンバンバン…ボールが跳ね続ける音が響いて羽音が薄れる。しかしきたる道が分かれば十分。


その時…


来たッ!真っ直ぐにコチラに向かってくる!


指先の照準を合わせエネルギーをぶっぱなす。


「スタープローブッ」


真っ直ぐに突き進むエネルギー。しかし当たったのは…虫では無く…ボールだった。


「なッ!」


「リジジジジ…ニンゲンよ…マヌケだ…」


〔喋ったぞ!〕


「この俺様に攻撃が当たる訳無いだろう。俺様は賢いんだ。お前らの作戦なんか筒抜けだあ!」


「そもそも__」


サクマが言葉を遮る。


「ああ。最初からお前に当てるつもりは無かった。」


「ホ?」


「ボクが狙っていたのはボールの方ッ!」


「ホアっ!」


「ボールに当てたことにより!進路が変更されたッ!」


「まさかッ!」


バシンッ!ボールが虫に激突。


「まさかお前自身が喋って時間稼ぎをしてくれるとは思わなかったけどね。」


〔よし!叩き潰せサクマ!〕


ああ!


サクマが足をあげた瞬間。


ガタンッッ!荷台が強く揺れた。大きめの石でも踏んだのか輸送車が少し浮き上がった。そのせいか、着地の衝撃で荷台の扉が壊れ勝手に開いてしまい、そこから虫が転がり落ちた。


「あっトドメを刺せなかったのは悔しい。まぁこのスピードなら来れないだろうけど。ただ…それよりも重要な事があるッ!」


〔そうだな。〕


「輸送車が暴走しているッ!」


中から外を覗くと馬車とは思えない速度で動いていた。変化を解除したポロンも外を覗く。


「えーやば!凄いスピードだよ。」


「まさか操縦士がやられてるんじゃ…」


「確かめにいこー」


「そうだね。行こう。」


ポロンが先によじ登り屋根から手を掴みサクマを引き上げようとする。その時。


「ンむッ!アキ!アレを見て!」


後ろを振り向くとなんと、インセクトヘルが高速で羽ばたいていた。


「まじか……」


ポロンはサクマを引き上げ、屋根に立つ。


「おおっ…とっと」


ポロンがよろける。


「危ないから屈んで行こう。ボクがアイツを見張ってるから、操縦士を見てきてくれる?」


「うん。わかった。」


屋根に手を付き、前へと進んでいく。それを確認したサクマは例の虫に視線を戻す。


さて…どうしたものかね。ただ素早いだけで無く、知性まであるとは…。あれもモルガンの手下なのかな?


〔さぁ?分からないが今は、正体を探ってる暇は無いな。〕


そうだね。


インセクトヘルは高速で羽を羽ばたかせコチラに向かってきている。スピードはこの輸送車と同じようだが、それでも少しずつ近付いてる。


真っ直ぐ飛んでこの近付き方なら…妨害をして少しでも距離を取ろう。


片膝を着き指を突き出す。


ふたつの人差し指は既に使った。あとは8回か…。


まずは右の中指を突き出しエネルギーを溜める。狙いを定めこう叫ぶ。


「スタープローブッ!」


ビュゥン。エネルギーが放たれるが当然ヤツは避ける。だがそれで良い。


今度は薬指から、放つ。それも避けられる。次いで小指、親指と放つ。それもまた避けられる。だが、それで、良い。距離を稼げれば良いのだ。


良し…このままアイツの体力が切れるまで待てば勝ちだね。


しかし、そう物事は上手く行かない。


「やばいよアキー!操縦士は気絶してる上に、このままだと木と激突するぅーー!」


前方を向くと遠くに大きくそびえ立つ大木があった。


このまま行けば2匹の馬は左右に分かれ残った輸送車は激突してしまう。しかしサクマに馬車の操縦方法は分からない。


「ポロン!この馬車、操縦できる?」


「ムリー!」


ダメか……


とても…とてもまずい事になった…前後から危機が迫ってきているッ…まずは…前方だッ。前方の危機から対処しよう。


「ポロン!場所の交代をするよッ!」


「うん!」


操縦席から這い上がり屋根に登る。


「あの虫を監視してて。なにかあったら叫んで伝えて!」


「任せて!」


サクマは操縦席に飛び降りる。


〔それで…どうするんだサクマ。何か策でもあるのか?〕


今…考えてる。


操縦士は気絶してて当てにならないし、ボク自身操縦なんてできない。となると…スキルか…?でもこんな時に使えるスキルなんて…あるはずが…


いや…決めつけないで…一旦整理しよう。


ロケットショット、スタープローブ、アボートスラスト、マルチステージショット、そしてオービタルドライブ…。


………。


……。


…!


