第三話「噂のこと」
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噂が立った。
一週間もしないうちに、噂が立った。
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「エルネスティーヌ・ド・モンクレールが、レオン・ド・シャルティエに取り入ろうとしている」という噂だった。
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宮廷とは、そういう場所だった。
何もかもが、見られていた。
舞踏会での一度の踊りが、翌日には話になっていた。
庭園での立ち話が、尾ひれをつけて広まっていた。
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エルネスティーヌは、廊下で囁き声を聞いた。
聞こえないふりをした。
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しかし、部屋へ戻ってから、少し泣いた。
少しだけ。
それ以上泣くのは、負けだと思ったから。
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翌朝、また庭園へ出た。
レオンは来なかった。
当然だった。
噂のある娘に、近づく必要はなかった。
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しかし、昼過ぎに、レオンが来た。
軍服のままだった。
任務の合間だったのかもしれなかった。
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「噂を聞きましたか」とエルネスティーヌは言った。
「聞きました」とレオンは言った。
「距離を置いた方が、あなたのためになります」
「そうかもしれません」とレオンは言った。「しかし」
「しかし?」
「俺は、噂のために動く人間ではないので」と彼は言った。
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エルネスティーヌは、レオンを見た。
灰色の目が、静かだった。
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「ありがとうございます」とエルネスティーヌは言った。
「礼には及びません」とレオンは言った。「ただ、散歩をしているだけです」
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薔薇が咲いていた。
二人で、薔薇の小道を歩いた。
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(第三話 了)
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