第9話 はじめて少年は依頼を受ける
宿に戻った僕は早速女将さんに採ってきた野菜(薬草)とウサギを差し出す。
するとなぜかすごく驚かれた後、女将さんからこんな提案をされた。
「もし今後も定期的にウサギを卸してくれるなら宿代はただで良いよ」
「え、本当ですか!?」
「ああ。それに今後は夕食のスープにウサギの肉を入れられそうだよ」
「それならみんな喜びますね」
そう返すと女将さんは笑顔で頷いてくれた。
「朝食はすぐ食べられるけど、どうする?」
「はい、いただきます」
用意されたパンと牛乳と卵、後は僕が採ってきた野菜サラダ。
牛乳と卵があるのは凄いなって思ったけど、聞いてみたらこの街のすぐ近くに酪農用に整備された地区があるらしく、安価で手に入るそうだ。
「実入りは良いけど家畜が魔物に襲われないようにするのに苦労しているそうだよ」
「ふぅん。魔物避け草とかは植えてないのかな」
「おや、そんなのがあるのかい?」
「はい。ゴブリンとか魔狼とか、村の近くで見かける魔物が嫌がる臭いの草があるので、僕の村では村全体を囲むように魔物避けの草原が広がっていました。
勿論すべての魔物に効く訳じゃないから、時々村の中に魔物が入り込んだりもしてましたけど」
「時々ってお前さん。それでよく村が無事だったね」
「村のみんな、今日は肉が食えるぞって喜んでましたけど?」
「はぁ~。流石バーラ様が暮らしている村なだけはあるってことかね」
さて、お話をしてる間に食べ終えた僕は、早速冒険者ギルドに行くことにした。
食器を片付けて食堂を出る僕の背中に女将さんが声を掛けてくれる。
「今日は初日なんだ。あまり気を張らずに様子見程度にしておきなよ」
「はーい、じゃあ行ってきます」
元気よく返事をして宿を出た僕は冒険者ギルドに向かった。
ギルドの中はまだ早い時間なのか全然人が居ない。
そのままスタスタと受付に行くと昨日のおっちゃんが居た。
「お、早速来たか。カイ」
「はい、今日からよろしくお願いします」
「うむ」
鷹揚に頷いたおっちゃんは受け付け台のすぐ横に置いてあった紙束を手繰り寄せると、パラパラと捲った。
そしてその中から何枚かを取り出して僕の前に置いていく。
「まずはお前がどれくらい動けるのかを確認する必要もある。
だから今日紹介出来るのはこれくらいだな。
お前、文字は読めるのか?」
「えっと、はい。ここに書いてある内容なら読めます」
おっちゃんが出してくれた用紙の中味を確認してみる。
『題名:屋敷の草むしり
内容:北地区の空き家に入居者が決まったので、庭の草むしりをしてほしい。詳細はホメト不動産まで。
報酬:大銅貨5枚
依頼者:ホメト不動産
期間:2日(目安)
期限:3日以内
ランク:F』
『題名:牧場の手伝い
内容:隣の酪農地区の手伝い。家畜小屋の清掃など。
期間:1日
報酬:大銅貨4枚
依頼者:ホルス農園
ランク:F』
『題名:排水溝の掃除
内容:職人通りの排水溝が詰まってきたのでヘドロを取り除いてほしい。
期間:1時間(目安)
報酬:大銅貨2枚
依頼者:錬金術師ベル
ランク:F』
『題名:教会の屋根の補修
内容:先日の嵐で雨漏りするようになってしまったので修理をお願いします。
期間:2時間(目安)
報酬:大銅貨1枚
依頼者:聖バンリ教会
ランク:F』
なるほど。どれもそんなに難しいのは無いみたいだ。
ちなみに女将さんに聞いてみたところ、水鳥亭の宿泊費は食事なしで大銅貨2枚、朝晩食事ありで大銅貨3枚だ。
そう考えると排水溝の掃除だけだと食費だけで消える計算だ。
安いのは1日に2つか3つやれば丁度良いくらいかな。
「じゃあ、今日は午前中に屋敷の草むしりに行って、午後から排水溝の掃除に行ってきます。時間があれば教会も。
牧場の手伝いは明日でも大丈夫ですか?」
「そりゃ大丈夫だが、初日から張り切り過ぎじゃないか?
うぅむ、まぁいいか。出来なくて翌日に持ち越しても違約金が発生する訳でも無いしな。
じゃあ、この依頼書を持っていけ。今がここでホメト不動産はここ。ベルの店はこっちだ。教会は反対側だな」
「はい。じゃあ行ってきます」
見せてくれた街の地図を脳裏に焼き付けて、僕はギルドを後にした。
この世界のお金感覚は
小銅貨1枚でパン1つ程度。100円くらいだと思ってください。
大銅貨1枚=小銅貨10枚=1000円です。水鳥亭は一泊2000円になります。
その上に小銀貨、大銀貨、小金貨、大金貨と続きます。




