第14話 少年は神託の儀を知る
本日最後の仕事は教会の屋根の修理だ。
この街には教会は3つあって、街の中央にある大きいのが大聖堂で、東西に小さい教会がある。
大きな行事なんかは大聖堂で行われるけど、日々のお祈りなどは東西の教会で済ませる人が多いそうだ。
また、東西の教会は孤児院も兼ねているらしい。
つまり何が言いたいかというと、僕は今、子供たちに取り囲まれていた。
「なぁ兄ちゃん、どっから来たんだ?」
「なぁなぁ、遊ぼうぜ」
「馬鹿ねジミィは。この人はきっと冒険者よ。はしごとか持ってるし、きっと雨漏りを直しに来たんだから遊ぶ暇はないの」
「ああ!馬鹿って言ったほうが馬鹿なんだぞ!」
「うっさいわね~」
「おねえちゃん、おしっこ」
「あぁ。エリー。マイラをおトイレに連れて行って」
わいわいがやがや。
僕の住んでいた村にはこんなに大勢の子供はいないから戸惑ってしまう。
「はいみんな。お兄さんがお仕事できないでしょ。離れた離れた」
「「はーい」」
僕と同い年かちょっと上くらいの女の子が声を掛けると、みんな元気よく散っていった。
教会のシスターから僕の案内を頼まれていたし、子供たちのまとめ役もやってるんだろう。
「さてと」と振り返って僕を見る女の子。
「ごめんなさいね。みんな知らない人がこっちまで来るのが珍しいのよ」
「そうみたいだね」
周りを見ればさっきの子たちが、木の陰や茂みに隠れながらこっちの様子を伺っている。
あれはあれで、新手の遊び気分なんだろうな。
ただ気になるのはどの子も僕よりも小さい子ばかりだ。
その事を聞いてみると「あぁ」と返事が返ってくる。
「あなたは街の外から来たんだったよね。
えっとね。教会で預かってる子たちはみんな10歳になって神託の儀を受けた後は、アビリティに見合った職場に見習いとして働きに出るの。
それで15歳までは働きながら教会にお金を収めるのが通例ね。
だから夜になるまでみんな帰ってこないの」
「あ、そうなんだ」
相槌を打ちつつ、ここでも出てきた『神託の儀』と『アビリティ』という言葉。
神託っていうんだから教会が関係してるんじゃないかって思うんだけど聞いてみようかな。
「ところでさ、今まで何度か話に出てきたことがあるんだけど、その神託の儀とかアビリティって何?」
「は?お兄さんもしかして、教会の巡業が行かないくらい、かなりの田舎から出てきたの?」
雨漏りのする建物の屋根に梯子を掛けながら質問をしたら呆れた声が返ってきた。
「そうかも。少なくとも僕は見たことがないかな」
「そっか。えっと、そうね。
この世界は女神さまがお創りになったっていう話は聞いたことある?」
「うん、子守歌になってる奴だよね。わっ、木の枝が屋根に刺さってる。これが雨漏りの原因だね」
「そうみたいね」
僕が屋根を修理している間に女の子が簡単に説明してくれた。
それによると街の子供は10歳になると教会で神託の儀っていうのを受けるらしい。
それによって女神さまが特別な才能を子供たちに授けてくれるらしい。それがアビリティだ。
アビリティは様々で剣士、槍士、魔法士などの戦いに向いたものから、鍛冶士、錬金術士などの技術系、農士、漁士などの生産系と様々なものがあるそうだ。
アビリティを授かると、それに合った能力が上がりやすくなるので大抵の人はアビリティに沿って仕事を決める。
またアビリティには下位中位上位とランクがあるそうだ。
なるほど、それで冒険者ギルドのおっちゃんが「いいアビリティを手に入れたのか?」なんて聞いてたんだ。
話を聞いている間に屋根の修理も終わった。
「本職ほどうまくできた自信はないから、もしまた雨漏りするようなら今度はそっちに依頼を出してね」
「うーん、それは無理じゃないかな」
「どうして?」
「お金ないもん。本職の人に頼むと小銀貨2枚って言ってたかな。
ここって育ち盛りの子供が多いから、お金は食費だけでギリギリなの。
冒険者ギルドはそのあたりの事情も知ってるから安く請け負ってくれるのよね」
そう言われて依頼票を改めて見ると報酬は大銅貨1枚。本職に頼んだ時の1/20だ。
依頼を出したのは2か月も前だって言ってたから、みんな安すぎて請けなかったんだね。
「だからあなたには感謝してるの。私じゃ落ちたらどうしようって怖くて出来ないし、働きに出ているみんなも仕事休んでもらう訳に行かなかったからね」
「また何かあったら言って。僕はまだ見習いだから安く仕事を請けられると思うし」
「うん、ありがとう」
そうして僕はかくれんぼのように茂みに隠れた子供たちに見送られながら今日最後の仕事を終えるのだった。




