検証
「うっ……!」
太郎の散歩を終え自宅に帰って束の間、座り込む。公園での行いを思い出し、羞恥に襲われる。急に能力という力を手にした代償か気分が高揚して色々やってしまった。しかし、世界に復讐するという意思はスケールが大きく現実感がないが本当の気持ちだ。
「けど、この力があれば……!」
冷静になって整理する。結局のところ、ゲートが父と祖母の死に繋がっている。つまり、この能力で復讐するべきはゲートだろう。明確な目標ができ、先ほどまで感じていた羞恥も消え頭が冴えてくる。
身体強化レベル3。実際、この能力はどれくらいの力があるのだろう?自身は持っていないペルソナに関する情報を遠ざけていたので立ち位置がわからない。
「うーん、どうしたもんか……あ!」
学校に行こう。
教室の扉がある。普段はこの扉を開けて教室に入るのが憂鬱だったが、今はどちらかというとワクワクしている。
ガララッ
クラスの喧騒がピタッと止まり、大量の視線が突き刺さる。同情が大半だが、いくつか嘲りの視線を感じる。祖母の死はやはり広まっているらしい。
「おいおい、もう学校に来て大丈夫なのかよ無能?」
ニヤニヤとした不良が言い放つ。
「……安心したよ。」
「あ、なんつった???」
よかった。もし不良が祖母を亡くしたことを哀れみ、少しでも優しくされていたら、"これからしようとしていること"を躊躇していたかもしれない。だが、こいつらはクズだ。祖母を殺したクリーチャーと何も変わらない。人の死をイジメに利用しているあたりより悪質かもしれない。
「安心したって言ったんだ。他人に頼まないと俺1人呼び出せないチキンども、放課後この前の廃ビルに全員来いよ。」
時がとまったように感じる。クラスの視線が驚愕一色になり、不良たちはアホ面を晒している。これだけでスカッとしたが、本番は放課後だ。
「何言ってんだ?ババアが死んで、頭がおかしくなったのか?」
「ビビってるのか?仕方ないな、ペルソナも使っていいぞ。」
「てめー……!今直ぐここでぶっ殺してやるよ!!」
「おい、落ち着け流石に学校ではまずい!」
激昂し顔を真っ赤にした男は暴れ出すが、慌てた仲間に押さえつけられる。もう少し煽ってもよかったが教師が入室してきたのでやめておく。
「じゃあ、放課後な。」
あぁ、待ち遠しい。
「てめぇ、一体どういうつもりだ?」
放課後になり、一足先に廃ビルに来ていた永和の前に不良たちが現れる。急に強気になったことを警戒しているのかいつもより人数が多い。
「どうって?やられたらやり返す当たり前のことだろ?」
「そういうことを言ってんじゃねえ!マジで気が狂ったのか??」
「そんなことどうでもいいだろ、ビビったのか?早くかかってこいよ。」
「……チッ。おい、囲め。」
残念だ、チキン煽りはどうやらもう効かないらしい。男達に囲まれ、完全に逃げ道がなくなる。前までなら震えていただろうが、今は不思議と何も感じない。
「なあ、あいつが本気出したらどうなるかわかってるだろ?ほら土下座でもして謝った方がいいぞ。」
クラスメイトでもある男が馴れ馴れしく肩を組みながら促してくる。不良のリーダーに付き従う金魚のフン。こいつからでいいだろう。
始めよう。
ゆっくりと肩に乗せてきた手を掴む。そのまま勢いよく体を引っ張りラリアットをかます。
ドゴッ
ラリアットをかまされた男は背中をコンクリートに強く打ち付け悶えている。前までの自分はこんなふうに見えていたんだなとふと思う。
「……は?」
誰が声を発したか定かではないが、全員泡を食ったような顔をしている。
混乱に乗じ、片足を軸に回転し後ろにいる男を蹴り飛ばす。急に蹴られた男は受け身も取れず無様に転がる。
