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聖女に救われた少年は誓いを立てる  作者: たてみん
第4章 少年は誓いを立て、そして
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第40話 少年は女神様とお茶をする

気が付くと僕はぼんやりと明るい空間に一人立っていた。

ここはどこだろう?

初めて見る場所なのにどこか懐かしい気もする。

兎に角動き回って周囲の状態を確認しようかな、と思って足を出そうと思ったら自分の足が無い事に気が付いた。

それどころか手も無ければ体を見ることも叶わない。

視線だけが宙にあって周囲を見ているような状態。

何が起きているんだろうって疑問に思ったところで後ろから声を掛けられた。


「あら。お客様とは珍しい。1500年ぶりくらいかしらね」


鈴の音のように軽やかで綺麗な声だ。

振り返ってみれば、聖女様を一回り大人にしてさらに美しさに磨きをかけたような女性が立っていた。


「あなたはどうやってここに来たのかしら。

無意識に私が呼び寄せた、という訳ではないわね。

とすると、誰かに神儀の魔法を掛けて貰ったというところかしら。

今代の聖女は……あぁ、あの子ね。

なるほど。あの子なら確かに資質は十分ね。それにあなた自身も」


うんうんと一人納得する女性は実に楽しそうだ。


(あの、あなたは……?)


聞こうとして、自分の声が出ないことに気づいた。


「あらあら。意識だけ飛んできたから声とかは出ないでしょう。

でも大丈夫。今のあなたなら考えるだけで伝わるわ」


(そうなんですね。それでここはどこで、あなたはどなたでしょう?まるで)

「ここはあなたの深層意識の更に奥。いわば夢の中の夢とでも言えばいいのかしらね。

生命は根源の部分で世界と繋がっているの。だから私の居るここにも来れたって訳。

あなたは聖女の魔法によって魂だけがここに送られたのよ。

普通そんなことありえないんだけどね。ふふふっ。

わたしの名前はミューラリア・セレス・リルネリティア。長いからミューで良いわ。

あと、あなた方からは女神様なんて呼ばれているわね」

(女神様……ミュー様……)

「あら、感動して言葉にならないかしら?」

(……なんというか、ずいぶん気さくな方でびっくりしました)

「へぇ。とっても正直なのね」


そうしてころころ笑う姿は純真無垢な少女そのものだ。

厳粛な雰囲気も無ければ偉そうな感じもまるでしない。

それととても楽しそうだ。


「楽しいわ。ここに来るお客様なんて、あなた達でいう初代聖女以来だもの。

でもそう。あなたにはそんな風に見えるのね。

あなたが見ている私の姿は、あなたが思い描いたものなのよ。

人によっては老婆に見える人も居るでしょう。


さて、久しぶりのお客様だし、おもてなししないとね」


パチンっと指を鳴らすといつの間にか椅子とテーブルが用意されていた。

続いて「そのままだとお茶も飲めないわよね」と呟いたかと思うと僕はいつもの姿に戻っていた。

ただし色は白一色で全体的に透けているようにも感じる。


「さぁ、時間もあまり無いしお茶にしましょう」

「はい。って声が出た」

「そりゃあ仮の体を用意したからね。

声だって普段通りに出るわよ」

「やっぱりミュー様って凄いんですね」

「ふふんっ。もっと崇めてくれても良いのよ」


ちょっと得意気なのが面白い。

みんながミュー様のこの姿を知ったらどう思うんだろう。

そんなことを考えながら何気なく用意されたお茶に口を付けた。


「あ、美味しい。それに内側から力が漲ってくるような気もする」

「でしょ。神樹の葉と天露の実で淹れたのよ。

定期的に飲むことであらゆる面で能力を高めてくれるわ。

あなたの居た場所で言えばテンシャン霊峰の山頂近くまで行けば採れるからもし自分でも淹れたくなったら頑張って採りに行くのね」


勿論それ以外にも色々レシピはあるから、それは自分で調べてね、か。

テンシャン霊峰って確か南の国境の山脈の中でも特に高く、天に届く山って言われている山だ。

山頂は雲の上にあって地上から見ることは出来ない。

僕の力でそんなところまで行けるだろうか。


「そうね。あなたのアビリティなら頑張れば不可能では無いわね」

「あびりてぃ……ってそうだ。ミュー様。アビリティってなんなのでしょう?」

「一言で言えば人類が魔物に滅ぼされてしまわないように与えた救済措置ってところね」

「救済措置?」

「そう。詳しく話すと長くなるから割愛するけど、

あなた達の世界は1500年程前に魔物の侵略によって人類が滅びかけていたの。

そこで私が、あなた達人類、正確には魔物以外ね、にアビリティが授かるようにして生き残れるようにしたの」

「それじゃあ、『聖女』や『勇者』が魔王を倒さなければいけないというのは?」

「それらは確かに強力なアビリティだし、最初にアビリティを授けた聖女はその力で魔王を倒したわ。

だけどだからと言って私は何をしろとも言っていないわ。

今の魔王討伐については勝手に教会の人達が言っているだけよ」


そうだったんだ。よかった。

なら聖女様ひとりが無理して魔王を倒す必要も無いんだね。


そうして安心したからかな。

段々眠くなってきた。

さっき夢の中の夢って言われたのに、眠くなるなんて不思議だな。


「あらあら。

もうそろそろ時間みたいね」

「時間……?」

「まだあなたの魂ではここに長く留まる事は出来ないの。

魂が成長して慣れてこれば、もっと永く居られるんだけどね。

さて、せっかくこうして来てくれた事だし、最後に何か聞きたいこととか、願い事はあるかしら?」

「あ、それなら。

昔、父さんと約束したんです。

女神様、ミュー様を幸せにする為に、僕に出来ることはありますか?」

「あら。あらあらあらあら。

普通は不老不死にしてくださいとか、無敵の力を授けてくださいとか言うのが普通なのに。

まさか私の予想の斜め上を行くとは驚きを通り越して感動だわ。

こんなこと何千年振りかしら。

ふふっ。そうね。それなら……」


そっとミュー様が僕の耳元で囁いた。

それを最後に僕の意識は消えていった。



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