いける…これならいけるかもしれないッ!


サクマは立ち上がり姿勢を整える。肩幅に足を開き、右拳を胸の前に持っていく。それと対になるように左手のひらを同じように持ってき、右拳にエネルギーを貯める。


「マルチステージショット…」


静かに…そう囁くと拳からエネルギーがゆっくりと射出される。


そして、左手で右拳ごとエネルギーを掴み…こう叫ぶ。


「オービタルドライブッ!」


触れた左手を始点に全身にエネルギーが行き渡る。


「第3エンジン…点火ッ!」


激しく揺れる輸送車を身体の流れを利用し抑える。


「ボクのオービタルドライブはただ威力が増しているだけじゃあないッ」


両手を大きく広げる。


「肉体が自然と身体の流れに合わせ効率良く動いてくれる。つまりだつまり…」


両手のひらを馬にペタリとつける。


「動きのアシスタントをしてくれると言う事だ。」


触れた両手のひらからエネルギーが二匹の馬へと流れ込んでいく。


「どちらに進めば良いか…脳みそで考えるんじゃあないッ!身体で!理解しろッ!」


流し込まれたエネルギーが馬の身体全体に行き渡る。


「分かるだろう?どちらに曲がれば良いのか…どちらが安全か…どちらが効率的かをッ!」


ヒヒーンと声を荒らげ。2匹の馬は左へと進路を変え出す。


「良し!」


〔しかしサクマ、この輸送車は本当にワンターンに向かっているのか?いつ操縦士が気絶したかは分からないが…こんな道を走っていると言う事は、正規の道から逸れているという事だぞ。〕


だけど地図なんか持ってないよ!


〔あるだろ……自然の地図が。〕


あ!


星だ!


星の位置からある程度の座標を特定すれば良いんだッ!


サクマは空を見上げる。


何処だ…どこだ…む!あれだ!


柄杓の形をした七つの星…あの1番端のふたつの星を結んで、その距離を5倍程のばす……。見えた!あそこだ!暗いけどひとつだけ動かない星があるッ!天の北極…北極星だッ!キミがそこにあるのなら、北はこっちの方角だ…


北極星を正面に固定する…それだけでいいッ…


「良し…もう1回だ!進路を変更しろッ!二匹の馬ッ!」


ズレていた輸送車が行くべき方向へと戻り出す。今までの走行で無茶をし過ぎたのか、ギシギシと聞きたくない音がなり始める。


〔そろそろやばいぞこの輸送車…〕


到着まで持ってくれ…


その時。


「アキィーーー!!!」


屋根にしがみついてるポロンが叫ぶ。


「あの虫が横に並んだぁーっ!」


進路変更のせいか真後ろにいたインセクトヘルはいつの間にか横並びになっていた。


〔まずいぞ…この位置なら直ぐに近付かれるッ!〕


サクマは直ぐに操縦席から屋根に登る。輸送車と同じ方向で飛んでる虫は徐々に…徐々にと接近してくる。


「迎撃するッポロンは伏せてて。」


右手で屋根を掴み左手を突き出す。人差し指はもう使えない。となるとあとは4回。中指を構えエネルギーを溜める。


「スタープローブッ」


放つがクルリと避けられる。しかしただ避けただけ出ない。避けたと同時に地面にある小石を拾い上げていた。その小石に口の針から毒を吹き掛け、立派な爪を変形させる。


その様はまるでカタパルト…


「リジジ……この俺様に当たる訳無いだろう…」


〔気をつけろッ!サクマッ!〕


爪に石を固定し、投げ飛ばす為の捻りを加える。


そして…


「来るぞッ!」


投擲!勢い良く飛んでくる小石をサクマは薬指からエネルギーを放ち撃ち落とす。虫は再び小石を拾い上げ先程と同じ工程を済ます。


〔また来るぞ!〕


再度投擲!今度も同じように親指から放ち撃ち落とす。


やばい…もう…小指しか残っていない。


〔サクマ。ここはスタープローブを温存しアボートスラストを使え。〕


でもそのスキルはそこまで射程が無いんだよ!