仲間がやられて正気に戻ったのか、焦った二人が掴みかかってくる。男達は抱きつき引き倒そうとしてくるが倒れない。まるで"プロのアスリート"のように安定した体幹で立ち続けている。
「お、おいどうなってやがる……!」
抱きつきながら喚いている男の頭を掴みヘッドバットをかまし、拘束が緩んだ隙に膝蹴りを入れる。
「う、うぉおおおおお!」
一人残され掴まっている男が叫びながら、持ち上げようとするがピクリとも動かない。ゆっくり男の首に腕を通し、締め落とす。
囲んでいた残りの一人に近づく。
「ひぃ!く、くるなぁああ!!」
男はポッケからナイフを取り出すとガムシャラに振り回す。冷静に軌道を見極めると、足を蹴り上げナイフを弾き飛ばす。
カランッ
「あ、あぁ……」
ナイフが飛んでった方を見ると男は糸が切れたように膝をつき蹲る。
最初は驚いていた不良だったが、今では真顔でこちらを見ている。
「なるほどな、それが今日のお前の態度の理由か。」
声は驚くほど冷たく、学校で真っ赤になっていた人物とは別人のようだ。格下のいじめ対象から、明確な敵くらいにはなったらしい。
「だけどよ、それくらい俺にもできるんだぜぇ?」
言い放つと同時に勢いよく飛び出した不良は鋭い前蹴りを放つ。なんとか腕を挟むが先程とは違い永和の体は後ろへ吹っ飛ぶ。
「お前は変わらず無能なんだよぉお……!」
そう、この不良はペルソナを実践で使えるレベルで発現している。"ペルソナは誰でも持っている"が"ペルソナは誰でも使えるわけではない"。
「ちょっと強くなったくらいで調子に乗ってんじゃねえよ!」
つまり、中身はともかく。目の前の不良はお山の大将を気取れるくらいには才能がある。
「オラオラオラ、さっきまでの勢いはどうしたんだよ!この無能がぁ!」
蹲りながら笑うと、ゆっくり立つ。
レベル2。
「なんだぁ?寝とけ。」
不良が鳩尾にむけて放ったアッパーを避け、カウンターでストレートを顔に放つ。少し焦りながらも不良は拳を躱す。先程までとは体のキレが違う。
もはや常人では追いつけない速度で動く二人。喧嘩の範疇をとっくに超えており戦闘になっている。実力は拮抗しているように見えるが、表情は対称的で不良の顔は余裕がなく、永和の顔は涼しげだ。
ついに永和の攻撃が不良を捉える。胸に当たった一撃はかなり効いたようで、不良はえずきながら膝をつく。
「おいおい、俺が無能だったらそれに負けるお前は一体なんなんだ?」
腰に手をあて不良を煽る。
「ほらほら、さっきまでの威勢はどうしたんだよ。」
「てめぇええ!ぶっころしてやる!」
ブチギレて本気を出した不良は凄まじく。今度は永和が防戦一方になる。"このまま"だと危ないかもしれない。攻撃をガードし苦痛に顔を歪ませながら笑う。
「よかったよ。お前がどうしょうもないクズで、そこそこ強くて。」
レベル3。
世界が変わる。不良の視界から消え後ろに立つ。
「は???」
混乱しながらも不良は後ろに向けて腕を薙ぎ払うが、それも永和を捉えることはなく今度は正面に立つ。
「どこを狙ってるんだ?」
わざとらしく肩をすくめてみせる。不良は明らかに狼狽えると後退し、やがて壁にぶつかる。
「な、何が起きてやがる?お前一体何したんだ!」
「何って。お前が俺より無能だった、それだけだろう?」
正面から片手で不良の肩を掴み力を込める。
何かを察したのか不良は顔を歪ます。
「わ、悪かった。冗談だったんだ!許してくれ、俺たちクラスメイトだろ?」
もう片方の手を引き絞り不良の顔をぶん殴る。人外の力で殴られた不良は廃ビルの脆くなった壁をぶち抜きながら見えなくなる。
「クラスメイト?人の死を笑うお前らは俺にとってクリーチャーと変わらない。」
ざまぁ、初めて書きました。自分で書いてても少しスカッとして楽しかったです。




