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ハレルヤなんてさようなら  作者: 八兼信彦
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Scene9 関所《ハードル》なんてさようなら その1

  ***


“ちゃ~ちゃらっちゃ、ちゃっちゃららっ、ちゃっちゃっらっ、ちゃらららっちゃちゃ~”


 陽気な音楽は、番組お馴染のオープニングテーマ曲である。

 音楽に続いて、明るく景気のいい女の声が聞こえてくる。


『みなさぁん、こんにちは! というわけではじまりましたー!ミカととうちゅあんの――』

『とうちゅあんってなんだよ(笑)』

『あひゃー、冒頭でおもいっきり噛んじゃったー、もうミカね、唇が凍えちゃって――』

『わかったわかった、口を出したおれが悪かったよ(笑)』

『続けるよー』

『はいはい、どんどん行っちゃいましょう』

『ではでは仕切り直してー。ミカと父ちゃんの〈マジカレード・タイム〉!』

『今度は極まったね』

『お相手は、ミカことミッチー・カイラスと』

『父ちゃんこと、ラガー・サイビエスでお送りいたします。』

『さてーーーとうちゅあん!』

『あ、またとうちゅあんって言った』

『もう今日はとうちゅあんで押し通そうかと思って』

『自分を貫くのも大事だ』

『さてさて、とうちゅあん』

『はいはい、ミカちゃん』

『みなさんもお気付きかもしれませんが、今日はスタジオを飛び出して、北方の街エクオフェシスに来ておりますーーー!』

『いやぁ、寒いよ。寒い。』

『ねー、いつもは温度調節された穴倉みたいなところで喋ってるんですど――これじゃ寒くて、口もまわりゃないっ!』

『おれ、寒いの弱いんだよね』

『なぜここへ来たのかといいますと、エクオフェシスはスキーが盛んでして』

『ほうほう』

『きょうはあの有名な、エリクシル・スキー場へ来ております!』

『おれもさっきボード借りてきたんだ。どうかな、似合う?』

『似合ってるー! ステキ!』

『そお? なんか滑れそうな気がしてきた。』

『ではでは、とうちゅあんには早速、リフトで上がって、滑ってきてもらいましょー』

『いってきまーす!』

『いってらっしゃーい。さてとうちゅあんはうまく滑ることができるのでしょうか。それとも、わたしたちの期待にこたえて、何らかのミラクルを起こしてくれるのでしょうか――あ、とうちゅあんが手を振っています! とっとと昇れー! 

 ではでは、とうちゅあんを待っているあいだ、いま滑ってきた方にお話を伺ってみようかと思います。誰にしようかな……。あ、あの女性2人組に聞いてみましょう!

 すみませーん、こんにちわー。』

『えっ、なに?』

『ミカちゃんです! お話を伺ってもいいですか?』

『これ流れてるの?』

『はい、EMラジオで全世界に向けて配信中でぇす。』

『おお、すごーい。』

『あの、お話を――』

『うん、いいよ。』

『え、ちょっと……アンナさん、それは――』

『いいからいいから。ラジオに出られるなんて滅多にないんだし。』

『ではでは――エリクシル・スキー場には、初めていらっしゃったんですか?』

『はい、そうでーす。』

『あなたは?』

『あっ、わ、わ、わたしは――何度か……』

『おふたりは、どうゆうご関係かにゃ?』

『トモダチでーす。』

『ま、まだ出会ってからそんなに経ってないんですけど……』

『出会って間もないのに、一緒にスキーだなんて、素敵ですねぇ。きょうはどうしてここに来ようと思ったんですか?』

『それがさあ――わたしたちウリザネアウスに行きたかったんだけど、入管が厳しくって立ち往生してるんだよねー。それで仕方ないから、ここにきたわけ。』

『アンナさん……それは言わないほうが……』

『あー、ウリザネアウスは情勢的に難しいかもしれまんせんねえ。』

『いやぁ参ったよ。』

『お仕事で来られたんですかにゃ?』

『まあ、そんな感じね。』

『あなたも?』

『え、ええ、まあ。』

『じゃあお仕事の合間に、気晴らしに来てるってことですね? もしかしてこれが流れると同僚の方にさぼってるのがバレちゃうんじゃないですかー(笑)』

『いいのいいの。楽しまなくちゃ。』

『で、でもアンナさん、さすがにラジオはまずいんじゃ……』

『大丈夫だよティナ、堂々としてればわかんないって!』

『そうですかねぇ……』

『おい、アンナっ! 何やってんだ!』

『あ、みてみてノエル! わたしインタヴューされちゃった!』

『へぇ~これラジオぉ? アンナ、いまラジオに出てんのぉ?』

『いいからいくぞ!』

『お連れの方ですか? ミカちゃんです! お話を――』

『取り込み中だ。ほら! ティナもいくぞ。』

『す、す……う……すみませぇえええん』

『ノエルぅ、ティナちゃんが泣いちゃったよぉ。』

『なんで泣くんだぁっ!』

『わたしのせいで、みなさんにご迷惑をぉぉぉ』

『あーあノエルぅ。いまこれ全世界に流れてるよ、女の子を泣かせた極悪人だって、一杯お手紙届いちゃうねー』

『知るか! ほら行くぞ!』

『はぁい』

『ふぇぇぇ、すみませぇぇぇん』

『な、なにやら事態が逼迫してきましたので、とりあえずCMへゴーっ!』


“ちゃっちゃらっちゃ~~~ちゃ~~~~ちゃららっちゃ~~~~”


 ラジオからはまた能天気な音楽が流れた――


  ***


 事態が逼迫したのは、現地だけではなかった。

 ラジオに耳を傾けていた一部の人にとっては、貴重な情報源となっていた。

 ウリザネアウスの隣国に、賞金首アンナ・E・クロニクルと、国を追われる巫女ティナ・フィバーチェが潜伏している――

 〈クーザ・キルティ〉の構成員も、賞金稼ぎ(バウンティハンター)も、ラースの刺客も、ウリザネの反乱勢力も――

 その放送に沸き立っていた。


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