〔わかってる。それでもやるしかない。〕


……。


「ポロン。少し下がってて。」


「うん。」


サクマはいつでも放てるように手を握る。


そして3度目の投擲。


勢い良く飛んでくる小石との距離を測る。


まだだ…まだ…


………。


今だ!


「アボートスラストッ!」


空気の壁で小石を押し返す。跳ね返った小石は虫の近くまでに飛んでいくが当たらず。


「はぁ……はぁ…」


サクマの体力が限界に近い。いくらレベルが上がってるとは言え、限度はある。


「………。」


ポロンがサクマを見つめる。


「アキ。ぼくに任せて。」


「え?でもポロン…攻撃できるようなスキル持ってるの?」


「ううん。もってない。けど、ぼくにはミミクリーテクスチャがあるっ!」


「ちょっとまっててさっき乗っかった荷物の中に火薬があった!それを取ってくる。」


「ちょ…ちょっと!」


ポロンは荷台の中に潜り込んで行き、沢山の火薬が入った袋を持ってきた。


「ぼくのミミクリーテクスチャはね、だいたいの物には変化する事ができる。それに変化したものの性質さえ真似する事が出来る。」


「そして、変化したものと同じ材質を体に含んだ状態なら…さらに効率良く真似ができるんだぁっ!」


「だから__」


ポロンはおもむろに火薬の袋を開け、口の中に放り込む。


〔何をッ!?〕


「ゲホッ…ゲホッ!…この状態なら…とんでも火力な…最強の銃に変化が出来るっ!」


「ぼくだってレフティーいち族の男だーっ!」


「ミミクリーテクスチャっ!!」


袋を投げ捨てそう叫ぶ、ポロンの身体はいかにも高火力出しますよ!と、訴えかけてくるようなライフルに変化した!


「さぁ!ぼくを使って!」


「了解!」


ライフルを手に取り構え、狙いを定める。


……。風が髪の毛を靡かせ、心を震わせる。狙いは外さず…必ず仕留めるという2人の意思を月明かりが照らす。


ふぅ……


………。


……。


「…ッ今だっ!」


トリガーを引き銃口から弾丸が射出される。放たれた弾丸がインセクトヘルへと突き進む。


「リジジ…そんな弾当たる訳_」


余裕をぶっこいた時、ひとつの弾丸が数十以上の無数の弾丸に分裂したっ!


「ナァニィッッ!!」


弾丸の雨を避ける事などできるはずも無く…ヤツは無数の弾丸に貫かれ、風通しの良いどころでは済まない身体となった。


「やったね…ポロン。」


「うん!」


ボンと銃から戻ったポロンは屋根の上で寝転がる。


「ああー…なんか凄い疲れちゃった…」


「ボクもだよ…ひとまずは安心だね。進路も修正済みだし。」


「うっ!」


「どうした!」


「お腹痛い。」


「あぁ…。…そうだ!」


サクマはポーチから飲水を取り出す。


「ただの水だけど一応飲んでおきな…」


「うん。」


手渡されたポロンは蓋を開けゴクゴクと良く飲む。


「ゴクリ……ぷはぁ!なんだかすごく美味しいーっ!」


「そういえばイデアチャートってのが盗まれたって言ってたけどソレってなんなの?」


「イデアチャートはね…この世界にある全ての物質…石や木、鉄などがどのような情報の並びでできているかを記した最強の辞書なの。」


「ぼくらはねこれを見て、この石のカタチはこうなってるんだー、って理解して変化してるんだけど…ソレが無いせいで今は自分限定かつ自身よりも小さい物にしか変化ができないのー。」


