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聖女に救われた少年は誓いを立てる  作者: たてみん
第2章 小さな少年は無理をする
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第22話 油断した少年は集団リンチに遭う

僕の目の前には今、切り立った岩壁がある。

見上げればギーギーと鳴く魔物が岩壁をまるで平地であるかのように走っているのが伺える。

この魔物のいる崖こそが僕の求めていた秘薬の材料がある場所だ。

昔、村に住んでいた頃に一度だけバーラさんに連れられて村近くの崖に採取しに行った事がある。


(あの時はバーラさんがひょいひょい崖を登っていてびっくりしたっけ)


ちょっと懐かしく思いながらその時言われた事を思い出す。


『いいかい。秘薬に使うガルクの花が咲いているのはこうした切り立った崖だ。

ただ当然どこの崖にも咲いている訳じゃあない。

見分ける一番手っ取り早いのはあのキーキー煩い魔物が居ることを確認すればいい。

奴らはなぜかガルクの花の咲く場所にしか居ないからね』


そして安全に採取するためにはまずは魔物を何とかしないといけない。

その為にしたことと言えばこれだ。

背嚢から睡眠薬の粉と粉にする前の乾燥させた薬草を取り出して崖下に盛り、火を付ける。

すると催眠作用のある煙がモクモクと岩壁に沿って立ち昇っていく。

次第に煩かった魔物たちが静かになって、その姿を現さなくなった。


(よし、頃合いだな。『軽量化』)


本来重い荷物を運ぶときに使う魔法を自分にかけて身軽にした状態で岩壁に足を掛けた。

ん、よし。行けるな。

問題なく壁を登れることを確認した僕は急ぎ壁の隙間に咲いている筈のガルクの花を探した。


(……あった。良かった)


見つけた花の茎を手早く切り取り、次を探す。

この花は切り取ってから1時間もせずに枯れてしまう。

だから十分な量を採ったらその場で加工しなければならない。

秘薬を作るのに最低限必要なのは3本。

もしかしたら2回分必要かもしれないから6,7本採って加工すべきだろう。


そうして5本目を採り終えた時、僕の頬に水滴が落ちてきた。

上を見上げればぽつぽつと雨が降り始めていた。


(まずい!)


雨で岩が濡れると滑りやすくなって登りにくくなる。

そして今も崖下で焚いている睡眠薬の煙が消えていく。


『この魔物は水を嫌う。どんなに深く眠っていようと雨に打たれると途端に起きて狂暴になるから、必ず晴れてるときに採るんだよ』


脳裏にバーラさんの声が聞こえた気がした。

それを肯定するようにそこかしこでキーキーと鳴き声が聞こえてくる。

まだ僕の存在は認識できていないだろう。急げ。せめてもう一本。


(あった。……くあっ!!)


6本目を摘み取った僕の手が切り裂かれた。

顔を向ければ、声の正体である魔物と目が合った。


「キキキキキッ」

「「キキーッ」」


目の前の魔物の声に呼応するように複数の声が岩壁に響く。

下を見ればそれなりの高さなのと、既に数匹の魔物が先回りして待ち構えている。


「キーッ」

「キーッ」「キーッ」

「キーッ」「キーッ」「キーッ」


魔物たちは僕の腕や足を狙って引っ掻いては離れるのを繰り返す。

こっちは岩壁に何とか踏みとどまっている状態なので碌な防御も反撃も出来ず、次々と傷を増やすばかりだ。

幸いどれも浅い傷なのですぐ死ぬことは無いけど、このままだと手足に力が入らなくなって崖下に転落するだろう。

それにのんびりしていたら折角摘んだ薬草がダメになってしまう。

そうなる前に、どこか逃げ込める場所は……あった!


「グキキッキキー」


魔物たちがまともな抵抗も出来ない僕を見て笑っている。

だけど、それは余計な油断だ。

僕は傷口が開くのを無視して両足に力を籠めると、何とか壁に出来た窪みへと飛び込んだ。


「『穴掘り』」


地面を掘るだけの単純な魔法だけど、慣れれば岩だって削れる。

それを穴の奥に放ってスペースを確保しつつ、掘れた土で急いで入り口を塞ぐ。


「「ギーギー」」

「くっ、この」


塞いだ隙間から魔物たちが手を突っ込んできたので、ナイフを抜いて応戦する。

すると分が悪いと思ったのか、攻撃の手が止んで少し離れたようだ。

気配を探れば僕が出てくるのを虎視眈々と狙っているのが分かるけど、時間は稼げたみたいだ。

良かった。

なら今のうちに傷の応急処置を、いや。先に秘薬作りだな。


背嚢から秘薬を作るために用意しておいた竹筒と小鍋と摘み取ったガルクの花を取り出す。

そして一度自分の両腕を良く拭いてからぐっと力を入れる。


「いっつぅ~」


腕から勢いよく流れでた血を小鍋に注いでいく。

生き物の血液は多量の栄養素と魔力を含んでいるから十分に触媒になる。

そこにガルクの花を入れて、魔力を送りながらじっくりと混ぜ合わせていく。


「『浄化』『分離』『抽出』」


錬金術師のベルさんに錬金術で使う魔法の手ほどきもしてもらったから、薬作りが捗る。

これなら期待以上に上質な秘薬が作れそうだ。

鍋の中の薬液はだんだんと鮮やかな色へと変化していった。

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