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聖女に救われた少年は誓いを立てる  作者: たてみん
第1章 幼い少年は一人
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第10話 少年は難癖をつけられる

「ここが依頼する物件だ」


ホメト不動産に行ったあと、連れて行かれたのは1件のお屋敷だった。

高さ2メートルのレンガ塀に囲まれており、建物もしっかりした造りだった。

ただ所々苔むしていたりして、長い間人の手が入っていなかったことが伺える。

そして家と塀の間の敷地には青々と草が生い茂っている。

あ。あれはチスイ草かな?なんでこんなところに生えているんだろう。


「君にはこの塀の内側の雑草を全て抜いてもらいたい」

「抜いた草はどうするのですか?」

「1か所に纏めておいてくれ。後日こちらで焼却しておこう」

「分かりました」

「期限は3日だ。明後日までに終わらせてくれ。

終わったら店まで報告に来るように。何か質問は?」

「えっと、根まで掘り起こす必要はありますか?」

「いや。その必要はない。後から地面を均すのも手間だからな」


なるほど。それならそんなに時間も掛からず終わりそうだな。

あとは。


「抜いた草を少し貰っても良いですか?」

「この雑草をかね。なかなか酔狂な事を言うね君は。まぁ好きにするがいい」

「ありがとうございます」

「あと鍵は掛かっているが家の中には入らないようにな。では頼んだぞ」


そう言って不動産屋のお兄さんは帰っていった。


「よし、じゃあやりますか」


まずはチスイ草の採取だな。

この薬草からは造血薬が作れる。

ただ普段は民家の庭先にある事なんて滅多になく、街中だと精肉屋の裏庭とかごく限られた場所でしか見かけない。

それがこの一か所にだけ群生しているってことは……。

ま、考えるのは後だ。

今はさっさと依頼を終わらせてしまおう。




「……なに終わった?きみ馬鹿言っちゃいけない。まだ3時間と経っていないじゃないか」


草むしりを終えて報告に行くと、なぜか驚かれてしまった。


「ふむ、これから昼休みだ。君の言葉が本当か確かめに行こう」


そう言うお兄さんと一緒にさっきの屋敷に戻ることになった。

お兄さんは家の周りをぐるっと周ってくると難しい顔で何か考え込んでいた。

続いて玄関わきに積み上げられた草の山に目を向ける。


「あの、何かまずかったですか?」

「……これは君一人でやったのかね?」

「はい」

「仲間に手伝ってもらった訳でも無いのかね?」

「はい」

「そうか……」


あれ、一人でやっちゃダメだったんだろうか。

そう不安に思っていた所でお兄さんが冷たく言い放った。


「これなら渡せるのは小銅貨3が精々だな」

「は?」

「報酬の話だ。子供一人が半日足らずで終わらせるような内容ならそれぐらいだろう」

「え、でも依頼書には大銅貨5枚って」

「それが間違いだというんだ。冒険者ギルドのぼったくりだな。

依頼料を取っておいて報酬額まで水増しするとは困ったものだ。

君もそう思うだろう?」

「……」


なんだろう。さっきの不安とは違う意味でぞわぞわする。

この人は何を言っているんだろう。

わからない。分からないけど、ここで頷いちゃいけない気がする。


「あの、依頼内容は問題なく達成したということですよね」

「ああ、そうだな。だからほら。受け取るといい」


そう言って財布からお金(多分、小銅貨3枚)を取って僕の方に差し出した。


「っ」


僕は慌てて飛び退ると一目散にその場を後にした。


「あ、こら。待ちなさい」


後ろから呼び止める声が聞こえた気がしたけど、僕はもう無視して冒険者ギルドへ向かうのだった。




「がっはっは。それは災難だったな」


冒険者ギルドで受け付けのおっちゃんに事の顛末を話すと豪快に笑われた。

それを聞いた周りの人たちがザザッと離れていく。

僕の体も一瞬ビリっとした気がする。


「あの、こういう事ってよくあるんですか?」

「いや、ないな。おおかた君が子供だからって足元を見たんだろう。

今から俺が行って話付けてくるから、お前は残りの依頼に行くといい。

それとも他に何かあるか?」

「えっと……あ、そうだ。冒険者ギルドって薬草の買い取りとかもしてくれるんですよね。

それなら、今日の草むしり中に手に入ったこのチスイ草も買い取ってもらえますか?」


そう言って背嚢からチスイ草の束を取り出す。

これだけあれば造血薬が10回分は作れるかな。

ただチスイ草を見たおっちゃんは一瞬目を見開いた。


「ほぉ、チスイ草なんてよく知ってたな。あっちが買い取り受付になってるからそこで渡せばいい。

そんだけあれば大銅貨7枚にはなるだろう。っと、1本貰っていいか?ありがとよ。

あとこれはどの辺りに生えていたんだ?……ほぉ。

じゃあ俺はあのクソ野郎に冒険者ギルドをなめたらどうなるかキッチリ話してくるからよ。

おい、誰か受付を代わってくれや」


にぃっと笑うおっちゃんは、しかし目は全然笑っていなかった。

僕の頭をガシガシと撫でるとそのままギルドを出ていった。

うーん、この街の人は頭をガシガシするのが癖なんだろうか。


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