第17話 ある日少年は森の中
街を出た僕は街道を逸れて北西に走る。
街の東側は草原が広がっていたり小川が流れていたりするが、西側は街道を逸れれば1時間と歩かずに森に当たる。
更に奥に行けば切り立った崖や山など、容易に進めない場所も多い。
まぁその分、生きている動植物も豊かだから採取にも狩猟にも適しているんだけどね。
ただ同時に魔物の発生頻度なども上がるし、ダンジョンや魔物の巣も多くなるから警戒が必要だ。
とは言っても、僕が普段通う場所ならそんなに魔物も多くはない。……はずなんだけど。
「ギギッ」
「え、また?それなら生活魔法『熱水』!からの、えいっ!!」
森の中を徘徊しているゴブリンを見つけた僕は、背後から近づきつつゴブリンの頭の上に沸騰直前の熱いお湯を生み出して混乱させると、その隙に首の後ろをナイフで一突きして絶命させる。
「ふぅ。今日だけで18匹目。随分多いな」
普段なら5匹前後が普通で、帰り道も合わせても10匹居たら多い方だ。
そういえば最近になって魔物の活動が活発になってきたってミーミィさんも言ってたっけ。
一度足を止めて周囲の気配を確認する。
「……うーん、かなり居るな」
10メートル圏内には居ないものの、それより遠くの音まで拾うとゴブリンと思われる足音だけでも30匹は居る。
これはリーリアさんの誘いを受けた方が良かっただろうか。
いや、村を出た時から独り立ちするって決めたんだ。
これくらい自力で解決しないと。
そうと決まればここで立ち止まっている必要はない。
慎重にかつ手早く採集を済ませてしまおう。
そうして3時間ほど、僕は極力魔物に見つからないようにしながら薬草の採集を進めていった。
しかし、順調に動かしていた手をビッと止める。
「これは……」
伸ばした手の先にあるのは普段回復ポーションの材料にも使われる薬草だ。
ただしその葉っぱの所々に黒いシミが出来ている。
「魔物の血が付いてるだけ、じゃない。
多分、意図的に付けられたんだ」
その証拠に周りに目を向ければ少しだけ開けたそこには、同じように黒いシミが浮かんだ草がある。
単純に傷を負った魔物がここを通っただけなら、黒いシミはその魔物の通った道に連続してあるはずだ。
だけど実際には縦横無尽に、いや、まるで何かの模様のようにつけられていた。
このシミが一体誰がどんな目的で付けていったのかは分からないけど、残しておくと危険な気がする。
僕はこういうの専門じゃないから分からないけど、錬金術師のベルさんなら分かるかもしれない。
なので1つだけ回収して慎重に布袋に入れておき、残りは見える限り全て刈り取る事にした。
「さて。刈り取ったのは良いけど、ここに放置もマズいよね。燃やしてしまった方が良いかな」
そう思って刈った草に着火用の干し草をセットして『発火』魔法で火を付ける。
後から思えばこの行動が間違いだった。せめて森を出てから燃やせば。
だけどその時は周りの森に延焼させない事だけ気にして火を見ていた為に気づくのが遅れてしまった。
「「グルルルッ」」
「なっ。黒犬!?」
木の陰から抜け出すようにして現れる魔物。
全身が真っ黒な毛で覆われていることと爪や牙が太く長い事を除けば普通の中型犬のような姿だ。
「なんでこんな時間にこんなところに?」
普段はもっと森の奥深いところにしか出てこないし、事実今まで見たことは無い。
それなのにここにいるのは、原因として考えられるのはこの黒いシミ、が燃えた時に出てる煙か!
慌てて『冷水』で火を消したけど既に遅く、僕の周りを50匹以上の黒犬が取り囲んでいた。




