第34話 会議で少年は打開策になる
落ち着いたところでのどが渇いたので、用意してもらっていたお茶を手に取った。
「あ、そのお茶は」
「?」
メイドさんが何かを言おうとしてたけど、気にせず口に含んだ。
うーん、にがい。
なるほど。多分、苦く入れてあるから気を付けてって言おうとしてくれてたんだ。
「この家の人は苦いのが好きなんですね」
「いえ。申し訳ございません。このお茶は冷めるとひどく苦くなってしまうのです」
「あ、苦くしたい訳じゃないんですね」
僕がそう言うと、メイドさんをはじめその場に居た全員が首を傾げた。
何か変なことを言ったかな?
「これって、キョクロ草のお茶ですよね?
茎を取り抜いて、ぬるま湯で淹れれば苦くなくなりますよ。それにその方が薬効も高いですし」
「そうなのですか?」
「はい。あとケンマイの実も一緒に入れるとなお良いですね」
「そうだったのですね。早速料理長に試してもらうことにします」
メイドさんはどこからともなく取り出したメモ帳にササっと今の内容を書き記していた。
かと思えば、さっとどこかにしまった。
凄いな、これが噂のメイドっていう人たちなんだ。
そんなことを思っていたら聖女様が難しい顔をしながら僕に尋ねてきた。
「ねぇ、カイ。あなた、ずいぶんと薬草について詳しいわね。
秘薬の件もそうですし、今のお茶に使っている草についても」
「村に住んでた頃に色々と教わったお陰です」
「村?ということはこの街の生まれじゃないのね。いつからこの街に?」
「2年位前からです」
「そう……」
僕の言葉を聞いて聖女様は再び考え出した。
何か気に障ることがあったかな。
キリっと顔を上げた聖女様は後ろに控えていたメイドさんに指示を出し始めた。
「ミレルさん。伯爵様に急ぎ取次ぎをお願いします。
呪いの件でお伝えしたいことがあると言えば伝わります」
「は、はい!」
メイドさん(ミレルさん?)が足早に部屋を出ていく。
「カイにはこれから街の皆を救うために力を借りたいのだけど、お願いできるかしら」
「はい、僕に出来ることなら」
「ありがとう。ではまず付いてきてください」
そう言って部屋を出ていく聖女様とお付きの女性に続いて僕も部屋を出た。
なんだかよく分からないけど、大事みたいだ。
そうして向かった先はこれまた立派な部屋だった。
部屋の中央に大きな机があり、それを囲むようにいくつも椅子がある会議室?だった。
今は部屋の中に6人程が居て、全員が何か行きづまったような深刻な顔をしていた。
と、その中に一人だけ見知った顔があった。
「あれ、おっちゃん」
「ん?カイか。なぜこんなところに?」
「僕は聖女様のお手伝いです」
「そうか」
それだけで納得するおっちゃん。
というか、おっちゃんって冒険者ギルドのギルドマスターになったんじゃなかったっけ?
ボス魔物が出たからギルドも忙しい筈なんだけど大丈夫かな。
僕の疑問を他所に、さっと空いている席に座った聖女様は他の人達が注目する中、話し始めた。
「皆様。会議中に割り込んでしまって申し訳ございません。
今回のボス魔物の呪い対策が見つかりましたので、急ぎお伝えしに来ました」
「なんと!?」
「あの呪いさえ防げれば被害は1/10にはなりますぞ!」
聖女様の言葉で一気に騒然となったものの、聖女様が手を叩くとすぐに静かになった。
「皆様、以前この魔物が出た時の惨状については知っているかと思います。
今回、この街で起きている呪いの被害があまりに小さいとお気づきでしょう。
その原因を最初、魔物の力が弱いからではないかと考えていましたが、そうではありません。
この街の住民は知らない内に呪いに対する抵抗力を上げる行動を取っていたのです」
今度はお互いに顔を見合わせて首を振りあうおっちゃん達。
特に心当たりはない、というところだろうか。
そんななか、おっちゃんが何かに気が付いたように僕の顔を見た。
「まさか、このお茶か?確か薬草から煮だしたものだと聞いたが」
「はい。正確にはお茶以外にも食事にも薬草を使っているのではないでしょうか」
「うむ。確かにここ1年くらいで食に深みが増したので何か変えたのかと聞いたことがあるが、確かに最近流行の薬草を使うようになったと言っていたな」
「うちもです」
「わしは街の食堂や酒場に行くことが多いが、そこでも肉の臭みが無くなったりスープの味が良くなっていたな」
「使われているすべての薬草がそうだとは限らないでしょう。
ですが、そのうちのどれかが今回の呪いの耐性を付けてくれたのだと思います」
「なるほど。そこでカイの出番という訳か。
なにせ、薬草を食事に入れるのを広めたのは、そこに居るカイだからな」
「なんと!?」
にやっと笑うおっちゃんの言葉を受けて、今度は僕に全員の視線が集まった。
「あ、えっと。そう、ですね。
そもそも健康であれば病気になりにくいですし、そのお茶に使われている薬草には病気や呪いに対する抵抗力を高める効果は確かにあります。
ただ、お茶や料理に使った場合、その効果はかなり薄まるはずです」
そうじゃなかったらシェリスさんが呪いに罹る事もなかったし。
それに病気はともかく、呪いの場合、一度罹ってしまうとこの薬草では治せない。
あくまで罹りにくくすることと、症状を和らげるのが精いっぱいだ。
だから大した意味はないんじゃないかって思ってたんだけど、皆の意見は違ったようだ。
「つまり正しい処方をすれば、相応の効果が期待できるという事だな」
「それさえあれば呪いに対する恐怖を払拭出来ますな」
「きみ。確かカイ君というのだったな。その処方を治癒ギルドに提供してくれ。
もちろん相応の対価は支払おう」
「は、はい」
「よし、治癒ギルドは早急に薬の作成に取り掛かる。他の対策は任せるぞ。
さぁカイ君、一緒に来てくれ」
勢いよく立ち上がると僕の方に足早に近づいてくるおじさん。
ちらっと聖女様を見ればこくりと頷くので、僕はその人と一緒に外へと向かった。




