決意
「……ン!……クゥーン。」
首に少しのくすぐったさを感じる。太郎のいつもの悪戯かと思い目を開けると、自身の首のあたりを舐める見慣れた顔。
「こら!くすぐっ……」
首をさすり、自身の首についた跡に気づく。昨夜あった出来事をすべて思い出す。
「ばーちゃん……あ、あぁあああ!!!」
どうして?なぜ?
抑えきれない悲しみと共に、声と涙が溢れる。家族を失うという、なんど経験してもなれぬ絶望。もう、ひだまりのように安心させてくれる笑顔としわくちゃだが頭を優しく撫でてくれた存在は永遠に失われてしまった。
「どうして……!なんでこんな。」
祖母を殺したクリーチャーが憎い、ペルソナのない自分が憎い。すべてが憎い。
行き場のない怒りと遣る瀬無い気持ちでぐちゃぐちゃになり吐き気がする。思わず握りしめていた手を太郎が優しく舐める。たった一匹残ってくれた唯一の家族。
「太郎……」
目を開けた先に映る太郎の姿はいつもと違っていた。心配そうに見つめる顔の上に、緑色の逆三角形が浮かんでいる。
自身が錯乱しているのかと目を擦ったり、頭を振ってみるが一向に目に映る景色は変わらない。
「なんだ、これ。太郎?」
視界の端にゲームのUIみたいなものが表示されていることに気づく。ステータスという項目があり、そこに意識を向ける。
二条 永和 レベル 1
スキル なし
ボーナスポイント:6
それはまるでゲームのプレイ画面のよう。
「レベル1?それにスキルなしって、やっぱり俺は無能力なのかよ。」
改めて突きつけられる自身の才能の無さに落胆するなか、ボーナスポイントというものがあることに気づく。
獲得可能スキル:身体強化
それを認識した瞬間、時が止まったかのように感じた。獲得可能スキル……?つまり、自身でスキルが獲得できるということ。
脳がゆっくり理解した時、溢れ出す期待。意識を向けるとポイントを1消費しますと出てくるが、考える間もなく承諾する。
二条 永和 レベル 1
スキル 身体強化レベル1
ボーナスポイント:5
身体強化レベル1。ペルソナを持っていないだけで迫害された日々、自分の無力さを嘆いた過去。色々な思いが溢れる。
「うぉおおおおおお!」
「キャン?!」
感情に身を任せ咆哮をあげる。唐突な主人の行動に吃驚してオロオロし出す太郎。カオスだった。
「身体強化って、どんなスキルなんだ?」
しばらくして、落ち着き自身が得た能力が気になり出してくる。
「身体強化か、だいたい予想はつくけど。」
太郎の散歩で利用している公園にやってきた。
「太郎、今日はいっぱい遊ぶぞ!」
「わん!」
太郎と遊ぶついでに検証を始める。
「はぁ、はぁ……。なるほどな。」
しばらくして大体の検証が済んだ。今の自分は過去のオリンピック選手レベルの身体能力を保持している。しかし、一般人が人類のトップレベルの能力を手に入れられるとすると魅力的だが、特殊な能力かと言われると物足りない。
「だけど、こいつはレベル1。」
獲得可能スキルを呼び出すとそこには予想通り、身体強化レベル2の文字が並ぶ。すぐにポイントを使い今可能な最大まで強化する。
身体強化レベル3
1で人類の最高峰、なら3は?
「ははっ!なんだこれ!」
笑みが溢れる。体は羽の様に軽く、地面を蹴るたびに世界は加速する。公園を駆け回っていると、視界に誰かに忘れられたサッカーボールが映る。
軽く蹴り宙にボールをあげると、その場で地面を蹴り空中のボールをオーバーヘッドで蹴り抜く。ボールは凄まじい勢いでゴールネットに突き刺さる。
「ワンッ!ワンッ!」
遊んでもらえると思ったのか太郎がボールの方にかけて行く。
「ははっ、あはははははっ!」
なぜか零れた涙と共に笑いが止まらない。
「はははっ、はーあ。確かにこれに比べたら俺は"無能"だったな……」
さっきまでの充足感が嘘の様に消え、胸に残るのは虚無。
「今更こんな能力得たってなんになるんだよ……」
ゲートにより亡くなりクリーチャーとなった祖母。
ゲートに向かい帰らぬ人となった父。
全てはもう過去の出来事だった。
「今更目覚めるなら、過去に戻すくらいしてくれよ!」
「ワンッ!」
ボールをとってきた太郎の無邪気な吠え声が自暴自棄になった頭に入ってくる。
「太郎……」
たった一人残った家族の姿。
絶望という霧に包まれていた思考が晴れ、希望を見出す。
「そうだ、今からだ。」
ゲーム的な育成システムとスキルで自身というキャラを育成する能力、名付けるならそう。
「【プレイヤー】で世界に復讐してやる!!!」
投稿頑張ります




