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聖女に救われた少年は誓いを立てる  作者: たてみん
第2章 小さな少年は無理をする
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第20話 少年の不安があたる

翌朝。

妙な胸騒ぎと共に起きた僕は、昨日の件はどうなっただろうと心配になりつつも1階に降りて女将さんに挨拶した。


「おはようございます」

「おはよう。ん?ちょっと顔色が悪いね。

昨夜も浮かない顔をしていたし、何か心配事かい?」

「はい、ちょっと……」


そう言いかけたところでバタンッと勢いよく玄関扉が開けられ、小さな人影が飛び込んできた。


「女将さん、カイ兄ちゃんはいる!?」

「誰かと思えばホルルか。何かあったのか?」


酷く焦った顔をして入ってきたのは街の錬金術師の息子のホルルだった。

この子とはこの街に来て直ぐに知り合い、僕自身薬草を扱うことが多いので何かと錬金術師のお店に行くことが多いので、時々街の中で遊んだりしている。

普段、怒ったり焦ったりすることのない優しい性格の彼が、ここまで切羽詰まっているのは何か事件が起きたとみて間違いないだろう。


「姉ちゃんが大変なんだ!すごい熱で、苦しそうで。

僕じゃどのポーションが効くのかも分からないからとにかく来てよ!!」

「シェリスさんが?分かった。直ぐ行こう。

女将さん、行ってきます!」

「あいよ。行っといで。私も支度が出来たら後から行くから……ってもう行っちまったか」


宿を飛び出した僕たちは全速力で錬金術師の店に向かった。


「ホルル。ベルさんは居ないの?」

「お母さんは一昨日から出掛けてていないんだ。明後日にならないと帰ってこないよ」

「それはタイミングが悪かったな。っと着いた」

「姉ちゃんの部屋は2階だよ。

姉ちゃん、カイ兄ちゃんを連れてきたよ。しっかりして!」


シェリスさんの部屋に入ると、ベッドの上で苦しそうにしているシェリスさんが居た。

シェリスさんは意識はあるようで、僕たちを見て体を起こそうとする。


「カイ君。こんな、朝早くに、ありがとね」

「無理しなくていいよ」


シェリスさんを寝かしつけておでこと手首に手を当てると、凄い熱だった。

脈も乱れててかなり辛いのが分かる。

この症状は風邪じゃないな。かといって近い病気も思い当たらない。

ともかく熱を下げないと。


「ホルル、桶とタオルを持ってきて」

「うん!」


慌てて飛び出すホルルを見送ってシェリスさんに質問を投げる。


「体調が悪くなったのはいつからか分かる?」

「昨日の夜から、かな。ポーション作りをしてる最中に気分が悪くなったの。

その時は時々ある毒草が混じってたんじゃないかと思って一晩寝てれば大丈夫かなって思ってたんだけど」

「ポーション作り、か。その時の材料はまだ下に残ってる?」

「うん、あるはずよ」


ならその毒草を調べれば解毒ポーションもどれを使えばいいか分かるはずだな。


「兄ちゃん、持ってきたよ!」

「よし『冷水』。ホルルは濡れタオルを作ってシェリスさんのおでこに僕は調合室を見てくるからこっちは頼んだよ」

「分かったよ」


その場をホルルに任せて1階に向かう。

調合室の扉を開けた僕は、流れ出てくる臭気に慌てて口と鼻を抑えた。


(この臭いは間違いない)


昨日森の中でシミの付いた薬草を焼き払った時と同じ臭いだ。

多分、昨日か一昨日に納品された薬草の中にそれが混じってたんだろう。

僕は極力息を止めながら薄暗い部屋の中へと踏み入れる。


(あった。やっぱり。っ!!)


シミの付いた薬草の切れ端を見つけた僕は、背後から何かが纏わりつく感覚に襲われて、慌てて振り払いながら周囲を警戒する。

……何もいない?

いや、これは。まさか黒犬!?

実体はない。けど、周囲を取り巻くこの濃密な気配は間違いなく昨日の黒犬たちと同じだ。

僕は急ぎ調合室を出ると扉をしっかり閉じて2階へと戻った。


「兄ちゃん。どうだった?」

「……あぁ。シェリスさんの言う通り、調合室の中は毒素が充満してた。

だからホルルは絶対に調合室に入っちゃだめだよ。お母さんが返ってきても無暗に入らないように伝えるんだ。

「う、うん。分かったよ」


流石錬金術師の息子だ。毒の恐ろしさはよく分かってるんだろう。

神妙に頷くホルルと席を入れ替わって、改めてシェリスさんの容態を確認する。

ああ、なるほど。

さっきの事と合わせるとこの病気の原因ははっきりした。


「ホルル、落ち着いてよく聞いてくれ。

シェリスさんのこれは普通の病気でも中毒でもない。呪いだ」

「呪い?」

「そうだ。調合室の毒素からは魔物の気配がした。

そして最近、森に特殊な魔物が出たんじゃないかって噂がある。

多分これはその魔物が森の薬草に仕掛けた呪いだ」

「じゃあ、その魔物をやっつければ治る?」

「そうかもしれないけど、断言は出来ない」


呪いには、元となる魔物が居なくなれば解消されるものと、ずっと残り続けるものがある。

熟練の神官であれば見分けがつくのかもしれないけど僕には無理だ。

そして。


「そして普通のポーションでは呪いは治せないんだ」

「え、それじゃあどうすればいいの!?」

「落ち着け。ポーションじゃ無理だけど、呪いを打ち破る特殊な薬なら知ってる」

「じゃあ姉ちゃんは助かるんだね!!」

「ああ、そうだ。

僕は今からその薬の材料を取ってくる。戻るのは明日の昼過ぎになると思う。

だからホルルにはそれまでシェリスさんの看病を頼むな」

「うん、任せて」


力強くうなずくホルルの頭を優しく撫でてから僕は錬金術師のお店を後にした。

さぁ、急がないと。

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