第15話 はじめて少年は祝福を受ける
受けていた依頼を全て完了させた僕は、報告の為に今日3度目になる冒険者ギルドの扉をくぐった。
ギルドの中は早朝と昼に来た時に比べて大勢の人で賑わっている。
周りを見渡してみると僕とそう歳が変わらない子供から白髪混りの壮年の人、着ている装備も様々だ。
この人たちが皆、僕の先輩冒険者って事なんだろうな。
今は2箇所に増えた受付には報告待ちの人達が列を作っている。
って、違った。
よく見たら受付をしている職員は3人居る。ただ列が2列ってだけで。
僕はなぜか空いている受付へと向かった、んだけど、周りからの視線が凄い。
「あ~、気にせずさっさと来い」
周りを気にしながら歩いてた僕に受付に居るおっちゃんが手招きしてきた。
「まったくこいつらと来たらしょうがねえ奴らばっかだ」
ぶつぶつと言うおっちゃん以外の受付には20歳前後の綺麗なお姉さんが居た。
どうやら皆、というのは語弊があるかな。男性冒険者はそのお姉さん目当てみたいで、応対してもらってる男性がちょっとだらしない顔をしてる。
ただ女性の冒険者もあっちに並んでるのはなんでかな。
まぁいっか。
「こんばんは。依頼の報告に来ました」
「「おおぉぉ~」」
「すげぇあのガキ。ゴルマンさんと普通に話してやがる」
「俺今でも怖くて目ぇ合わせられないんだけど」
え、皆に見られてた理由ってそれなの?
別におっちゃんはそんなに怖くは……ない、よね。うん、農家のグンズさんに比べたら普通だと思う。
周りの声が聞こえたのか、おっちゃんもふんっと鼻を鳴らして憮然としている。
「ったく、腑抜け共が。ほら、依頼票を持ってきてるんだろ?出してみろ」
「はい。これです」
「どれどれ。ほぉ、評価SとAか。ベルの嬢ちゃんに随分気に入られたみたいだな」
「あ、どうやら生活魔法が役に立ったみたいです」
「そりゃ良かったな。
さて、今日の達成報酬を渡す前にだ。
これでかなり受けられる依頼が増えたからな。明後日以降の依頼もやる気があるなら決めておきな」
そう言っておっちゃんがバサッと依頼票の束を置いた。
「あれ?今朝は4つしかないって言ってましたよね?」
「ああ。だから増えたんだよ。
こっちだって初見の奴に何でもかんでも紹介はしてやれん。
運搬の依頼を出して荷物を盗んだ、何てことになったらギルドの信用問題だからな。
今日1日で達成した依頼の結果を見て、お前なら任せても大丈夫と思った結果がこれだ」
そう言われると、目の前の紙の束に重みを感じると共にうれしくなった。
これが信頼の量ってことなんだよね。
僕ならきっと任せても大丈夫だって思ってくれたってことだよね。
「分かりました。じゃあ、これ。引き受けます」
そう言って依頼票を受け取ろうとした僕をおっちゃんが慌てて止めた。
「待て待て。誰が全部やれと言った。せめて内容を見てからにしろ。
依頼の中には明日の農場みたいに一定期間拘束するものもあるし、急ぎの依頼、定期的に発生する依頼、割に合わない依頼だって混ざってたりする。
そういうのもきちんと見分けられる目を養うのも冒険者に必要な事だ」
「はい、ごめんなさい」
そうだよね。嬉しくなって考えずに動いちゃった。
改めて依頼票を確認していく。
まずはおっちゃんの言っていた通り、急ぎの依頼を取り分けていく。
「じゃあ、これで」
「それでも4枚か。あーなるほどな。確かにお前なら無理なく達成できるだろう。
よし、これで後はお前からは特に要件は無いよな。
じゃあ待たせたな。これが今日の依頼の達成報酬だ」
おっちゃんがお金が入っているであろう皮袋をカウンターに置いたので、中身を確認する。
えっと、大銅貨が1,2,3,4……9枚。それに何故か銀貨が1枚入っていた。
「あの、ずいぶん多いみたいなんですけど。依頼票にあった報酬額は合計大銅貨8枚ですよね?」
「ああ。そうだな。……って、お前計算も早えなぁ。っとそれは良いとして。
残りは錬金術師のベルからSランク評価の追加報酬として大銅貨1枚。
あと、午前中の不動産屋が居ただろう。お前の見つけたチスイ草のお陰で不良物件を売らずに済んだって事で、銀貨1枚を追加してくれたって訳よ」
「なるほど。そうだったんですね」
嫌な雰囲気の人だったけど、案外良い人だったのかも。
皮袋を閉じて手に持つとそんなに重くない筈なのにずっしりと手ごたえがある。
感慨深く思いながら背嚢へと仕舞っていると、おっちゃんが周りに向けて声を張り上げた。
「よぉみんな!!
ここにいる少年カイは、今日初めて依頼を達成した。
これからは俺たちの仲間だ。
皆で新たな仲間の誕生を祝おうじゃねえか!!」
「「おおおおぉ!!!」」
「え、え?」
テーブルの方では飲めや食えやの大騒ぎだ。
突然の事態にびっくりしていると、次々と周りの人たちが声を掛けてきた。
「よくやったな、坊主」
「これからよろしくね」
「カイっつったか。お前は俺達全員の弟みたいなもんだ。
何か困ったことがあったらいつでも言えよな」
「あ、はい。ありがとう、ございます」
戸惑いながらお礼を言ってると、知らないおじさんがしゃがんで目線を合わせながら僕の頭に手を置いた。
うーん、やっぱりここの人達は頭に手をのせてガシガシするのが習慣なのかな。
と思ったらおじさんが酒臭い声で話しかけた。
「驚かせて悪いな。
冒険者なんて荒くれものの集まりだし、実際腐った奴はいる。
特に腕っぷしだけでDランクになった奴とかな。そういうやつに限ってランクアップと共に偉くなった気で道を踏み外す。
だけど間違えちゃなんねぇ。
俺たちは俺たちなりに秩序を持って協力して頑張ってるんだよ。
それにランクなんてのは所詮役割分担なわけよ。
Eランクが薬草を取ってくれるからポーション不足にならない。
Dランクが雑魚魔物を倒してくれるから街の近くは安心していられる。
C,Bランクが強い魔物を倒してくれ素材を持って帰ってくるから街は潤うし、低ランクが安心して活動が出来る。
そういう風になってるのよ」
「はははっ。また始まったよ万年Dランクのベーズさんの為になるんだか分からんウンチクが」
「うるせぇ。茶化すな。大事な話ぃしてんだよ。
まあ何が言いたいかって言うと、お前が道を踏み外さない限り、みんな仲間だってことだ。
それを忘れんじゃねえぞ。
という訳で、今日は俺たちのおごりだ。
飲んで飲んで飲みまくれ。それが男ってもんだ」
「ちょ、ベーズさん。子供にお酒を飲ませないでください」
それからは夜遅くまでどんちゃん騒ぎが続いたらしい。
僕は流石に早めに宿に帰らせてもらったけど。




