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第4話 魔石ランプ

ダルゴアの中心部の通り。


レイは街を歩きながら、いつものように違いを楽しんでいた。


人間も、たまに見かける他種族も。


違うのは面白い。


そう思いながら歩いていた、ある日のことだった。


街角の店先に見慣れないものが並んでいた。


小さな宝石のような輝きを放つ石。


通りすがりの大人がそれを見ながら呟いていた。


「最近の魔石ランプはもっと長く光るんだってよ」


「サングラディアの技術はすごいな」


魔石ランプ。


レイはその言葉を百年前の記憶の中で探した。


なかった。


私の時代にはなかった。


そして思い至った。


ああ、と。


私は転生して、時代が進んでいるのだ、と。


ここはアルヴェリア王国。


私がいたサングラディアの、隣の国だ。


百年か、それとも、もう少し経っているのか。


正確な年数はわからない。


しかし、確実に時代は進んでいた。


私がいなくなった後の世界がここにあった。


レイは立ち止まって、空を見上げた。


サングラディアの仲間たちは生きているだろうか。


イグナはどうしているだろうか。


少しだけ、思いを馳せた。


しかし、すぐに歩き出した。


過去を見つめ続ける時間ではない。


今、ここにレイとして生きている。


それがすべてだった。



ダルゴアは王国の中では珍しい街だった。


国の西端にあり、王都からは何日もかかる辺境の地。けれども、その立地ゆえに、王国の常識が薄い場所でもあった。


街の中心には大きな冒険者ギルドがあった。


朝早くから、依頼を求める冒険者たちが集まっていた。森の魔物退治、薬草採取、護衛任務。様々な依頼が掲示板に貼り出されていた。


市場には多種多様な品が並んでいた。


森で採れた山菜。冒険者が持ち帰った魔物の素材。サングラディアから流れてくる魔石。各地から来た商人たちが声を張り上げていた。


宿屋からは酒の匂いと、冒険者たちの笑い声が漏れていた。


夜になれば、魔石ランプの淡い光が街を照らした。


王国内の他の街と比べれば、他種族の姿を多く見ることができた。


獣人が生息する森が近いせいでスラム街の方では獣人が露店を開いていることもある。エルフの旅人が酒場で休んでいることも、ドワーフの職人が市場に立ち寄ることもあった。


ただ、それでもここが王国である以上、差別の傾向は残っていた。


獣人が中心部の大通りを気軽に歩くことはできない。スラム街と中心部の間には見えない境界が引かれていた。


レイはその中心部に近い場所に住んでいた。


母アルテナと、二人で。



レイは五歳になっていた。


相変わらず、無愛想で相変わらず、老人のような口調だった。


街の人々は最初は不思議そうにレイを見ていた。


「この子は不思議な子ね」


「五歳とは思えない話し方だわ」


しかし、レイのしつこさと素直さにすぐに慣れた。


レイは街の色々な人に話しかけた。


「失礼だが、その仕事はどのくらいやっているのだ」


「教えてくれないか」


そう聞いては人々の話を目を輝かせて聞いた。


「そうなのだな。それは知らなかった。面白いな」


街の大人たちは笑いながらレイの話を聞いた。


「変わった子だが、悪い子じゃない」


「アルテナさんの息子だものな」


そう、口々に言った。



レイは街の人々の話を聞きながら、健やかに育っていた。


ただ、時々、発作が起きた。


ある夜のことだった。


レイが突然苦しみだした。


胸を押さえて、息が詰まったような声を上げた。


母上がすぐに駆け寄った。


「レイ!」


魔核が不安定だった。


百年前から鍛えた調整能力で繋ぎ止めていた魔核が時々、軋むような感覚を起こした。


母上がレイを抱きしめた。


「大丈夫、大丈夫よ」


何度も、何度も、そう呟いた。


しばらくして、発作が収まった。


レイは息を整えながら、母上を見上げた。


「母上、すまない」


「謝らないで」


母上がレイの頭を撫でた。


「あなたが生きていてくれるだけで十分」


その夜、母上はレイを抱いたまま、眠れなかった。


レイはそれを知っていた。


しかし、何も言わなかった。


ただ、母上の体温を感じていた。

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