「それでね。そのイデアチャートを使えば、物を別の物に変化させる事ができるの。だから、小さなコインを最強な剣に変化させたり、逆にヒトを小さなコインに変化させたりできる。」


「けど、ただの物質からに生命に変化、生命から生命に変化はできないの。」


〔おいおいおいおい……とんでもねぇどころじゃあ済まない代物だぞ…〕


「でもイデアチャートはぼくらレフティーいち族しか分からない言語で書いてあるから時間稼ぎはできるよ。」


……。んー物質をエネルギーに変換し再び物質として再構成する為のE=mc²の応用マニュアルのようなもの……なのか?


〔ともかく、これは世界を壊しかねん存在だ。急いでアストロフーに出会わないとな。〕


そうだね。


……ちょっと……なんか、眠たくなってきた……


「ごめん…ポロン、ちょっと眠るね。」


「わかったー。それじゃあぼくはちゃんと輸送車が進んでるか見てるねー」


サクマは荷台の中に入り横になる。







時は5時。日が登り始める時刻。


「アキーそろそろワンターンに着くよー」


呼び掛けに目を開くとポロンがサクマの体を揺らしていた。


そして肝心の操縦士も流石に目を覚ましていた。


「アキ!俺が気絶してる間に起きた事はソイツから聴いた!アンタが居て助かったよ!それでだな、検問を突破する手順を説明する!」


その操縦士が声をあげる。


「まず、荷物を検査されるから何食わぬ顔で居ろ!身元の提示をさせると思うからゼプトさんから貰ったライセンスを見せろ。余計なことを喋らずに堂々としてれば問題ない。」


「そしてポロン!お前は変化が出来るんだろ?荷物に紛れてろ。」


「ふたりとも余計な事はするなよ!下手すりゃ俺含めた3人はその場で死刑だ!わかったか?」


「「わかりましたー」」


ふたり一緒に返事をする。


「良し。近づいてきたぞ、準備をしろ!」


ガラガラ…ガラ…ガラ…


検問所に近付くにつれスピードを落としていく。そして検問を担当する衛兵が声をあげる。


「少し遅いがスケール商団の者ですね?」


「はい。途中で魔物に襲われてしまいましてね。」


「…。どおりで輸送車にキズがついてる訳だ…。それでは確認を行います。」


そう言い、衛兵は荷台に向かう。


「扉が壊れてるじゃあありませんか…荷物に問題は無いんですよね?」


「はい。荷物自体は無事です。あとそれと、その中にヒトがいますが私の連れです。」


「…?1人で来ると聞きましたが?」


「なんせ荷物が多いのでそれを運び出す要員も必要な訳です。それにソイツが魔物を退治してくれたんですよ?」


「…。そうですか」


壊れた扉を開け、中へ入り視線をぐるりと回す。


「……。お前が…連れだな?身元を確認する。ライセンスを出せ。」


疑っているのか口調が少し荒い。


「はい。」


サクマはライセンスを手渡す。


「ふむ。名はアキか…何年この仕事をしている?」


「え?……。そこに…書いてあるじゃあないですか…何故聞くんです?」


「御託は良い。何年やっているんだ?」


…そんな物確認していないッ!


その時、衛兵の後ろに荷物として隠れているポロンが変化を解いた。


まさか!


