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聖女に救われた少年は誓いを立てる  作者: たてみん
第2章 小さな少年は無理をする
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第23話 飛び出す少年は襲われ続ける

無事に完成した秘薬を竹筒に入れしっかりと栓を閉める。

竹筒の良いところは土瓶などと違って多少衝撃を与えても壊れたりしないことだ。

以前、錬金術師で扱っているポーションの多くが土瓶に入れられているのを疑問に思ったけど、街では土瓶が一番安価で手に入りやすいのと、遠く離れた相手に投げつけて、土瓶を割りながら中の液体を相手にかける為にわざと割れやすいように作ってあるって聞いたことがある。

もちろん飲用のポーションは割れにくい土瓶を使っているそうだ。


「よし、これで傷の手当ても完了っと」


手足の引き裂かれた傷に傷薬を塗り込み、包帯替わりに薬草を巻き付けておいた。

これで走っても傷口が開いたりはしないだろう。

後の問題はここからどうやって脱出するかだけど。

穴の外を確認すれば幸い雨はもう止んでいるみたいだ。

でも手元にはもう催眠薬はほとんど残っていない。

それにここで焚いたとしても横や下に居る魔物には効果はないだろう。

……なら、強行突破しかないか。

穴の外は、まだ静かだ。

雨は止んだとはいえ空には雲が残っているのだろう、月明かりもない。

この魔物が光を見て獲物を探すタイプかは分からないけど、行くなら今しかないな。


「はっ」

ドゴッ

「キッ、キキーッ」


穴の入り口の壁を蹴り開けると魔物たちの声が響き渡る。

案の定、魔物たちは僕が穴から出てくるのを待ち構えていたな。

穴の外に僕の頭が出た瞬間上下左右から近づいてくる足音が聞こえる。

僕は穴の縁に足を当てると、思いっきり飛び出した。


「キキキッ!?」


流石の魔物たちも僕が宙に飛び出すとまでは思っていなかったようだ。

何匹かはつられて岩壁から手足を離してしまい、勢いなく落ちていく。

他の魔物たちも本来なら下に落ちるはずの獲物(僕)が全然落ちないので恨めしそうに見送っていた。

ただ、僕もそんなに余裕がある訳じゃあない。

何せ『飛行』や『浮遊』といった上級魔法で飛んでるんじゃなくて、ただの生活魔法の『軽量化』と『追い風』(自分の後ろに風を当てる魔法)を併用してそれっぽく見せかけているだけなのだ。

つまり、時間が経つにつれどんどん落ちていくわけで。


ガサガサガサッ

「グエェーッ」

「おっと、ごめんね」


岩壁からは無事に離れられたけど、森の木々に突っ込んだ。

途中、鳥の巣があったみたいで、思いっきり怒られてしまった(言葉は分からないけど)

ただそれらのお陰で何とか無事に地上に降り立つことが出来た。

後ろを振り返れば「キーキー」と岩壁の魔物たちが叫んでいる。

あいつらは岩壁からそんなに離れようとしないから、多分振り切れる。

僕は魔物たちの叫び声を背中で聞きながらその場を後にした。


……

…………

………………


どれくらい走っただろうか。

夜の森は暗く静かだ。更に今夜は月も出ていないので『夜目』の魔法を掛けなければ自分の手も見えない暗さだ。

こうして考えると様々な生活魔法を教えてくれたバーらさんには感謝しかない。

きっと僕が独り立ちした後もこうして森を探索することを考えて、生活魔法や森での生き方など教えてくれたんだろう。


「……!!」


夜目のお陰で薄暗く見えていた景色が黒く塗りつぶされていく。

それはつまり、そこが暗いのではなく黒い事を意味している。


(って、雨に打たれたから魔物避けの効果が弱まってるんだ)


何て初歩的なミスを犯してるんだとバーラさんが聞いたら半殺しにされるレベルだ。

だけど後悔してる暇はない。

慌てて横に飛ぶと黒が僕に向けて飛んできた。


「ッ!」

「くっ」


避け切れずに腰のあたりが切り裂かれる。

襲ってきた黒の正体は考えるまでもない。

昨日の日中に遭った黒犬だ。

本来の黒犬はこうして夜の闇や木の陰に紛れて襲ってくる魔物だ。

気配の消し方も飛び掛かってくる速度もまるで別物だ。

今の僕では太刀打ち出来ないだろう。


(閃光石は、7つ)


彼らのテリトリーを抜けるにはギリギリ足りないかもしれないな。

でもやるしかないか。

僕は1つ目の閃光石に火を入れながら全力でダッシュするのだった。


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