第五話「雨の回廊」
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雨が降った。
激しい雨だった。
庭園は使えなかった。
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エルネスティーヌは、回廊を歩いていた。
雨が、回廊の外の石畳を叩いていた。
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レオンがいた。
同じ回廊に、いた。
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「珍しいですね」とエルネスティーヌは言った。「任務ではないのですか」
「今日は非番です」とレオンは言った。「あなたこそ、一人ですか」
「一人です」
「宮廷の令嬢は、侍女を連れて歩くものでは」
「侍女が風邪をひいたので」とエルネスティーヌは言った。「一人で来てしまいました」
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二人で、回廊を歩いた。
雨の音がした。
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「一つ、聞いてもいいですか」とエルネスティーヌは言った。
「どうぞ」
「あなたは、何のために剣を持っているんですか。本当は」
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レオンは、少しの間、雨を見た。
「本当は」とやがて言った。「分からなくなることがあります」
「分からなくなる?」
「王太子を守ること、国を守ること、家の名を守ること」とレオンは言った。「それが全てだと思ってきました。しかし最近」
「最近?」
レオンはエルネスティーヌを見た。
「もう一つ、守りたいものができた気がします」と言った。
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雨が、強くなった。
回廊の外が、白くなった。
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エルネスティーヌは、レオンを見た。
「誰ですか」と聞いた。
「分かっているでしょう」とレオンは言った。
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雨が降っていた。
二人は、回廊に立っていた。
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(第五話 了)




