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聖女に救われた少年は誓いを立てる  作者: たてみん
第4章 少年は誓いを立て、そして
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第37話 少年は聖女の力を見る

一時は死者も覚悟しないといけないかと思った治癒ギルドも無事に持ち直すことができた。

それもこれも皆さんが頑張ってくれたお陰だ。

特に聖女様は秘薬じゃないと治せない呪いをどんどん治していっている。

やっぱり僕とは次元が違うな。


(ふらっ)


っとと。ひと段落して気が抜けたせいか、足元がふらついた。

ふぅ。流石に魔力切れか。

いくら魔力消費の少ない生活魔法とはいえ、複数を同時に連続して使い続けたらこうなっても当たり前か。

前に魔力切れを起こしたのは、確かバーラさんの「不治の病にかかった」っていう冗談(実際にはただの風邪)を真に受けて、慌てふためいた時だっけ。懐かしいな。


さて、街にあった薬草の在庫はあらかた使い切ってしまったということで、僕も他の人に混じって手当を行って回る。

そこへ聖女様からお声が掛かった。

どうやら日暮れになって魔物たちが活発になってきたらしい。

僕では魔物の撃退には力になれないかもしれない。でも現場近くで応急処置をするくらいなら貢献できるだろう。


最後に処置を行っていた人の手当を終えて僕も西門へと向かった。

そこには大勢の武装した冒険者たちが門が開くのを今か今かと待ち構えていた。


「お、カイじゃねえか」

「グッチさん。お疲れ様です」

「大けがしたって聞いてたけど元気そうで良かった」

「はい、聖女様のお陰で何とか」


顔見知りのおじさんと挨拶を交わしながらより門の近くへと向かう。

うーん、この人混みだと聖女様が向かった先を見つけるのも一苦労だな。

そう思ったところで僕を呼ぶ声が聞こえた。


「カイ君! 良かった、聖女ちゃんから聞いてたけど本当に無事だったんだね」

「ほんと、元気そうで安心したわ」

「リーリアさん、イリーナさん。ご心配をおかけしました」

「本当よ。そんな危険なところに行くなら今度からは私たちを頼ってね」

「聖女様にも叱られました。自分一人で何でもできると思うなって」

「そうね。魔物退治なら私達の方がまだまだ上だからね。

どんどんお姉さんたちを頼りなさい」

「はい、よろしくお願いします」

「と、そうだ。カイ君が来たら外壁の上に来てほしいって」

「外壁の上?分かりました。行ってきます」


外壁の上に登れば、そこにも大勢の冒険者や警備隊の人達が待機していた。

見た感じ、弓矢で武装をした人と魔導士が中心で、恐らくここから街の外の魔物を攻撃するのだろう。

そこでふと、街の外に目を向けた。


黒、黒、黒、緑、黒


太陽が地平線にほとんど隠れた今、暗いのは普通だ。

でも目に映る森は夜の闇ではなく、魔物の黒さで塗りつぶされていた。

一体何千匹の黒犬が集まっているのだろう。

1か所緑なのは黒犬と一緒に活発になっているというゴブリン達だろうか。

視線を外壁の上に戻して聖女様を探せば、ぽっかりと空いた場所に一人、聖女様が立っていた。


「来ましたね、カイ」

「はい。あの、何をしているんですか?」


聖女様は自身の周囲に膨大な魔力を展開していた。

その魔力量にも驚きだけど、それほどの魔力を持って何をするかの方が気になった。

僕の疑問に外を向いたまま顔色一つ変えずに聖女様が答える。


「聖女としての役割の一つです。

これから起きることをよく見ておきなさい。

今後もしあなたが自分は強くなった、何でも一人で思い通りに出来る、なんて驕った時に思い返すと良いでしょう。

女神様に与えられた特殊なアビリティの存在を」


スッと右腕を上げ森の一角を指さした。

その場所は特に黒く、黒い森を通り越して黒い山のようになっていた。

恐らくボス魔物がその場所に居るのだろう。

周囲の黒を吸収しながら段々と近づいてくるのが分かる。


聖女様を取り巻く魔力もより一層強く輝き、右腕に巻き付くように集まると右手の先はもう直視できない程になっていた。

聖女様が静かに、しかしはっきり響く声で呪文を唱えた。


「行きます。『ジャッジメント・レイ』」


瞬間、迸る閃光が森の黒き山へと刺さる。


カッ!!!

「うおっ!」

「きゃああ!!!」


大爆発。

森を覆いつくす程の光の爆発に両腕で顔を隠し、吹き飛ばされないように足に力を込める。

だけど実際には光のみで爆風などはなかった。

恐る恐る目を開ければ、先ほどまでと変わらず街の外は暗い森が広がっていて特に変わった様子はない。

いや、違う。

暗い森には先ほどまでの黒犬たち魔物の気配がほとんど消えていた。

恐らく木の影などで直撃を免れた魔物以外が一掃されたんじゃないだろうか。


これが女神さまから授けられたアビリティの力。

まさに次元が違うとしか言いようがない。


「ふぅ。後はお願いしますね」

「はっ!総員戦闘準備。

ボスさえ居なくなれば恐れるに足りぬ。

残党を狩りつくせ!」

「「おおおおぉぉ!!!」」


門が開き待機していた冒険者と警備隊の混成部隊が街の外へと飛び出していく。

その光景を見下ろしながら僕はふらつく聖女様の元に向かった。


「大丈夫ですか?」

「ええ、ありがとう」

「それにしても、流石聖女様ですね。あれだけいた魔物が一瞬で壊滅してしまいました。

この力があれば魔王だって倒せそうですね」

「いいえ。残念ながら私一人では魔王を倒すことも出来なければ、全ての人を救うことも出来ないのです。

だから人は手を取り合って共に困難に立ち向かうのです」

「そうなんですね」


それほどまでに魔王が強い、というよりも人ひとりで出来ることには限界があるってことなんだ。

聖女様はそれを伝えるために僕をここに呼んでくれたんだろう。



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