第11話 冒険者ギルドは裏方です
冒険者ギルドのゴルマンだ。
冒険者として15年活動した後、左腕の損傷をきっかけに引退、色々あって今はギルドのサブマスターなんてやっている。
ただ、ずっとデスクワークだと頭が重くなるから、時々受付業務に混じることにしている。
冒険者って聞くと夢のある仕事に聞こえがちだが、実際には対魔物用の傭兵であり、職にあぶれた奴らがほとんどだ。
当然、質の悪い奴が集まりやすい。
今日も昼間っからくそったれな報告を受ける。
「……なに!新人2人があのクソ野郎どもと一緒に出ていった!?なぜ止めなかった!」
「うっ。そうは言っても直接騒動を起こした訳でも無いのに私たちギルド職員が割って入ることは規則上出来ません」
「だが奴らが新人を唆して連れ出したのはこれで3回目だろ。
これまでの2回とも、一緒に行った新人どもが帰ってこなかった事を考えれば奴らが何かしているのは明白だ!」
「そうかもしれませんが、依頼も無ければ調査に人を派遣することも出来ません。
基本冒険者が活動中に起きることに関しては自己責任なのですから」
「クソっ」
報告してくれた受付の彼女に怒っても仕方がないか。
誰だこんなくそったれな規則を作った奴は。あぁ昔のくそったれか。
確かギルド職員の方が偉いんだと阿呆な勘違いをした奴が冒険者たちを顎で使おうとして街一つ滅ぼしたんだったかな。
それ以降、過度な干渉をしないように距離を空けることにしたんだったな。
「くそっ、こうなったら俺が」
「サブマスター。急ぎこちらの書類の確認をお願いします」
「んなもん、くそマスターにやらせておけばいいだろ」
「そのマスターは朝から領主館で会議に出ています」
「そうだったな。くそっ、こんな時に」
ギルド内を見渡せば、普段なら飲んだくれてる奴らも居やがらねえ。
くそっ、逃げやがったな。
カランコロンッ♪
お、新人2人が帰ってきたか。
特に怪我をした様子も無しと。よしよし。
一緒に出ていったらしいクソ野郎どもが居ないが。なに、森の中で襲われただと!!
それで、どうしたんだ?……突然崩れるように眠りに?いや、この森に睡眠系の状態異常を起こす魔物は出ないぞ。
通りがかりの冒険者が魔法か何かで眠らせていったと考えるのが妥当か。
まぁ兎に角無事でなによりだ。今日はゆっくり休んだ方が良い。
討伐依頼は無事に済ませたんだな。そうか、よくやった。
カランコロンッ♪
ん?ガキが一人か。見ない顔だな。よその街から来たのか?身なりからして貴族って感じでもないが。
10歳で登録に来たとか言い出すから、てっきり神託の儀で有頂天になったクソガキかと思ったが違うな。
というか、10歳でこの落ち着きようは、いったいどういう教育を受けてきたんだ?
その癖、金がないから街の外で生活するとか言い出す無鉄砲さ。
よく分からん。
よく分からんが、悪い奴じゃあなさそうだな。
なら少し様子を見るかな。名前はカイか。覚えておこう。
翌日、昼。
昨日の少年が朝早く依頼を受けに来たと思ったら、もう戻ってきやがった。
ありゃあ、何かしでかした顔だな。
話を聞く自分の血圧が上がるのが分かる。
「はぁあ!?値切られただと!?」
「っ!」
「おっと、すまん。つい怒りで怒鳴ったが、別にお前のせいじゃない」
依頼内容は屋敷の草むしりか。
「仕事の出来具合については文句は言われてないんだな?」
「はい。そっちは納得してくれてました」
「……」
「あの……」
「がっはっは。それは災難だったな」
ったくよぉ。舐めた真似してくれたな!!
うちの有能な新人を見下した落とし前はキッチリつけてやる。
あとはどこまで叩き潰すかだが。
そう考えていた所で少年が何かを取り出した。
って、ユケツ草か。別名は吸血草またはアンデッド草。
この草そのものは造血薬にもなる有用なもので、専門の薬草園で栽培もされているから珍しいという程でもない。
別名の由来は動物の血がしみ込んだ大地に根を張ることと、その地面の下に遺体もあった場合、草が枯れたり抜かれたりした跡からスケルトンなどのアンデッド系魔物が発生する処からきている。
つまりこの草があれだけ庭に生えていたってことは件の屋敷が事故物件だった可能性が高い。
よしよし。これでゆする材料が出来たな。