そしてポロンはこっそりと衛兵がもつライセンスに書かれた登録日を覗き見る。


「どうしたアキ…早く答えろ!」


ポロンは2本の指を伸ばす。


「2年ですッ!」


「何故直ぐに答え無かった?」


「質問の意図が理解出来ずにいて……」


「……。2年なら、もう仕事に慣れてくる頃だろ?」


「はい。慣れてきました。」


「なら、この仕事は楽しいか?」


「楽しいです。」


「辛い事もあるか?」


「あります。」


「……。なぁアキ。お前は会話が下手だな。さっきから俺の言った言葉をそのまま繰り返してる。交易商団の者は自身の商品を売る為言葉巧みに話を持ちかけると聞くが?」


「あ!えと、ボクはまだ荷物の運び出しのみで営業等の商談はまだなんです。」


「………。そうだな。まだ2年ならその程度か…疑って悪かったな。」


「ゴホン。えーでは…荷物の確認を行うので、少し離れていてください。」


疑いが晴れたのか口調が丁寧になる。衛兵が奥へ進んだうちにポロンは適当な小物に変化する。サクマは荷台を降りる。


そしてあらかた調べた衛兵は荷台から出る。


「はい。確認が終わりました。門を開けるので少々お待ちください。」


その場を離れ門へと向かう。


ポロンは小声で


「ふぅーなんとかなったね。」


「アキ!出発するから荷台に乗ってくれ!」


「はい!」


よいしょと荷台に乗り込み輸送車が動きだし、前へと進み出す。開かれた門をくぐり、ワンターンへと入国する。


ある程度門から離れた時ポロンは変化を解除する。


「わー!凄い綺麗な所だね!」


まだ日が登りきっていない為ほとんどの住民は寝ている。そのおかげで、辺りをは、静かで心地が良い。


「アキ!俺は後はこの荷物を届けに行くだけだけど!お前らはどうするんだ?」


「ボクは聞き込みやらなんやらでアストロフーを探します!それでポロンは……」


視線を、ポロンに向ける。


「んーー……ぼくは……アキに着いてくー!」


「えぇ!イデアチャートはどうするの?」


「もちろんそれも探すけど…アキに着いて行きたいのー!」


「そ…そう。わかったよ…」


2人は荷台から降り、操縦席の元に行く。


「どうやらふたりで行動するんだな?俺はこの荷物を届けたら帰る訳だが、大丈夫か?」


「はい。大丈夫です。多分。」


その時サクマが何かを思いだす。


「あ!そういえばずっと疑問だったんですけど、こんな戦時中だってのに一人で輸送車走らせても大丈夫なんですか?盗賊とか、他の国の者とかいるじゃあないですか?」


「あぁ。あん時はあっさりとやられちまったが、対人戦となると俺の右に出る者はいねぇよ。お前。あのドラグノフと拳で渡り合ったんだろう?俺はそのドラグノフよりも強いんだぜぇ?」


「「おお。」」


〔おお。〕


「信じてないな?お前!まぁ俺らスケール商団はこの世に住まう全ての生命に商品をお届けする団体だ。盗賊はともかく、どこか国の人間が俺らを襲えば、そことの契約は決裂。物資の補給源が絶たれしまう。」


「そーゆー訳で、理性のある国は襲ってこないんだよ。」


「「へぇー」」


〔へぇー〕


「本当にお前ら大丈夫か?俺が帰ったらこの国の出入りは面倒臭い事になるんだぞ、ライセンスを持ってたとしても輸送車が無きゃただの人間だ。」


「「大丈夫です!」」


「そう?……まぁいいや。到着に少し遅れちまってるからな。俺は急ぐことにするよ。」


「それじゃあな!頑張ってこいよ!」


「「はい!」」


そう言い残し、操縦士は輸送車のスピードを上げだした。


「さて。ポロン。どうしようか…」


「うーん。…まずはご飯食べたーい」


「そうだね。ボクもお腹減ってるし。」


サクマは、ポーチの中身を確認する。


ある程度の食料に飲水。意外とある通貨。


うーん。この食料は日持ちするからもしもの時までとっておこう。


となると…どこかのお店で食べたい所だげと、こんな中途半端な時間に開いてるお店なんてあるのか?


「ポロン。どこか美味しいお店を探そうか。」


「うん。」


コツコツと静けさに足音が響く。辺りを見渡せば石やレンガで出来た建築物が多い。飲食店を探すがどこもまだ開店していない。


「あ!猫ちゃんだー!」


ポロンはふと見つけた猫を追いかける。それを見失わないようにサクマも駆け足になっていると、猫とポロンは路地裏に入り込んで行った。


その路地裏に入るとひとつだけ看板が出ているお店があった。


「む?飲食店かな?」


「ポロンー!こっち来てー」


「なぁにー」


猫を見失ってしまったポロンがトコトコ戻ってくる。


「ここのお店、開いてるから入ろう。」


「うん。」




続く―


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