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聖女に救われた少年は誓いを立てる  作者: たてみん
第4章 少年は誓いを立て、そして
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第36話 治癒ギルドは大車輪

今回は治癒ギルドのマスターの視点です。

聖女様が連れてきたあの少年はいったい何者なのだろうか。

それまで年相応の子供にしか見えなかったのに、ギルドに着くなり人が変わったように我々に指示を出し始めた。

今は調合室で筆頭薬師を従えながら薬草の調合を行っている。

あと、『トリアージ』をしてほしいと軽々と口にしていたが、正しく行えるのは私を含め5人しかいない。

こんな時に治癒魔法に頼り切りになっていたつけが回ってきたか。


なおトリアージというのはつまり、瞬間的に患者の状態を確認し、緊急度によってランク付けを行う作業だ。

バーラ様が始動したこの手法は、それまで身分によって治療の優先順位を決めていた医療従事者たちを震撼させた。

これによって、現場での死亡率は1/5になったという報告すらある程だ。


「ギルマス、緊急治療用の薬をお持ちしました!」

「早いな。よし、班長以上で手分けして赤い札を付けた患者に投与しろ。慎重にな!」

「止血剤が出来たそうです」

「黄色い札を付けた札の患者だ。手の空いているものならだれでもいい。急げよ」

「体力回復薬も出来ました」

「それは重傷者と呪いが酷い患者優先だ」


まさに戦場の様相の治癒ギルド内。

ここ最近は患者も少なく、一般職員が治癒魔法を掛けるだけで治療が終わる毎日だった。

そのせいでだいぶ勘が鈍っているのを実感する。

他の職員も同じようでペース配分を間違えて魔力切れでフラフラしている者が何人もいる。


「くそっ、呪いのせいで治癒魔法の効きまで悪いのか」


解呪魔法が先か?だがあれは消費魔力が多すぎる。

聖女の使う神聖魔法を待つ方が効率的だ。

ならばと自分も緊急治療用と言われた薬を受け取り、患者の元に詰めかける。

飲みやすいようにと液状になったそれを患者の口に少しずつ流し込めば、みるみる内に顔色が良くなっていく。


「信じられん」


それまで手の打ちようのなかった致命傷一歩手前の傷口も目に見えて塞がっていく。

何という回復速度だ。これでは上級回復ポーションと同等かそれ以上だ。

しかしそれが下級ポーションで使うような薬草で次々と作られていくという。

バーラ様はいったいどんな教育を施したというのだ。

そうして私達が到着してから1時間後、ようやく聖女が到着した。


「お待たせしました。ゴブリンの襲撃の報せのせいで向こうを出るのが遅れました」

「いえ、ご助力感謝します」


なるほど、私たちと入れ違いに報告が入っていたようだな。

私たちは間一髪それに巻き込まれずに済んだというところか。

さて、来て頂けたなら聖女の神聖魔法をあてにさせて頂こう。


「傷の治療は我々で何とかします。

聖女様は呪いの重い者の解呪をお願いします。

向こう側に集めてありますので」

「分かりました。ところでカイ、あの少年は?」

「向こうで薬の調合をして……な、なんだあれは!?」


視線の先、第1調合室では嵐が吹き荒れていた。

何を言っているのか自分でも分からなくなりそうだが、部屋の天井付近を薬草と思われる緑の風が渦を巻き、それが水を含んで雨となって部屋の中央の5つの大鍋へと注ぎ込まれていく。

およそ室内で起きえない現象ばかりだが、あれは少年の魔法か?まさか魔導師だったのか。

更におかしいのはその部屋に薬草を運んでいる職員も、出来た薬を運び出す職員も、それが当たり前かのように平然と作業を続けていることだ。

少年の助手に付けた者たちも一心不乱に鍋をかき混ぜている。

つまりは少年が来てからずっとあの状態だということなのだろう。


「彼は何者なのですか?」

「さぁ。私も先日死にかけていた所を拾っただけですから。

それよりも、私たちは私たちの出来ることをしましょう」

「そ、そうですな!」




気が付けば時刻は夕方に差し掛かっていた。

負傷者の治療も重傷者は無事に全員命を取り留めることが出来、呪いについても重めの風邪程度に治まっている。

あとは魔力の回復を待って治療をしていけば大丈夫だろう。


「お疲れ様でした、聖女様。まだ治療すべき人は残ってはいますが、こちらはもう私たちだけで十分です」

「そうですか。ですが今夜にもまた魔物たちは襲撃してくるでしょう。

今度は私も迎撃に参加しますが、それでも多くの負傷者が予想されます」

「でしょうな。

ですがあの薬があれば、それも乗り越えられるでしょう」


大鍋3つ分残った薬。

それを作った張本人は加工する薬草が無くなったと言って、他の職員と一緒にけが人に包帯を巻いたり水を飲ませたりしている。


「これを乗り越えたら彼にはどう感謝を伝えれば良いでしょうね?」

「さぁ。お金とかには頓着しなさそうですけど」


と、そこへ警備隊から伝令が走りこんできた。


「報告します。魔物のボスが再び動き始めたとのこと。

聖女様は至急西門へとおいでください」

「分かりました。

カイ! 区切りの良いところで切り上げて西門へ来るように」

「はい、1分で行きます」


聖女はカイに一声掛けると、伝令と共に走り去っていった。

彼女もつい先ほどまで解呪の魔法を使っていてかなり疲弊しているはずなのにな。

お互いここからが正念場ということだろう。


「みんな、もうひと踏ん張りだ。若い奴らに負けられないぞ」

「「はい!」」



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